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富士山
富士山

基本情報
1 山名 富士山(ふじさん)
標高 3,776m (二等三角点)
山域 富士山
都道府県 山梨・静岡
位置 N35.21.39/ E138.43.39 
地図 昭文社 山と高原地図31「富士山・御坂・愛宕」
2万5千分の1地図「甲府」
20万分の1地勢図「富士山」
7 山岳区分 日本百名山・甲信越百名山・山梨百名山
登山記録
山歩No 1720-14030
登山日 2014年9月13日(土)~
9月14日(日)
歩程 第一日 4時間30分
第二日 5時間25分
天候 快晴
形態 小屋泊1泊2日
アプローチ 富士急行河口湖駅から富士急バススバルライン5合目
パーティー 1人

 富士山にはこれまで2回登ったことがある。 西宮に住んでいた1993年に富士宮口から登って御殿場口へ下山した。 二度目は2008年に友人2名と東京から車で行って、須走口を往復した。 静岡に住み始めた今シーズン、世界遺産に登録されたことを記念して再訪を目指していたがなかなか天気に恵まれなかった。 そうこうしているうちに静岡県側の3つの登山口はシーズンを終了してしまった。 9月の中旬のシーズン最後の週末にまだ行ったことのなかったもっともメジャーなルートである吉田口からの往復を目指すことにした。

JR三島駅より河口湖ライナー乗車

 9月13日(土)朝ほぼいつも通りに起床して8:10に家を出る。 10:10に三島駅を出る河口湖ライナーに乗るためである。 本当は7:30に静岡を出て富士急ハイランド・河口湖方面へ行くバスがあるのだが、敬老の日の三連休のためか、金曜日に予約をしようとネットを見た時にはすでに満席であった。 仕方がないので、電車賃が少し持ち出しになるが便数の多い三島発着の高速バス「河口湖ライナー」を利用することにした。 とはいうものの、出発当日に座席が確保できていないのは行動計画に狂いが出るので、JRの駅から富士急行の予約センターに電話をして往復の指定席をゲットした。 およそ40分電車に揺られて三島駅に到着。 遊園地へ行くような恰好をした人と登山客が混在した河口湖ライナーに乗車する。

富士急行河口湖駅

 道はさほど混雑しておらず、ほぼ定刻の11:50に河口湖駅に到着した。 今度の課題は、今夜の宿の確保である。 富士山の7合目から8合5尺までにいくつかの山小屋があるのだが、その中にはすでに金曜日の段階で満室の表示を出している山小屋がたくさんあった。電話をして本八合目の「富士山ホテル」に予約がとれた。 あと数名で満室だったというのであやういところであった。 電話で予約するときに、今どこにいるのかと聞かれたが、もし、まだ河口湖にも到着していない状態だったら宿泊を断られたのかもしれない。
 

スバルライン五合目(吉田口コース登山口)

 12:20にバスに乗車して、河口湖からスバルラインの5合目を目指す。 本来は途中駅も停まるのだが、乗客が多いので、1号車・2号車という形で増便していた。したがって、五合目までノンストップ。 13:20に五合目に到着。 そこそこの数の登山客がスバルラインのお土産やの周りにたむろしていた。 小御嶽神社に参拝する。 展望台ではちょうど雲が上がってきてしまったようで、まわりは真っ白だった。 13:40に歩き出す。環境協力金を徴収していたが、義務ではないようだった。 最初の林道は下りになっていた。 乗馬用の馬の背に乗って観光している人もいる。 15分ほど歩くと、泉ヶ滝に到着。 ここは吉田口登山道と佐藤小屋への分岐だ。きのうのうちに登っていたのだろうか、下山していくる人数もそこそこにいる。 さあ、ここからルートは登りだ。   

六合目安全指導センター

 緩やかな車道を通っているとルートを整備する軽自動車が追い越しをしていった。 さらにあがるとシェルターがあってそれを超えると6合目の富士山安全指導センターがあった。 仮設のトイレがあったが、女性用はとてつもなく行列ができていた。 14:07。 ガスは晴れて、下界の河口湖方面の眺めはよい。 気合を入れて7合目に向けて出発。若い女性だけのグループも登っているようだ。彼らは私よりも元気で、横を追い抜かれていった。 14:56に最初の山小屋である7合目の花小屋に到着。ここで標高が2700mである。 

七合目登山者で混み合う

 7合目を過ぎると、少し傾斜が急になってきて、前を歩く登山者のペースが落ちてきているようである。 トモエ館と鎌岩館を過ぎて16:33に富士一館に到着。 ここで標高2815mである。 そろそろ、山小屋で宿泊を決め込む人たちも多いようで、小屋の前に休憩をしている人の姿が目立つようになる。 自分の予約した富士山ホテルは標高3350mなのでまだ500m登る必要がある。 東側を見ると、下山専用道が見えた。 歩いている人はほとんどいない。 八合目が近づくと、「蓬莱亀岩大竜神」の札が現れた。 富士山が信仰の山である証左だ。

本八合目富士山ホテルに宿泊

 17:05にようやく八合目に到着した。 標高3250mの元祖室はテラスデッキのような展望台があって河口湖方面の眺めがいい。 スマスマ富士登山でキムタクと草彅くんが仮眠をとった山小屋として有名。17:29にようやく今夜の宿である本八合目の富士山ホテルに到着した。 標高550mで、宿泊基地としては最大である。 ホテルと言ってもやっぱり山小屋。宿泊者用の風呂があるわけではない。もともと、明治40年に外国人が泊まれるようにきれいな宿泊施設を作ったことに始まるという。 記帳を済ませて料金を支払うと、まず、翌日の朝食の弁当を受け取る。 明日はご来光を山頂で見るかと聞かれて、Yesと答えると自動的に、別館への宿泊が割り当てられて、朝は2:30に起こしに行きますからといわれた。 とはいうものの、宿泊場所に行くわけではなく、靴を履いたまま食堂でそのまま夕食。 15分で食べてくださいという流れ作業。 持ってきた缶ビールを飲みながらハンバーグカレー(前回となりのトモエ館に宿泊したときもまったく同じメニューだった。)を掻き込んで、18:30には寝床に入って就寝。 

ご来光

 9月14日(日)2時に小屋の係員が起こしにやってきた。 えー2時半まで寝かせてくれるんじゃなかったのかよ、と思いつつも周りの人たちも出発の準備を始めている。 となりに寝ていた人は高山病で苦しかったようで、相当気分が悪そうだった。おかげでこちらも何度も目が覚めてしまい、ほとんど寝た気がしなかった。 200円を払ってトイレを済ませて、2:50にヘッドランプをつけて出発。 気温マイナス2度。 さすがに9月の富士山は寒い。 手袋をしていてもかじかみそうになる手をこすりながら、それでも歩く人の数に圧倒されて進む。 9合5勺の鳥居を過ぎると次第に夜が白み始めてきた。 富士急のツアーバスのガイドが寒くて倒れそうになるグループを励ましながらゆっくり登っていく。 5:20、あと100mほどで吉田口の山頂というところで太陽が顔を出し始めた。  

山頂の賑わい

 これまで2回、富士山へ登った時にもご来光は見たのだが、前の晩に小屋に到着したのが遅かったこともあって、山頂でのご来光は見なかった。 今回は初めての山頂でのご来光なので(正確には山頂より100mほど下であるが)、なかなか感動的だった。 岩に腰をかけて、何枚も写真を撮影する。 山が真っ赤に染まっていく姿もそれはそれで珍しい眺めであった。 八ヶ岳でも北アルプスでもこの光景は見ているのだが、富士山という日本の最高峰の独立峰ではなおさら感慨が深い。明るくなると、眼下に山中湖や相模灘が見えるようになった。久須志神社にお参りして南に進む。 山頂には扇家というお茶屋があって、ぜひ、そこで温かいものが食べたいと思ったが、水が凍ってしまって調理ができないようで、行列を作って開店を待っていた客に平謝りの従業員たちであった。

剣ヶ峰登頂

 明るくなってルートが見やすくなったので、剣ヶ峰をめざし、さらにお鉢めぐりをすることにした。須走口下山道を左に分けて、大日岳の小さなピークを越えると、氷柱が河口の岩にぶら下がっているのが見えた。富士浅間大社の奥宮で手を合わせて、シーズンオフでもう閉鎖になっている郵便局の横を通り、閉鎖になっている御殿場口の登山道を眺め、三島岳の横で朝食をとることにした。 しぐれ牛肉とふりかけのごはんを食べたが、温かいものがないとちょっと辛かった。 やはりEPIを持ってきて、味噌汁を作るべきだったか? 係員のいるトイレを使って(ここは料金300円と他の場所より少しお高い)、日本の最高峰である剣ヶ峰を目指す。 剣ヶ峰への登りは、酸素が薄くなっているせいだろうか、かなりつらく感じた。 山頂標識と一緒に写真を撮りたい人は行列をなしているようで、これがひどいときには30分ほど並ぶという。 幸い、自分は15分ほどの待ちで、写真を撮ることができた。 同色の帽子とシャツは今回に備えて買ったおニューである。 

富士山測候所跡

 NHKのドラマで新田次郎原作の「芙蓉の人」が放映された。 120年前に富士山頂に測候所を建設、越冬して観測をした野中到とその妻の話である。 このドラマを見て、あらためて富士山頂の気象観測所を見てみなければならないと思った。気象衛星の発達や、さらに観測装置が発達したことにより、現地での人手による観測の必要性は失われ、2004年に自動観測装置が設置され無人施設となり、気象観測(気温、気圧、日照時間(夏季のみ))を継続して行っている。 従い、無人ではあるが建物をこうしてみると、なるほど、建設当時の苦労がしのばれる。 構造物を建てるなら、頂上よりももっと平らな部分もあるだろうに、この剣ヶ峰という最高峰の狭い場所に建物を作って、毎日風力と風向を計測した先人たちの思いには改めて脱帽である。

お鉢めぐり 北アルプスも見える。

 お鉢めぐりは楽しいハイキングコースである。 7:28に剣ヶ峰を出発。 残り30分弱で再び吉田口山頂の久須志神社まで戻る平坦なコースだ。 行く手には雲の中に八ヶ岳とさらに奥には、北アルプスの穂高連峰が見えた。 日本の最高峰ゆえに、日本のすべての山はここから見下ろすことになるのだ。 火口の底には万年雪と思われるところもある。 白山岳の南側では、昼寝をしているひとたちもいた。 きっと徹夜で登ってきているのだろう。 この横に、水をとっていると思われるチューブがあった。 金明水という水場地点が地図にも出ている。 とはいうものの9月のこの時期にはこんこんと水がわいているという姿はなかった。 8:06に久須志神社に戻ってくる。 扇屋をの覗いてみると今度は営業していたので温かいトン汁を食べていくことにする。8:15、須走口と一体となった下山道から富士山頂を後にする。

下山ルート 山中湖を臨む

 下山ルートは八合目までは須走口と一体である。 自分の宿泊した富士山ホテルまで一気に下って、そこで休憩。 間違えて須走口に入らないように、とツアー客のガイドが注意を促していたが、実際八合目の分岐には大きな通行止め標識があったので間違うことはないであろう。 七合目に臨時のトイレがあり、そこから六合目までは30分。 来るときに通った安全指導センターがある。 たくさんの人が歩くコースはここから河口湖登山道となり、スバルラインの5合目に続くのだが、自分はどうしても佐藤小屋に寄ってみたかったので、そこから吉田口五合目へと向かう。 正面には山中湖がきれいに見える。

五合目佐藤小屋

 佐藤小屋は、吉田口の五合目にある。 ご主人に、芙蓉の人の話をしたら、残念ながらロケは別のところでやったとのことだった。 ビールをいただきながら昼食休憩にする。 その間も、吉田口の登山道をどんどん上がってくる人がいた。地元の人、本格富士山に登る人は正規の一合目から登るのかもしれない。佐藤小屋は富士山で唯一の冬季営業をしている山小屋だ(5名以上での予約が必要)。大正2年(1913年)の創業で、今の小屋主さんで四代目だという。創業100周年ということでますます発展してもらいたいものである。佐藤小屋から林道を歩いてスバルラインの五合目に至る。 臨時バスに乗って河口湖へ。河口湖畔の開運の湯で一風呂あびて、再び三島行の高速バスで帰った。


 三回目の富士登山であったが、これまでと比較して天気と展望に恵まれた山行であった。世界遺産に登録されたことで外国人の方も多くなり、受け入れ側も安全指導に本腰を入れているというのがわかった。 静岡に引っ越したことで、近距離の山にはなったが、 山小屋一泊でしかもマイカーでなかったので少し費用的にはかさんでしまったが、日本一の山への憧れを満たしてくれる9月の1日であった。 これでいわゆる5合目登山口から山頂を目指す4コースはすべて踏破したことにはなるが、山頂を目指さないハイキングも試してみるのが面白いかもしれない。
(2014年9月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています