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鹿島槍ヶ岳
鹿島槍ヶ岳

基本情報
1 山名 鹿島槍ヶ岳(かしまやりがだけ)
標高 2,889m (二等三角点)
山域 飛騨山脈後立山連峰
都道府県 富山・長野
位置 N36.37.28/ E137.44.49 
地図 昭文社 山と高原地図35「鹿島槍・五竜岳」
2万5千分の1地図「神城」
20万分の1地勢図「高山」
7 山岳区分 日本百名山・甲信越百名山・信州百名山・花の百名山
登山記録
山歩No 1470-13039
登山日 2013年8月17 日(土)
歩程 8時間40分
天候 快晴
形態 前夜発小屋3泊縦走
アプローチ JR大糸線白馬駅ー川中島バス猿倉ー白馬山荘ー唐松岳頂上山荘ーキレット小屋
パーティー 2人

 2年越しの計画で後立山連峰の縦走をした。 今回の目的地は、白馬ー唐松ー五竜ー鹿島槍ー爺というメインの稜線である。 不帰の剣など本当に自分たちの実力で通れるのだろうかと不安はあったが、なんとか予定どおりのコースをたどることができた。 いよいよ最終日は、北アルプスの雄、鹿島槍ヶ岳である。 前回、1986年に登った時は、午後になってガスがあがっていて、山頂での展望を楽しむことができなかった。 今回は展望が期待できそうで楽しみである。 

キレット小屋早朝出発

 8月17日(土)後立山連峰の縦走の最終日は、4日間で最も長い行程となる。 何しろ、扇沢発17:55のバスを逃してしまうとその日のうちに大阪や横浜に帰りつくことができないということもあって、早立ちすることにした。 キレット小屋の朝食を食べたかったのはやまやまであるが、前日から弁当にしてもらい、暗いうちから起きることにした。 前日、3:25起床、4:30出発と決めていたはずなのに、H.H氏は3時にもう起きてごそごそし始めていた。 寝る場所でヘッドランプをつけて動いていると回りに迷惑なので、リュックを持って1階の自炊場まで降りる。

八峰キレット

  まだ真っ暗なので、とりあえず湯を沸かして、昼食に食べる釜飯に湯をかけておく。 その間に、昨日受け取っていた弁当を食べて朝食とする。4:16キレット小屋出発。 ちょうど、北側への縦走をするカップルも同じ時間にヘッドランプをつけてでていった。 われわれも歩いているうちに次第に明るくなるだろうとたかをくくってヘッドランプをつけて歩き始める。ところがこれが誤算だった。 いきなり小屋の裏手からハ峰キレットの難所が続く。 看板にあるとおりストックはリュックに括り付けてあるが、先が見えないところを鎖を伝って登るというのは甚だ恐怖である。

鎖場の通過

  以前、この八峰キレットを通ったとき、怖い鎖場が一瞬だったような気がしたが、どうしてどうして、今回は、小屋の裏手からずっと急傾斜の登り、いったん草付の尾根に入ってもまだ岸壁沿いを鎖につかまりながら梯子の上を踏んでいくという感じで、ずいぶん長い難所通過だった気がした。 空は一向に明るくならず、ようやく西側にそびえる剣岳のシルエットが朝の薄暮にうっすら姿を現したころには最大の危険個所を通過した後だった。  

鹿島槍への岩稜のぼり---振り返って五竜岳

 鎖がなくなっても尾根筋の登山道の傾斜は急で、ほとんど両手両足を使いながらよじ登っていくという表現がふさわしいルートであった。 岩肌に黄色いペンキで丸印がついているのをだどりながら、ルートを見つけていった。 5:20にようやく眼下に八峰キレットの小屋を見下ろせる稜線のとっつきに上がりきることができた。 後ろから単独行の女性が追いつきつつあるのが見えた。 ここまでくると東側の空がよく見えるのでもう日が昇っているのがわかるが、太陽は雲の中のようでご来光を楽しむというものではなかった。。 

北峰との分岐

 ルートは鹿島槍ヶ岳の北峰の北側を巻くように吊尾根の鞍部へと向かっていく。 ここはさすがに両手両足で歩くというほどの傾斜ではなくなったが、まだ足元に石がごろごろ転がっており気の抜けないところだ。6:02に北峰との分岐に到着した。 ここから北峰往復は15分である。 先ほどの単独行の女性が登頂して降りてくるのが見えた。 山頂はどうでしたか? と聞いてみたら展望は抜群だということ。 われわれも山頂を独占すべく、目指した。

鹿島槍ヶ岳北峰(南峰のバックに剣岳)

  6:21に鹿島槍ヶ岳の北峰に到着。 ここは三角点があるわけでもないし、最高峰がある南峰と比べて目立たない存在だが、登ってみるとその展望は目を見張るものだあった。 北を眺めると早朝の雲海の中に、島のように五竜岳が浮かんでおり、その向こうにわれわれが起点とした白馬岳の独特な姿が見えた。 随分と遠くから来たのがわかった。もう一つは西にそびえる鹿島槍ヶ岳の南峰のそびえる姿が圧巻だというところだろう。 手前には北峰の影が写っていた。 

吊尾根のお花畑とダイレクト尾根

  6:28に分岐まで戻り、南峰を目指すことにする。 朝早い時間に冷池山荘を出た人が、ちょうど、鹿島槍の南峰を越えて吊尾根上でわれわれと交叉する形となった。 吊尾根から南側に落ちている北俣本谷の入り口は長く雪渓が残っていたせいであろう、ミヤマアキノキリンソウの黄色い花などが咲き乱れていた。 結構すごい急斜面なので、ここを山スキーで滑り下りる人がいるというのが信じられないことだった。。 

鹿島槍ヶ岳南峰

 最後のジグザグを登り切って鹿島槍ヶ岳南峰の山頂到着7:10。 山頂にはたくさんの人が休憩していた。 どちらかというと、われわれのように八峰キレット側から上がってきた人は少数派で、昨夜、冷池山荘に泊まったと思われる登山客がほとんどだった。 そのなかでも、これから八峰キレットに縦走するのだろうというようないでたちの人は2-3割りだろうか? あとは、明らかに冷池からのピストンと思しき軽装の方が多い。ちなみに自分の来ている青い山シャツは大学時代のサークルで揃えたもので、1986年にこの鹿島槍の山頂に立った時に着用していたものである。 物持ちがいいというべきか、ファッションを気にしないというべきか、要するに昭和の時のそのままの格好である。 

北アルプスの大展望(はるか槍・穂高を眺める)

  山頂からの景色は申し分なし、はるか南に槍ヶ岳が見えた。 穂高と向こうの吊尾根もまるでこっちを見ているようである。 西鎌尾根と鷲羽、水晶、赤牛に至る稜線もくっきり見えた。 正面には爺ヶ岳がやはり双耳峰の山頂を見せており、その先はるか遠くに南アルプスと富士山も見えた。 西には、やはり剣と立山の姿が圧巻。 ひそかに昨年から計画してまだ行けずにいる毛勝三山もよく見えた。 

布引岳から見る鹿島槍ヶ岳

 プルーンとビスケットを食べて腹を膨らませて7:36に山頂を出発。 ここからの道はガればではあるものの八峰からの登りと比較すると歩きやすいきれいな縦走路だった。 たくさんの登山客が上がってくる。 後を振り返ると、鹿島槍ヶ岳の表の顔が見えた。 こちらのほうが写真のアングルとしては壮大だろうか。 8:16に布引岳で休憩。ここから、冷池山荘まではもう少しである。

冷池山荘

  冷池山荘の手前はお花畑のオンパレードである。 テント場は少し小屋から離れてはいるが剣岳を見渡す気持ちの良い場所である。 9:16に冷池山荘到着。 前回、ここに宿泊したはずなのだが、どうもしっかりと覚えていない。トイレを借りるとき小屋の中も入ってみた。 もう宿泊客は皆出発しており静かである。 小屋の前で朝湯をかけて蒸らしてあった山菜おこわの昼食を食べて、ノンアルコールビールを半分ずつ分けて束の間の休息を楽しむ。静かな素敵な小屋である。


 文句なしの快晴の中、前回は機会を失した鹿島槍ヶ岳からの景色を十二分に楽しむことができた。 冷池山荘からのピストンにすれば、初心者の人も十分に登ることができるであろう。 八峰キレットからは登山の醍醐味は味わえるが少し経験がいるかもしれない。 間違ってもわれわれのようにヘッドランプをつけて暗いうちから出発するのは良くない。 もしも体力が許せばテントを持ってこの冷池をベースに2-3日楽しむという贅沢ができたらなお素晴らしいだろう。 そういえば、前回ライチョウの親子を見たのもこの小屋の手前であった。
(2013年8月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています