日本山歩日記 本文へジャンプ
太平山
太平山

基本情報
1 山名 太平山(たいへいざん)
標高 1,170m (一等三角点) 
山域 太平山地
都道府県 秋田
位置 N39.47.49/ E140.18.39
地図 2万5千分の1地図「太平山」
20万分の1地勢図「秋田」
7 山岳区分 日本三百名山・東北百名山
登山記録
山歩No 3100-23070
登山日 2023年10月30日(月)
歩程 9時間30分(金山滝ー女人堂ー中岳ー奥岳 往復)
天候
形態 日帰り
アプローチ JR秋田駅 秋田市内から県道15号で約18km
パーティー 1人
動画URL https://youtu.be/EoRIj5EacP0

 太平山は日本三百名山の山である。秋田の人々にとっては本当にここが故郷の山ということで信仰を集めている山でもある。 過去には市民登山山開き、6月の第1週に秋田市内からバスを出していたこともあるぐらいである。 コロナの頃になってからバスはどうも出ていないようだ。 秋田市内から登山口である路線バスがないのでなかなか行きにくくなってしまい、ずっと計画としてはレンタカーを借りていくことを温めていたがなかなかチャンスに恵まれなかった。2023年6月にも行こうと一旦計画したが天気が不順のため延期した経緯がある。 今回、紅葉の時期に再チャレンジで白神岳とセットで東北遠征を企画し、その遠征の最後の日にこの太平山に登ることにした。


早朝ホテルを出発

前夜は白神岳に登って、秋田市内のホテルであるユーランドホテル八橋に宿泊した。 サウナに入って足を延ばして眠れるというのはやはり気持ちがよい。 翌朝5時に起きてチェックアウトを済ませ、出発する。 駐車場で車のエンジンをかけたときに、フロントガラスが完全に夜露で濡れて見えなくなっていて、発進の時に結構怖い感じがした。 5時といえばちょうど明るくなる時間である。 ホテルの向かいのコンビニの駐車場に車を停めて、朝食のおにぎりと牛乳を買う。 そこからはgoogleマップのナビの誘導の通りに太平山の最短登山口にあたる旭又登山口を目指して進む。 太平山登山道の最短コースは秋田市仁別にある旭又登山口からのピストンである。これであればおよそ6時間ほどの行動時間で下山することができる。 最初このコースで太平山をピストンしようと考えていた。 

旭又登山口通行止め

しかしながら車が旭川ダム公園に着いた時に、驚愕の立て札を発見した。 そこから旭又登山口まで9kmの林道を走るのだが、先の林道が通行止めになっていた。 7月に起きた集中豪雨の影響で道路が崩壊し.、通行できない状態になっているということで、道路の真ん中に一般車両通行止めの立て札が立っていた。 これは困った。 事前に登山口へのアプローチをちゃんと調べておかなかった自分が悪い。 とは言え、ここまで来て太平山に登らないというのも残念である。 他に太平山に登ることのできる登山口がないのか探してみたが、 確かにYAMAPの記録で見てもここ一二ヶ月あまり太平山の山頂まで登ってる人がいない。 やはり最短コースの登山道がアプローチの面でたどり着けなくなっているので、かなり登山者の人口を減らしている影響があるようだ

八田川駐車場

YAMAPで確認すると太平山スキー場から前岳・中岳をへて縦走路を歩いて太平山まで登っている人の記録があった。 あるいは金山滝の登山口から登り始めて、途中から太平山スキー場コースと合流して同じように縦走している人もいる。 しかしながらいずれにせよ太平山の山頂まで行くにはこの縦走のロングコースの他にルートしがなさそうに思えた。 そこでGoogle Naviで行く先を金山滝の登山口に設定して、とりあえずそこまで行ってみることにした。幸い旭川ダムのところからは、この金山滝まで実はさほど遠くなく、車で15分ほど走ったところに登山口はあるようだ。 さほど悪路をたどることもなく舗装の道を走って無事に金山滝登山口にたどり着けた。いったん車で登山口まで行ってみたが登りだし地点のところには車を停めるスペースがなかったので百メートル程戻って、八田川の横の広場になったところにレンタカーを停めてみる。 幸いこの広場の駐車場には簡易式のトイレも設置してあった。 今日はここから出発である。

金山滝

 07:05、駐車場を出発する。 大きな杉を横に見ながら登山口まで歩いて5分ほどで到着した。07:11 金山滝登山口。 登山口には尾根の取付きの概念図が記載されていた。 登山口から川を渡り神社の社を越えて登っていくようである。最初川を渡渉して向こう岸にわたるということは分かったが、そこにかかる木橋は朽ちていて危険なようで、一旦川の中に降りて縁石を渡りながら進んでいく。 神社の横を通過するときには足場の悪いところはロープを使いながら上り、樹林の中に取りついていく。 実はここでちょっとルートを間違えてしまい、一つ手前の沢でのひとつの隣の沢の中に入って行きそうになった。 幸い後ろから来た登山者の方が正しいルートに行ったので、自分が間違っていることに気が付いて、引き返して元のルートに戻る。樹林の中はジグザグを切りながら次第に標高を上げていく。 しかしながらこちらの樹林コースは参詣道だということもあり、あまりに急坂だということはない。宗教の山ということもありところどころに仏像が立っている。 また途中墓石らしきものもあったりする。 登りだす場所の標高が100m未満だったので今日も標高差1000mを登ることになるようだ。 縦走コースだということもあり累積標高はもっとすごいものになるのであろう。

稜線の紅葉

 10分間で60m標高を上げることを目標にヤマレコの音声ガイドに従い登って行く。 292m地点て一度休憩をする。 8時20分に下山してくる人とすれ違う。 この時間に下山してくるなんて誰かと思ったが、最初に私を滝の横で正しい道で通り過ぎていった方だった。 決して太平山まで登る予定ではなく、女人堂を見に行ったようである。 女人堂にはクモの巣が張ってあって、荒らされている気配もいなかったようなのである、 秋田県は今年クマの被害が非常に多い。 山から下りてきて人家に侵入したりしている。 この方も女人堂がクマに荒らされていないか確認にでかけたようである。 クマが近くに近づいていないんだなと言うことで説明をしてくれた。 登山する方向にどうもこの尾根にクマがいないというのは良いニュースである。自分は女人堂よりも先に進むのでまずはそこまでは大丈夫だということが保証されたわけである。 標高が600mを超えてきた。 樹林の中を次第に急になってきた道を進む

女人堂

 08:48 女人堂到着。 ここからは秋田市内がきれいに見える。 ルートはこの女人堂を過ぎて、さらに奥へと進んでいく。 女人堂から一旦鞍部へ下り、少し平坦な道を進み、笹やぶを抜けていく。 やがて正面に大きなピークが見えてきた。 このピークが前岳である。標高差100mぐらいを登り、8:58に 前岳到着。 ここの標高が770mである。登りだした地点が100mだったので、なんとかすでに標高差で半分は登ったということになる。前岳から中岳までコースタイムで一時間弱になってる。 中岳の山頂が標高950mなのでここからの約200m標高あげるのが一番しんどそうである。 前岳の山頂には日本山岳会秋田支部の創設記念の道標があった。 前岳を出てしばらく行くと左手に笹やぶが現れた。 見るからにツキノワグマが生息していそうな場所であった。今回クマ鈴を四つもぶら下げてジャラジャラ音を流して歩いているので、大丈夫だろうと思ったが、細心の注意を払ってく。 クマが潜んでいそうなところに目をやり過ごす。 中岳の登りは、比較的急な登りだった。 あまりジグザグを切っていくというよりはほぼ直登りのような形で、足場の悪いところには固定ロープが取り付けられているのを頼りに一気に標高を上げていく。

中岳

9:38 中岳到着。 なかなか展望がよい場所であった。 先ほどの女人堂と同じぐらいきれいに南西側の展望が開けていた。 祠なのか避難小屋なのか建物があったが、中に入れないようになっていた。 一旦ここでカロリーメートで腹ごしらえをする。 それからジェルも半分を飲んでみた。ここからは地図で言うとあまりアップダウンのない道となる。 中岳から4.4kmで太平山の山頂だという標識が現れた。 ここからまだ遠くに奥岳と思われる山容が見えたので稜線の縦走はまだそこそこあるようである。中岳からの下りは落ち葉が積もって柔らかくなっており、軽く走るのに適した道であった。 こんな縦走が続いてくれればいいなと思ったんだが、そこまで甘くはなかった。 下り切ったところから150m程は幅広いルートであったが。やがてルートは稜線の北側を巻くような形になりササに覆われた稜線のトップは歩かないことになった。 だから北側の方向からずっと左側がどちらかというと崖になっておりしかもルートは狭く落ち葉も堆積するので注意して歩かないと左側に落ちてしまうようなルートであった。思ったほど飛ばすことができない。トレランシューズでも走ることができないようなコースである。 おまけに2日前に降った雨の影響で滑りやすくなっている。山側になる右手にピッケルを持って気をつけながら進んでいく。 


剣岳から見る奥岳の姿

 0.5キロごとに太平山の山頂まであと3.9キロとか、あと3.4キロとか表示した真新しい看板が現れた。おそらくこれはトレイルランニングの大会に使われているコースなんではないかなと思った。 実際、2週間前にAkita Trail Run Festivalという大会が行われ、Youtuberのくれーじーかろさんもゲストランナーで出走していたようだ。 登ったり降りたりを繰り返し、一箇所はトラバースしながら沢の横を通るので、水が汲める場所であった。 10:26 剣岳を通過。剣岳は標高1002mのピークであるが。登山道はこのピークを通過しないことになる。太平山まで2.9キロの標識が現れた。 そこから始めて目指す太平山の奥岳の姿がはっきりと見えた。 山頂に社があるのでどこから見てもよくわかる。 ここを登りきったところが野田分岐であった。 分岐の片側は本当に剣岳山頂を踏んでいくコースである。 ここから野田に降りる登山道があるが正直あまり入ってる人が多いのかどうかわからなかった。野田分岐を過ぎてからは草に覆われた道を進んでいく。


弟子還岳

11:26 宝蔵岳。 ここで初めて旭岳コースの合流地点であった。 2時間強で登山口から上がれるメジャーなコースだということもあり、この分岐を過ぎてからは一気にルートがわかりやすくなった。宝蔵岳分岐を過ぎてから、弟子還岳への登りはは結構急になっており、岩場を通過する尾根道が続く。 登りで3か所者ほど鎖があった。 手にストックとピッケル持ってるので、意外と垂直に近い鎖場を登るのは苦しかった。 おまけにホールドが滑り、スタンスが摩耗した岩だったりして足を置く場所を探すのが結構苦労した。 慎重に登っていって鎖場を通過する。
弟子還岳を登りきると稜線歩きとなった。 一際高くなって稜線を歩いていくと祠が見えた。ここが弟子還岳の山頂である。11:44 弟子還岳で5分休憩、 目指す太平山奥岳の山頂まではここからあと20分である。 急な登りで、標高差であと40mぐらいかなと思いながら進んで行く。 12時前までに山頂に到着したかったが、残念ながら少し超えてしまった。
 

太平山奥岳山頂

 12:12 大平山山頂到着。山頂には誰もいなかった。 太平山の山頂の一等三角点にタッチした後、360度動画を撮影する。南に鳥海山、秋田駒ヶ岳、そして東には和賀岳、早池峰山が見えることになっていた。 また八幡平も岩手山も眺められるようになっていたが、岩手山は残念ながら雲の中であった。 山頂には宿舎があるのだが営業していなかった。 休憩舎として立ち入ることもできなかった。 太平山三吉神社の前で座った、三角点のすぐ横で持ってきたカツサンドと豆乳の昼食を摂る。 万歳三唱の動画を撮影した後に、南側をバックに自撮り写真をセルフタイマーで二枚ほど撮ってみた 。思ったよりも長いコースになってしまったので、当初予約した17時発の新幹線は乗れそうにないので、JR東日本のえきねっとにスマホからアクセスして指定席の列車をもっと遅いものに変更しようとしたかったが、電波が非常に弱くうまく、アクセスができなかった。 仕方がないので電車の変更諦めて山頂をすることにした。


中岳登り

12:40 山頂出発。 レンタカーの返却時刻と、東北新幹線の最終の時刻を気にしながら、頑張って降りようとした。 弟子還岳までは意外に時間がかかって、ルート合ってるんだろうかと不安になりながら、時々スマホ取り出して現在地を確認しながら進む。 痩せた岩稜は結構慎重に足場を見つけながら進む。 野田分岐を過ぎたあたりで、急に後ろの方向からガサゴソと音がしたのでまさか熊かと重いびっくりしたが、実は登山者であった。 朝女人堂よりもだいぶ手前で自分を追い越していったトレランの格好した若い方だったが、自分よりもずっと先に居ると思っていたので、このくだりのルートで自分の後ろに現れたのにびっくりした。 聞いてみると途中でルートを間違って大平山キャンプ場の方面にだいぶ降りてしまったらしい。 そこで登り返して山頂まで来たと言う。 たいへんである。 最もスピードの速い方なので、私を起こしてあっという間に姿が見えなくなった。 中岳までは延々と我慢の縦走である。 相変わらず道はあまりよくないのでそんなにスピード出せない。 標高950mぐらいと900mぐらいの間を上ったり下りたりする感じである。 足場が緩んでんでるところで尻餅をついてしまった。最後中岳の登りが標高差が70メーターほどの登りできつかった。 


前岳

14:40 中岳到着。 15時に近くなり中岳の山頂でもだいぶ日が傾いてきた気がする。 スマホを取り出して電波が入るか確かめてみるとラッキーなことに山頂ではなかなか繋がらなかったネットワークがここでうまくつながることができて、帰りの列車をその日の最終の新幹線こまちに変更することができた。 これで当初の計画どうりの18時半にレンタカーを返せばなんとか大丈夫なので、目標下山時刻の計算を17時ということで焦りすぎずにまたゆっくり過ぎずに降りる。 目標が立った中岳からは引き続き下りくだんのクマがいるような雰囲気の場所を横に見ながら前岳と進んでいく15:19 前岳到着。 前岳からは比較的わかりやすい稜線だと言うことで、ルートに沿ってストックとピッケルを交互に足元に置きながら降りていく。 一度失敗してピッケルの先で自分の左足をついてしまい痛さに涙が出る。 あとで靴下脱いでると爪が割れて出血していた 。まあ比較的安定したスピードとペースで降りていく。 途中で草むらで何者かが動く気配があったのでクマ鈴をジャラジャラ振りながら進む。 相手さんは姿を見せなかったのでまあ事なきを得た。姿を見ていないので熊だったのか鹿だったのか分らない。 あまりルート上に熊の糞が落ちているという気は事は感じなかった。ヤマレコのアナウンスで現在地の標高を確認しながら最後に急に急なジグザグ降りていくと沢の音が聞こえた。 ゴールはもうすぐだ。 登山口の滝なのでそこまでいけば下山である。


金山滝下山

 16:33 金山登山口登山口でエンディングの動画を撮影した。 日没までぎりぎりまで歩いたという感じであった。 下りを頑張って降りてきたことでおかげでレンタカーを返却する時間も間に合いそうだ。16:43 駐車場駐車場についてほぼ日没を迎え、暗くなる中で周りにクマが居ないようにと願いながら、持って帰る荷物をまとめて一つにまとめてリュックに入れる。 結構汗をかいていたので上着は全部着替えた。 17:05、駐車場を出発する。 ナビに従いながら秋田市内に入って行く。途中で曲がるところを間違えたりしたが、17時45分無事に川尻大橋のレンタカーの貸し出しの場所に戻ってくることができた。 ガソリンを入れてレンタカーを返却、18時9分の秋田中央交通のバスに乗って秋田駅まで戻った。駅前の吉野家で夕食を食べる。 すき焼きご膳と自分へのご褒美で缶ビールを注文した。19:10こまち43号に乗車。東京駅に着いたら23時を回っていた


ずっと計画を温めていた太平山にようやく登ることができた。当初最短距離の旭又コースから登ろうとしてその計画が崩れたときにはどうしようかと思ったが、幸い好天にも助けられ、帰りの新幹線の時間も遅らせることでこの名山の山頂にたどり着くことができた。 東北の山の山頂から東北の周りの名山を眺めるという経験はあまりないがこの山頂からは鳥海山や早池峰山・八幡平などかつてのぼった名山を眺めることができた。 稜線伝いのロングコースで今後もあまり登る人が多くはないルートかもしれないが、太平山の一般には知られていない魅力を感じることができた登山だったと思う。
(2023年11月記)

 日本山歩日記WEBトップ
地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています