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笊ヶ岳
笊ヶ岳

基本情報
1 山名 笊ヶ岳(ざるがたけ)
標高 2,629m (二等三角点)
山域 赤石山脈南部
都道府県 山梨・静岡
位置 N35.25.26/ E138.15.34 
地図 昭文社 山と高原地図42「塩見・赤石・聖岳」
2万5千分の1地図「新倉」
20万分の1地勢図「甲府」
7 山岳区分 日本二百名山・山梨百名山
登山記録
山歩No 2710-14028
登山日 2014年8月2 日(土)から8月3日(日)
歩程 第一日 6時間05分
第二日 10時間
15分
天候 晴れのち曇り
形態 山中テント1泊
アプローチ 山梨県道37号線から雨畑ダム経由老平
パーティー 1人

 さてさて、仕事の都合と家庭の事情が重なり、2014年の8月は恒例の夏山縦走ができないことになってしまった。 連休が取れないのでは仕方がない。 土日を利用して近場の山に行くことであきらめをつけることにした。 近場の山とは行っても、折角なので
日の長いこの時期でないと行くことができないところを探したところ目に飛び込んできたのが日本二百名山にも指定されている山梨・静岡県境の南アルプス前衛の笊ヶ岳である。 この山、何しろ日帰りでゆく手段はない。 二百名山のガイドブックには椹島から
の日帰り報復になっているが、そもそも椹島に行くのに1日はかかるので、結局山中1泊と変わりがない。登りのトラバースコースも健脚向けコースで不安もある。そこで、標高差は静岡の椹島からよりも長くなるが、アプローチが楽で登山道が整備されていると
いう山梨側の天畑を起点に登るコースでテント山中1泊とした。 今回もタフな登山になりそうである。

国道52号線

 8月1日(金)夕方仕事を終えると、電車で静岡駅へ。 20時半に予約を入れていたジャパンレンタカーで黒いアクアをピックアップする。 このレンタカー会社はカラオケ店と提携している関係で24時間貸出、返却ができるのが便利である。 笈ヶ岳に行ったときも福井店でお世話になったが、その時使って驚くほどの燃費性能を持っていることを知ったアクアを今回も借りることにした。いったん家に帰り翌日8月2日(土)朝5:00起床。 朝食を摂って、明るくなり始めた国道52号を北に走る。

毛無山を西から見る

 以前キャンプに行くときに立ち寄った静鉄ストア興津店をすぎ、南部町に入ってから富士川を右手に見ながら進む。 身延を過ぎて途中、道の駅「みのぶ富士川観光センター」に立ち寄る。ここはクラフトパークもある公園である。休憩をしてから再び国道に出る坂を下る途中、正面に昨年の2月に雪の中を登った毛無山がよく見えた。 道はここから県道37号線南アルプス公園線を北西へ進んでいく。 早川町役場を過ぎて七面山の登山口も見えた。 近いうちにここにも来ないといけない。雨畑ダムまでは1.5車線の気を遣う舗装道路だ。 

老平

 8:06に老平の駐車場に到着。 渓流釣りの客か登山者か? 山梨ナンバーの軽自動車が3台ほど停まっている。 全部で7台ほど駐車可能なスペースだったが、自分のレンタカーを停めるスペースもあったので支度をして8:15駐車場を出発。 ゲートを超えてしばらくすると舗装はなくなり、林道へと入っていく。途中後ろから単独行の男性が抜かして行った。 オブジェのようなトンネルというのを抜けて、小川を渡り、さらに30分ほど歩くと林道が2つに分かれて「奥沢」という標識があった。ここから上手の林道を少し進むと笊ヶ岳登山道の入り口である。8:45 登山道入り口には1台の四輪駆動の車が駐車してあった。 登山道入り口には「クマ出没注意 早川町」の黄色い立札がある。 本当にクマは出るのだろうか? 

廃屋で休憩

 林道は終わり、ここからは登山道である。 樹林の中を登るとやがてひょっこりと広場に出た。なんとここに一軒の廃屋が立っていた。 もうだれも住んでいないようである。 車も入れない場所なので生活は不便であったことだろう。 軒先を借りて休憩をする。登山道は、やがて奥沢谷を左手に見ながら緩やかに尾根を巻いていく道となる。 途中、アルミ製の梯子が何か所かかかっているところがある。下を見ると古いハシゴが落ちていた。 雪の重みで崩壊してしまったのだろう。  

タケ沢の吊り橋

 9:16タケ沢という表記があるところに到着。 ここから吊り橋を渡る。 したを見ると少し怖いがしっかりした橋なので、手すりを持ちながら慎重に渡る。 支沢が近いということもあり、シャワーのように水滴をかぶるところも3か所ほどある。さらに道を進むが途中崖のように左側が崩れているところもあり注意して渡らなくてはいけない。 9:53左手に滝が見えた。 沢がほぼ自分の歩く登山道と同じ高さになってきたら渡渉地点の広河原も近い。

広河原(渡渉地点)

 10:09広河原到着。 日差しが強いので日陰に荷物を置いて休息。 先ほど自分を追い越して行った単独の登山者も軽食をとっていた。 今日はやはり途中でテント泊まりということである。 このあたりでまだ標高は850mほどである。 今日は標高差1500mほど登るので大変である。 渡渉は登山靴を脱いで持ってきたサンダルに履き替えて行う。 大雨の直後だったら結構危険な場所かもしれない。 地下足袋をはいた渓流釣りの人が一人、どうということもなくこちらの岩場へ近づいてきた。 今日一日ここにいるのだろうか?

桧横手山

 ビスケットをほおばって空腹を満たして、さあ出発。 ここからが急な登りである。 樹林の中をジグザグを切って登っていく。 平たくなったところが山の神である。11:37、ここで休憩。 祠があって休むのには最適の場所である。 ここからも樹林の中の急な登りである。 12:18急に開けた場所に出た。 青薙山への稜線が見えてきた。ウインチが捨ててある場所を通過。 12:50に昼食をとる。 持ってきたソーセージパンと豆乳がつかれたからだを癒してくれる。 ミカンゼリーもうまかった。 何しろ、水を5Lも持っているのが重たい。標高で100m登っては一回休むというようなことを繰り返す。 15:30ふらふらになりながら桧横手山の山頂に到着。 先行していた単独の男性もここにテントを張ることに決めたようだ。 確かに次のテント適地となると布引山山頂付近であるのでまだここから標高差500mほど高いところで2時間以上も要するであろう。さらに雷雨の危険があると稜線に出てテントを張るのもあまり好ましくないかと思い、今夜の宿はここにすることにした。 

テント場

 夕食はラーメンを作って、もってきた缶チューハイをごくごくと飲む。 腹も一杯になると急につかれが出てきた。 18:30ごろとなりのテントに行って男性と少し話をする。 明日、笊ヶ岳の山頂を超えて椹島へ下山するのだという。 まだ標高差600mを登るのだから大変だ。 自分は、明日のコースタイムが9時間を超えることから今日は早く寝て明日早朝から行動するということを伝える。 17時ごろはガスがかかりぽつぽつと降り出しそうな天気だったが就寝近くなった19時ごろには晴れ渡ってきていた。 布引山の山頂付近でヘッドランプの明かりが見えたので先行者がいることを確認して20時就寝。

南アルプス上河内岳の稜線

 8月3日(日)朝3:35起床。 明るくなる前から湯を沸かしてうどんを作る。 テントを撤収して、荷物をまとめ、4:50に出発をする。 次第に明るくなり始めていたのでヘッドランプはなしで歩くことができる。 桧横手山を出てすぐ50mほど下る。 ガイドブックではこのへんにテント場があるような書きっぷりだったが実際には気づかなかった。 ここからの登りは樹林の中の厳しい道。 5:45に休憩をとる。 そこからさらに30分ほど登ると、右手に布引山の山頂と思われる稜線が現れ始める。 稜線にたどり着くと突然景色が開けて正面に、上河内岳の姿が飛び込んできた。 2010年7月に光岳から聖岳まで歩いた稜線がすぐ目の前に見えたのでテンションが上がる。 急なガレバを左手に見ながら進んで、6:45に布引山の山頂に到着した。 

布引山

 布引山の山頂は決して展望はないが休憩するにはちょうどいい場所である。 三角点があった。 水を飲んで6:53出発。稜線伝いに進むとテントサイトがあって、早川町森林組合と書かれた4人テントが張ってあった。 昨夜ヘッドランプの明かりを見た先行者のものであろう。布引山からの稜線のルートは途中にシャクナゲの花があったりして、気持ちのよい縦走コースを味わえるところだ。 200m下った鞍部でさあ登るぞという気合がわいてくる。 今日は、テントは自炊道具など大きな荷物を桧横手山にデポしてほぼ水と雨具くらいの空身装備になっているので進みも順調である。 笊ヶ岳と小笊の姿が見えた。

笊ヶ岳山頂

 7:50山頂から降りてきた3人の登山者とすれ違う。 聞いてみるとやはり昨日布引山にテント泊したということである。 地元の方で登山道の整備状況の視察に来たとのことだった。 8:00nテント場のような広いところに到着。 ここを左に折れた上がもう山頂だった。笊ヶ岳の標識を入れて富士山の写真を撮る。 山頂には誰もいなかった。 少し雲が出始めていたが、それでも南アルプスの大展望が見えた。 北から間ノ岳・塩見岳の縦走路。 西には荒川三山と赤石岳が、さらにその南に聖岳ー上河内岳ー光岳の稜線が見えた。 南に目を転じると青薙山と七面山が見える。 奥秩父の山と八ヶ岳もそれらしき影が出ていたがやがて雲の中に消えてしまった。 山梨百名山の標識の前でセルフタイマーで写真を撮る。 三角点の標識はハイマツの下に隠れてしまっていた。

山の神

 今日の行程が長いので8:30に下山開始。 途中、単独の男性とすれ違う。 やはり荷物が重そうで大変だ。 ガレバで南アルプスの展望に最後の別れを告げて布引山へ。 布引山からの下山路さえ間違わなければルートミスはないのでそこだけ気を付けて往路を戻る。 桧横手山で荷物は幸いクマにあらされることもなく残っていたので、湯を沸かして昼食にする。 ラーメンを食べて11:40出発。 ここからは急な下りである。 途中、ウインチの放置場所で少し道に迷いそうになったが、踏みあとがあまりに薄くなっているのでおかしいと思い、途中まで引き返して赤テープをたどる。山の神到着が13:24。 かなり下りで足に負担が来ていたが、広河原まで降りて、サンダルに履き替えて渡渉。

下山 VILLA雨畑で入浴

ふたたび、沢沿いの道を歩いて、来るときと同様に廃屋で休憩。 林道でヤマカガシを踏みそうになって慌てたが、15:50に老平の駐車場に到着。 先に到着した3人組の地元の登山客は、駐車場のすぐ近くにお住まいの方だった。 荷物を車に積み込んで、VILLA雨畑まで移動。 ここで、日帰り入浴をする。すずりの湯は宿泊棟の本館から少し離れた趣のある建物。 温泉に一人でつかると落ち着いた。曇り空の中をサイダーを飲みながら静岡に向かって2時間のドライブを楽しんだ。レンタカーを返したあとは、清水港まつりの花火を見て、長い一日が終わった。  

 正直、二百名山の中でなかなか手ごわいと思う山がいくつかあるが、その中の一つがこの笊ヶ岳であった。 標高差2100m登りでなおかつ山中1泊が必要。 水が取れないので担ぎあげるしかないというのは、なかなか過酷で、一般のハイカーには開かれた門戸だとはいえないであろう。 夏山シーズンさなかのこの時期でも結局、登山者は2日間で6人しか出会わなかった。 それだけに静かな山旅であると同時に、素晴らしい展望のご褒美をもらうことができた。
(2014年8月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています