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猿ヶ馬場山
猿ヶ馬場山

基本情報
1 山名 猿ヶ馬場山(さるがばばやま)
標高 1,875m 
山域 飛騨高地
都道府県 岐阜
位置 N36.13.33/ E136.56.34 
地図 昭文社 山と高原地図43「白山・荒島岳」
2万5千分の1地図「平瀬」
20万分の1地勢図「金沢」
7 山岳区分 日本三百名山
登山記録
山歩No 3680-14016
登山日 2014年4月26 日(土)
歩程 7時間45分
天候 快晴
形態 前夜発日帰り
アプローチ 東海北陸自動車道白川郷IC
パーティー 1人

 日本三百名山の中で自分の実力で本当に行けるだろうかと悩んだ山がいくつかある。夏道登山道がなくて残雪期しかいけないいくつかの山がそうである。 今回思い切って4月の最後の休日に車で出かけることにした。目指すは猿ヶ馬場山である。 当初、山中1泊という案も考えたがどうにも自信がない。 最近WEBで登山記録を載せている方がおよそ8時間ほどで山スキーで降りてきているのを見て自分でもトライすることにした。

道の駅白川郷

 4月25日(金)会社を定時に抜けて家から3駅先のレンタカー店舗でトヨタのAQUAを借り出す。 いわゆるエコカーというやつを運転するのは初めての試みである。荷物を積み込んで20時に静岡を出る。静岡ICから東名に乗り、途中21:20に浜名湖SAで休憩。 遅い夕食を食べる。(しらすどんぶりとあおさそばのセット)さらに車を飛ばして深夜0:30に本日の目的地である道の駅白川郷まで到着した。 白川郷ICを降りてすぐのところだった。 トイレなどの施設がある建物の前は駐車場はさほど広くなかったが、裏手の一段下がったところには何十台もの車を停めるスペースがあった。 仮眠していると思われる車も何台か停まっている。

世界遺産の合掌造りと野谷庄司山

 朝、テントの中で寒さから夜明け前に起きてしまう。 外に出てみると美しいの桜が満開の花をつけていた。おにぎりの朝食をとって道の駅でポリタンクに水を汲んで5:35出発。 荻町のせせらぎ公園駐車場に車を停める。 どうも猿ヶ馬場山に登る人にとってはここが定番の駐車スペースのようだ。トイレは朝8時まで使えないらしいが、ゲートは入場自由になっており、早朝からでも駐車できるようにしてくれているようだ。 同じように登山の準備をしている人が他に2人いる。目を上げると西には雪をかぶった野谷庄司山が見えている。

出会い橋を渡って登山道へ

  6:10出会い橋を渡って、世界遺産の白川郷の合掌造りの建物の前を通る。 古いつくりの建築物なので文化財として保管されていると思いきや、食堂や民宿として営業をしているようだ。 浴衣を着て民宿から庭に散歩にでている若い女性のツアー客も見えた。 道路を横断して明善寺という寺に向かって進む。 猿ヶ馬場山へいくにはこの寺の裏手の林道をあがっていくのだ。 後ろから、長野から来た単独の男性が追いついた。 林道の分岐点などわかりにくいところではこの方が持ってきていたコピーが約にたった。 聞くと、やはり日本三百名山を目指しており、今日下山後に中宮温泉に移動して、明日は笈ヶ岳に登るつもりだという。同じ目標を持っている同士なので話もはずみしばらく一緒に歩く。 

宮谷林道から稜線へ

 8:00に宮谷林道と合流する。くだんの長野の男性は自分より歩くのが速いので、もう先に行ってしまった。 今回は山スキーなのであるが、このあたり標高850mでそろそろ残雪が現れ始める。 ただし、そこまでの林道歩きが長いので、とても兼用ブーツでは歩けないだろうと、山スキーとブーツを担いでいるので荷物の重いこと。林道を少し歩くと、右手の谷筋に踏み跡と赤テープがある。 先行の登山者たちはここから尾根伝いに帰雲山へ登っているようである。登山靴のまま雪の谷筋に入っていく。 ふみ跡ははっきりしているので迷う心配はない。地図を見ると、このあたりの真下を、東海北陸自動車道のトンネルが通っている。 

帰雲山への登りでスキーをはく

 やがてルートは南に方向をとり急な尾根を上がっていく。 気温が上がってきてだらだらと汗をかき始めたのでアウターを脱ぐ。 樹林の中は静まりかえっている。 そういえば、秋田県の乳頭山に行ったときも同じように兼用ブーツをかついで斜面をあがったものである。 9:16標高が1200mの地点で休憩。 急な登りは終わり少し傾斜が緩やかになってきた。 正面に見えるのが帰雲山だろうか? 9:56標高1340mで平なところに出た。 パラボラアンテナがあるので帰雲山だろうと思い休憩して給水+行動食をとる。 (実際は帰雲山は標高1622mなのでもっと先だったのであるが。)10:10、山スキーのブーツに履き替えて、板にシールをしっかり貼っていよいよ山スキーツアー出発。 そこから方角は東に曲がり20度くらいの斜面をジグザグを切って登っていく。樹林の疎になったところを歩きたかったが、気温も上がってきており雪崩の危険も気になったので、木々のあるところを登っていく。 

帰雲山

 11:00、平たいピークに出る。 後ろから単独の登山者が追いついてきた。「ここが帰雲山ですね。」 そうだったのか、私がさっき休んで山スキーをはいたところはまだ手前だったのだ。帰雲山にはサブザックのような荷物が10個ほど木にぶら下がっていた。 どうも、団体の登山者が入っているようだ。 おかげで踏み跡がはっきりしているしラッセルはまったく不要である。帰雲山からは少し下り。 鞍部に出るとそこからは緩斜面で山スキーで歩くには手ごろな低木の大地が広がっていた。 11:35に下山してきた人に「山頂までどのくらいですか?」と聞いてみた。 くだりでここまで35分かかったからといわれた。 そうすると、登りではまだ1時間くらいかかるのだろうか。 結構遠そうだ。 稜線を北東に進み、また南東に向きを換えて進む。 

山頂への登り

 12時に、林道の登りで一緒だった長野の男性が下山してきた。さすがに健脚である。翌日の笈ヶ岳での無事を励ましてついでに、自分のホームページ「日本山歩日記」の宣伝をしておいた。12:20、次第に標高を上げてゆき、このあたりが山頂かなという広いピークが見えてくる。 たしかにこの山、S字状態に樹林を縫っていくのでルートファインディングが大変である。 幸い、木に赤いテープが巻いてあるので、それを忠実にたどっていけば心配はない。 にぎやかな声がしたかと思うと、20名の団体が下山してきた。 クラブツーリズムのツアーのようだ。 この山に来るなんてたいしたものである。一番後ろにいたリーダーがすれ違いざま一言いった。「気をつけてください。 山頂付近の雪の上にクマの足跡があったので、出るかもしれませんよ。」 気をつけろといわれても困る。いまさら引き返すわけにはいかない。 

猿ヶ馬場山山頂

 山頂直下で、帰雲山で抜いていった男性が下山してきた。 彼も、クマの件で脅かされたのであろうか? 山頂滞在の時間はさほど長くないようだった。あと5分くらいですか?ときいたら、10分だ、ぶっきらぼうな返答があった。 山頂に近づいてからまた平原でどこがピークかわかりにくかった。 12:53、6時間を越える歩きを経て、ついに山頂の平原に到着。 南西にひときわ白く輝く白山が見えた。見事だ。 そらは快晴。 高気圧に覆われた春らしい風のない天気だったので、視界はさほど遠くまでが見えるわけではないが、それでも白山の手前に三方崩山が、反対方向には白木峰や金剛堂山が見えた。 こういった山にも挑戦したいものである。 

滑走開始

 湯を沸かして味噌汁をつくり、おにぎりを食べる。 樹林の影からクマがぬっと姿を出すのではないかとびくびくしたが杞憂だった。 山頂には標識もない。 そういえば、この山登山口も含めてどこにも道標はなかった。 無名の登山道のない山があえて意地を張っているかのようだった。 約30分山頂にいたが終始ひとりだった。 おなかいっぱいおにぎりと展望をいただいて13:20下山を開始した。シールをはずして、スキーブーツを滑走モードにして、ゆっくりと下降を開始する。 S字の平たいところで赤いテープを見落とさないように注意しながら、それでもたくさんの登山靴のふみ跡があるのでそれを見つつ滑っていく。 斜面は平均15度くらいであろうか。 スキーで滑るにはとても気持ちのいい斜面だ。 

樹林の中の下り

 帰雲山の手前では登りになるのでさすがに板をぬいでリュックにくくりつけてつぼ足で上がる。 くだりはスキーを使っているだけあってずいぶん速いので途中で、クラブツーリズムの団体に追いつくかと思ったが、彼らも結構健脚である。 姿を一度も見ることはなかった。 帰雲山を出て、最後林道に出る手前で傾斜が急になってきたので、スキーをあきらめてリュックにくくりつけて歩いた。 スキーブーツを入れたシューズバッグと板と両方を担ぐとやはりバランスが悪く急斜面では滑落しないだろうかとひやひやした。

下山---せせらぎ公園駐車場

 林道に出てからは登山靴に履き替えてあとはひたすら登ってきた道を下っていく。 気になるのは駐車場の閉鎖時刻だ。 朝、車を停めたときに確認したのは、17時に駐車場は閉鎖しますという札だった。 もし、閉鎖されてしまって、それ以降車を外に出せないとなってはやっかいである。高度計を見ながら、なかなか現在高度が下がらないのにやきもきしながらそれでも山スキーで疲労した足にかつを入れながら歩いた。 16:55に白川郷に到着。 まだたくさんの観光客が歩きまわっており、スキーブーツとスキー板を担いだ自分の姿がずいぶんまわりから浮いているのに気づいた。 出会い橋を渡って駐車場についたが、まだたくさんの観光バスや乗用車が駐車した状態のままだった。 今日はゴールデンウィークの初日だということで、駐車場の営業時間も17:30まで延長になっているらしい。 荻町のデイリーヤマザキで夕食の材料を買って車を出発させる。 傾いた夕日が満開の桜を照らしており、まるで、また来いよと見送ってくれているようだった。 

 念願の猿ヶ馬場山アタックを果たすことができて満足であった。登山道のない残雪時期にしか登ることのできない山だということで戦々恐々としていたが、確かに時間はかかったし、ルートもワイルドではあったが、それだけにすばらしい充実感を得ることができた。 それにしても、自分の歩くスピードの遅さにはあきれたものである。 同時に上り始めた長野の単独行男性より2時間くらい遅れて下山しているのではないだろうか? こんなことで300名山全部登れるのだろうか?
(2014年5月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています