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鍋割山
鍋割山

基本情報
1 山名 鍋割山(なべわりやま)
標高 1272m 鍋割山山頂
1491m(三等三角点) 塔ノ岳山頂
山域 丹沢山地
都道府県 神奈川
位置 N35.26.38/ E139.08.29 
地図 昭文社 山と高原地図28「丹沢」
2万5千分の1地図「秦野」
20万分の1地勢図「東京」
7 山岳区分 ハイキング百選
登山記録
山歩No 9850-22003
登山日 202年2月23日(水)
歩程 8時間10分
天候
形態 日帰り
アプローチ 小田急小田原線渋沢駅から神奈川中央交通バスで大倉まで
パーティー 1人

 2月に入って関東地方でも降雪があった。 2月10日から11日にかけて都内で2㎝ 千葉で5㎝、秩父で8㎝の降雪があった。 1月6日に続いて2回目である。 1月6日は直後に山梨に登山に行ったが、まったく雪がなかった。 今回は雪の後気温が上がっていないので山には雪が残ってそうである。 YAMAPでたくさんの人が丹沢に雪中登山に出かけているのを見て、2月20日日曜日に丹沢へ行こうと思い立ったのだが、残念ながらあまり天気が良くなかった。 ただ、この週は天皇誕生日があり、水曜日が祝日となる。 2022年2月23日(水)、前日みた天気予報で秦野市の最高気温は12度、最低気温はマイナス2度とまだまだ寒い一日だが降水確率はゼロパーセントであることを確認して、丹沢に出かけることにする。 今回はあえて日本百名山の丹沢山は目指さない。 さすがに残雪ではトレイルランニングというわけにはいかないし、 登山靴ででかける。

2022年2月23日 小田急線渋沢駅
 
2月23日(水)朝4:50起床。本日の登山ルートはまだ決めかねている。 というのは当初、塔ノ岳の東側ヤビツ峠から表尾根を縦走し、南の大倉尾根を下山する8時間コースを想定していた。ところが、11日からの積雪の影響があり、秦野駅からヤビツ峠まで行くバスが運行していないという。 前日の22日に神奈川中央交通の営業所に電話をしたところ、「明日23日に動かすかどうかは23日の朝7時にホームページに掲載します。」と言われてしまった。 7:20秦野駅発のヤビツ峠行のバスが7時にならないと運行するかどうかわからないというのはいかにもつらい。 代案として小田急の渋沢駅まで行ってバスで大倉まで行き、そこから鍋割山経由塔ノ岳を登頂するコースを考えた。 5:36中山駅からJR横浜線に乗車。 町田駅6:02発の小田原行急行に乗車。 車両に乗り込んでびっくりしたが新宿から乗ってきたのか、ほぼ登山客で満席だった。 こんな早い時間からみな山に行くのだと驚きである。

大倉バス停

 結局伊勢原を過ぎて列車の社内で神奈川中央交通のホームページを確認しても「ヤビツ峠までは運行を見合わせています」というメッセージが変わっていなかったので、今日もヤビツ峠までのバスは出ないと知り表尾根から丹沢へ登るコースはあきらめる。秦野駅で電車を降りずにそのまま渋沢駅まで行く。6:47渋沢駅到着。 15人くらいの登山者がこの駅で下車して北口のバス乗り場へと殺到していった。 7:02大倉行のバスに乗車。 こちらもほぼ満席である。 7:17終点の大倉バス停に到着である。 戸川公園にかかる橋が見えた。 大倉には何度も来ているように思っていたが前回ここから丹沢山・蛭ヶ岳に登ったのは2009年だから、結構前のことになってしまっている。 


西山林道入り口

 戸川公園の駐車場は数台しか車が停まっていなかった。意外とマイカーで来る皆さんも民間の安い駐車場を探して停めているのだろうか。 ベンチに腰をかけて朝電車に乗る前に買ったおにぎり2つの朝食を食べる。 7:35大倉登山口から歩き始める。 最初は他の登山者につられて大倉山の家まで来てしまったが、よく考えたら自分は鍋割山から登るので、最初は西山林道の入り口に行かないといけない。幸い大倉の登山口に戻ることなく大倉山の家から西に進路をとって堀山下へ出ることができた。 さて、ここから西山林道委のスタートである。 登山客がひっきりなしに歩いていた大倉尾根へのとりつきと打って変わってこちらは誰一人いない。 静かな登山になりそうである。 今日は雪山に備えているのでトレランシューズではなく登山靴である。


鍋割山荘案内

 7:53西山林道の入り口に、看板が貼ってあった。 鍋割山荘の方が貼った看板だった。 鍋割山荘の営業時間は11時から13時で月曜日と金曜日は定休日と書いてある。 11月は一番繁忙期で週末は開店前から行列ができるとある。 さらに、小屋主の高齢化に伴い、2019年から大みそかを除き宿泊サービスを停止するとある。 残念だが名物の鍋割山荘は今は山小屋としては営業していないのである。ホームページで調べたところによると小屋主の草野さんは1980年代にアコンカグア、インドヒマラヤ・サトパント峰、ダウラギリI峰の遠征経験を持ち、数十年にわたって大人の体重相当のボッカを行なってきたらしい。 計算が正しければ御年73歳であろうか。 それでもなべ焼きうどんを提供し続ける逞しさには脱帽である。

二俣

 西山林道はその名のとおり林道である。 おそらく二俣までは林業用の車両は入れるのではないかと思われるようなルートであった。 事実軽自動車のわだちのようなあとはある。 四十八瀬川に沿ってほぼフラットな道である。 さきほど大倉でトレランスタイルのカップルがいたがあの人たちはもしかしたらこの林道を走っていったのかもしれない。 やがて広いところに出て県民の森との分岐の表示が現れた。県民の森にはハイキングコースがたくさんあるらしい。ここから橡山(くぬぎやま)810mを経て稜線上を鍋割山まで行くルートもあるようである。 8:41二俣到着。 道標の下にヤマヒル用の塩を入れたタッパーがあるところが丹沢山地らしい。 パトロールの軽自動車が駐車してあった。

水を運搬

  沢を渡ってここから小丸尾根との分岐を経て後沢乗越へと上がる登山道となる。 自分と同じようにGoProで撮影しながら登っている人がいた。 丹沢緑の回廊と書いた地点には車が2台停まっていた。 鍋割山荘の方の車だろうか。 その横の沢の手前に、水がつまったペットボトルが大量においてある。 これが「鍋割山荘が用意した水道水でボランティアで運んでいただくためにおいています。」 という有名な体力に余裕のある人に運搬有志を募っているものだった。 自分もリュックに入りそうだったので、2Lのペットボトルを一本だけ運ぶことにした。 水が入ったことでずっしり荷物が重くなった気がした。 後沢乗越まではお決まりのジグザグに切った登り道である。  

富士山が顔を出す

 後沢乗越を過ぎて稜線に出てからは厳しいのぼりとなる。 このあたりまでくると登山者が何人か抜きつ抜かれつという様子になる。 10:06休憩する。 ちょうどここでやっと富士山が顔を出す。 そこまで隣の稜線の檜岳の影に隠れていたが頭の部分だけ稜線から顔を出した姿に少しほっとした。 今日は天気がいいので鍋割山まで行けばきっと富士山がきれいに見えるだろうと期待が高まる。 女性の2人組の方、それから男性の単独の方とほぼスピードが同じくらいので先になったりあとになったりして10:42ようやく鍋割山の山頂に到着した。


鍋割山荘

 鍋割山山頂にはすでに30人くらいの人がいて多くの人が鍋割山荘の鍋焼きうどんを食べているか、食べ終わって休憩しているところであった。 山荘の前の行列が7-8名だったので、せっかくなので自分も並んで名物の鍋焼きうどんを食べてみることにした。 小屋のホームページにはこのように記載されている。 (以下引用)「※鍋焼きうどんが売り切れ次第、営業を終了致します。オーダーストップは概ね13時ですが、売れ行き状況によってはそれ以前にオーダーストップすることもあります。特にシーズン時(GW、9月下旬・10月・11月・12月上旬)は大変な混雑になるため営業終了時間が早まる傾向にあります。登山の常識ですが最低限の食料は自己責任でご用意ください。」確かに、これを食べることをあてにして食料を持っていなかったらそれはそれで登山の行動としては危険ということになるであろう。名物はねぎやフがたくさん使ってあり結構なボリュームがあった。

鍋割山山頂

 鍋割山の山頂は1272.5m。 このあたりにくると残雪が目立つ。 北には12年前に登った蛭ヶ岳が見えた。 さすが最高峰だけあって抜きんでている。 11:40、鍋割山荘出発。ここから鍋割山稜と呼ばれる稜線で残雪歩行が楽しめる。 鍋割山の山頂でスパッツをつけたがアイゼンは不要という感じであった。 親子連れの方もいる。 春・秋のハイキングもよいが、このように都心から近く雪山を楽しめるのも子供さんにとってもうれしいであろう。ところどころで動画を撮影しながら 12:07小丸に到着。 12:31大丸。ここで少し休憩。 海外からの数名の団体とすれ違う。
 

大丸

 金冷で大倉からくる道と合流する。 がぜんと下山のためにすれちがう人と多くなった。 やはり大倉尾根は丹沢山のメインルートである。 13:06塔ノ岳山頂に到着。山頂には50人くらいの人がいただろうか。 ものすごい数の登山者である。 尊仏山荘で休憩している人も多い様子だった。 塔ノ岳からの展望は最高だった。 相模湾がどんと眼下に広がり、また丹沢主脈の丹沢山・檜洞丸が雪をかぶっている様子もこの距離から見るのは初めてだったので新鮮な景色であった。 女子大生の2人組に頼まれてスマートフォンのシャッターを押してあげた。山頂には明らかに丹沢山への稜線を歩いてきたと思われるスノーシューや12本爪アイゼンをザックにくくりつけている人も何人かいた。 

塔ノ岳山頂

 尊仏山荘横の有料トイレを使い、13:40下山開始 帰りのルートはもっともメジャーな大倉尾根を下る。 金冷までは先ほどの鍋割主稜と同じルート。そこから花立山荘に行くまでの途中の馬の背はやせた岩稜で通行には注意が必要な場所であった。 トレランスタイルで中国語で会話している元気な若者3人組も逆に底の柔らかいトレランシューズだということで苦戦している様子だった。難所を超えると普通の石がならぶ登山道で、ここでは、登山者の経験や荷物の重さの差が出るようで追い越す人、追い越される人、さまざまであった。 13:58花立山荘到着。 ホームページを見ると「自家製のお汁粉や豚汁、かき氷、コーヒーなどを用意していますので、絶景を眺めつつ登りの疲れを癒してください」との記載がある。 事実、ここで「甘酒あります」は相当魅力的だった。 先を急ぐので立ち寄らなかったが。

堀山の家

14:30、堀山の家で休憩。ベンチがあってたくさんの人がくつろいでいた。 小屋の前に今日は富士山の日という看板があった。 そうか、2月23日は、ごろあわせで「フジサン」の日になるのだ。 今日、あんなにたくさんの人が朝早くから小田急線に乗って丹沢登山を目指したのかが、今、やっと判明した。  今年は令和4年という元号だから、おそらく、今の天皇が即位した2年前から、2月23日は祝日であった可能性が高いが、日本の祝祭日にうといので、まったくノーマークであった。 まあ、富士山を見るために真冬でもたくさんの人が山に登りに来るというのは神奈川県の観光業にとってはプラスなのであろう。 堀山の家からふたたび尾根上のルートをひたすら下る。

大倉 無事下山

15:37、車道と合流、ほどなく戸川公園の橋が見えてきた。 15:30大倉のバス停に到着。 レストハウスのどんぐり山荘で缶ビールを買う。 バスの出発時間まで20分ほどある。 トイレの横に靴を洗うための水道があったのだが、行列ができていたので並ぶのはやめて、バスの時刻まで、缶ビールでくつろぐこととした。 16:55渋沢行のバスが出発。 渋沢駅から小田急線の上り電車に乗車。 発車サイン音が、ZARDの「負けないで」という懐かしい曲だったので感銘を受けた。 天才作詞家で歌手のZARDの坂井泉水さんが亡くなったのは2007年、もう15年の月日が流れた。 自分は2007年6月26日の青山葬儀場の音楽葬に出かけて献花したことを今でも覚えている。丹沢の山というのはZARDの音楽もはぐくんできたふるさとの山だという思いを強くした。

 神奈川県民にとって丹沢山地というのは思い入れの深い山である。 2020年夏に緊急事態宣言が出ていた時にも県外に移動できずにでも山に行きたい自分はテントをかついで丹沢にのぼった。 そして、今、オミクロン株の勢いが止まらず、蔓延防止措置を延長した今も、こうして自分の住む県内の山に登っている。 感染症の流行は困ったものだが、もしかすると自分にとっては県内の山を見直すまたとないチャンスなのかもしれない。 鍋割山荘でこんなにすばらい料理が楽しめることも、塔ノ岳から江の島がこんなにくっきりと見えることも正直、この年になって初めて知ることができた体験であった。
(2022年3月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています