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羽鳥峰
羽鳥峰

基本情報
1 山名 羽鳥峰(はとみね)
標高 822m 
山域 鈴鹿山脈
都道府県 滋賀県・三重県
位置 N35.03.56/ E136.26.29 (釈迦ヶ岳)
地図 昭文社 山と高原地図44「御在所・霊山・伊吹」
2万5千分の1地図「御在所山」
20万分の1地勢図「名古屋」
7 山岳区分 ハイキング百選
登山記録
山歩No 9020-13022
登山日 2013年6月1 日(土)~6月2日(日)
歩程 第一日5時間30分
第二日12時間
天候
形態 テント縦走1泊2日
アプローチ 新名神甲賀土山ICより国道477号
パーティー 1人

  2013年6月1日(土)から6月2日(日)までテントを担いで鈴鹿山脈の縦走をした。鈴鹿山脈は自分の故郷の山である。 大阪から山岳部のメンバーと合流して、武平峠まで一緒に車でやってきて鎌ヶ岳と御在所山に登った。 この2つに老若男女世代を超えたメンバーで登ったのはなんとも感慨深い。御在所山の山頂でメンバーと別れて、釈迦ヶ岳を目指す。 今日のテント場は羽鳥峰だろうが、もしがんばって今日のうちに釈迦ヶ岳を越えて八風峠までいければ翌日が楽になり藤原岳までの鈴鹿北部縦走が大きく視野に入る。 

根の平峠

  14:40国見岳の山頂に到着。 山頂は広くはないが、御在所の山頂をよく眺め渡せるところだった。 一応、山頂写真を撮影する。 先を急ぐ旅なのでリュックを下ろすこともなく出発する。 国見岳を稜線は大きく左に曲がりに氏に進みながらまた北へ方向を変えて標高を落としていく。 下り切ったところが根の平峠であった。15:41峠に到着 ここは、なにか昔の旧街道の峠を思わせるような静かなところだった。 適度に樹林があって炎天下でないのがいい。 峠の標識も苔むしていていい感じだ。 リュックを下ろして休憩。 水を飲む。峠の平なところにはテントを張って焚き火をしたような跡まで残っている。ラジオでも聞きながら歩こうと思い、リュックから愛用の小型ラジオを出して15:48出発。

水晶岳

  根の平峠からの登りは水晶岳への登りであるので標高差で150mほど上がることになる。 実際県境縦走路は水晶岳の山頂を通っていないのであるが分岐に到着すると水晶岳山頂まで5分という表記があったので折角なので行ってみることにする。 誰かのホームページの情報によれば、なかなか眺めの良い山頂だそうだ。 樹林の中を北にまくようにしてあがったところに山頂の三角点はあった。 西側が開けて確かに、銚子ヶ口方面の展望はよい。 パラボラアンテナのある中継所があるので少し興ざめではある。 展望も360度というわけにはいかないようだ。 とりあえず、山頂での写真を撮ってもとの分岐まで引き返して先に進む。

中峠

 水晶岳から下り切ったところが中峠である。 朝明渓谷に下りるエスケープルートとしては最短コースであるが、エアリアの地図上でも破線のコースになっているのでどの程度使えるかは不明である。 中峠から金山に登る。 山頂は小高い丘という感じでこれもルート上には山頂はない。 分岐から5分という表示だったので山頂に立ち寄ってみることにした。 特に取り立ててどうというピークではないが、忠実に県境縦走路を歩いているという自己満足がほしいだけである。 金山からは縦走路が見えた。  

縦走路から見た釈迦ヶ岳

  縦走路を眺めると、やはり、釈迦ヶ岳が大きくそびえているのが見える。国見岳から見たのよりだいぶ大きくなってきた。釈迦ヶ岳の手前に見えている小さいピークが猫岳であろう。 猫岳を越えて釈迦ヶ岳から先の竜ヶ岳にいたる稜線はちょうど釈迦ヶ岳の裏側になってしまうので見えていない。 ハト峰は砂の上に岩がむき出しになっておりまるで北アルプス表銀座の燕岳のような雰囲気をかもし出しているので遠くからみてもよくわかる。金山からの下りは思ったより急傾斜であった。 先ほど見えていた羽鳥峰が稜線に隠れて見えなくなっていた。 途中、沢の音がして小川が登山道を横切っているところがあった。 ここまで水場がなかったので、ポリタンクに汲んでいこうかと思ったが、ハト峰まで行けば水場もあるはずと考えて進むことにした。 

金山からの下りの遭難碑

そろそろ時計が気になってきた。 もともと、明日藤原岳まで5マウンテンの縦走を果たすためには、今日のうちに八風峠まで入ってテントを張りたいところだったが、もう5時前である。 時間的に日没ぎりぎりまで歩いたとしても釈迦ヶ岳を越えていくのにまだ2時間以上かかる。 とても八風峠まで行くのは無理そうだ。 かといって当初の計画書に記載したとおり、今日、ハト峰峠でテント泊になると、明日の歩程が12時間を越えてしまう。 いくら日没が遅い時期だといっても結構危険である。 いろいろ迷った末にとりあえず、ハト峰で休んで、めいっぱい水を汲んでそこからあと1時間程度歩いて釈迦ヶ岳の登る途中で幕営するという計画にした。 山岳部メンバーのA.D氏も学生時代に何度も鈴鹿の縦走をしているが、ハト峰には間違いなく水場があるといっていた。  

ハト峰峠

 17:11ハト峰峠到着。 ハト峰のピークはすぐ隣に見えていた。 リュックを下ろして、滋賀県側のヒロ沢へ水を汲みに行く。 ホームページにあったとおり、峠から2-3分歩いたところに小さなせせらぎがでていた。 まわりに注意しながら水を汲む。 なぜ注意したかというと、昭和52年(1977)年のエアリアの地図にはこのあたりハト峰湿原にマムシが出没するので注意と書かれている。 こんなところで毒蛇にかまれたら一貫の終わりであろう。 何しろ、同行者不在、しかも携帯がまったくつながらない地帯なのだから。。幸いヘビの気配はなく、水を1.5L汲み終えて峠に戻った。。 

ハト峰頂上写真

 リュックを担いで、ハト峰の岩峰に登ってセルフタイマーで写真を撮った。 思えば、このちいさなきれいな峰が鈴鹿の縦走路で初めて登った山であった。 まだ15歳だったときに、高校の山岳部の1年生メンバー7名が朝明渓谷にテントを張って買ったばかりの登山靴を履いて顧問の先生に連れられてやってきたのだった。 そのときに先生は言っていた。 この山は、結婚したばかりの夫婦や婚約したカップルがハイキングにくるんだ。 そうすると2人は幸せになれるという言い伝えがある。 その当時、私は、いつか自分も結婚を決めたらここに将来を誓った人を連れてこよう、と決意した。 あれから35年経ったが、また一人でやってきている。 

ピークの裾を巻いて釈迦ヶ岳を目指す

<回想>1978年の6月にハト峰に登った。 正確に言うと、ハト峰に下りてきたというほうが正しいかもしれない。 なぜなら、朝明渓谷にテントを張って、松尾尾根を釈迦ヶ岳に登り、そこから羽鳥峰峠経由、林道を朝明渓谷へ下山したからだ。 このコースが高校の山岳部にとっての重要行事であるインターハイへの出場権をかけた東海大会のこの年の指定コースであったので、当時1年生だった自分もレギュラーの2年生の後発パーティーとして登ったのだった。 もちろん、体力・技術で上回る2年生のパーティーとはどんどん距離も離れ、われわれ1年生は炎天下の中、ぼろぼろバテバテだった。 私も軽い日射病になり、縦走路でかなり頭が痛く、ふらふらしながらハト峰にたどりついたのだった。 羽鳥峰峠で林道に降りついたところで沢からの水を頭にあびてやっと生き返ったのだった。

愛知川渓谷との分岐

 ハト峰峠を出てからハイマツの中の樹林を進む。 やがてうっすらとした樹林の中に入り、沢を渡る。 ここにもよい水場がある。 さらに少し行くとみるからに整地したテントを張るのにぴったりのところがあったので、思わずここで泊まってしまおうかと思ったが、日没までだいぶ時間はある。 自分を奮い立たせて先に進む。 908mの尾根の頭を越えてからはルートは少しやせた尾根になる。 ときどきテントを張ろうかと思うような鞍部はあるのだがどうしても尾根が痩せているために、沢筋から上がってきた気流の通り道になっておりテントが風の影響を受けるのではないかと思ってたじろいでしまう。。 

猫岩直下---本日の幕営地

 先に猫岳と思われるピークが見えたところで少し広い土地があったのでルートのすぐ脇にテントを張ろうと思って停まった。 ところがそこからルートからは少し外れたすぐ下のところにちょうどよい具合に草地になったところがあり、だれかがテントを張った後にも見える。土の削れも見えている。5mほど下ってそこまで来てみると、思ったよりも尾根から入り込んでいて風も来ない。 なにより素晴らしいのがそこから御在所岳の山容が全部目の前にドーンと広がっている。 これはいいテンバを見つけたと我ながら満悦で、18:38テントの設営を開始する。

20時就寝

 とそのとき、なんと釈迦ヶ岳から猫岳を通ってハト峰方面に一人の若い男性が下山してきた。 こんな時間にである。 驚いた。 国見岳を過ぎてから初めて出会う登山者だ。 しかし、日没時刻のこの時間にここを歩いているということは、ハト峰峠から朝明渓谷に下山するとしても、7時半になって真っ暗であろう。 念のため「大丈夫ですか? 下山できますか?」と声をかけたところ、「大丈夫です。」と明るい声が帰ってきた。 おそらく御池岳か藤原岳から縦走してきたのであろう。 軽装でトレランのスタイルかもしれない。 彼を見送った後、湯を沸かしてアルファ米をたく。 おかずはイワシの缶詰ひとつという質素な食事だ。 イワシ缶をあけてバーボン水割りで一人乾杯である。 山岳部メンバーに差し入れてもらったチョコレートもいただく。 テントの中を広々と使い、ラジオを聞きながらバーボンをちびちび。 20時に就寝した。


 なかなかタフな、しかし面白い縦走路である。 基本的に御在所岳からハト峰まではは標高差で350mくらい下りになるので逆コースに比べて楽かもしれないが、その分、猫岳にいたる登りは今日の最後の力を振り絞っての登り、ということになる。 水が重くなったこともあり、結構こたえる登りであった。 誰もいない稜線に一人で宿泊するのは怖さもあったが、反面、植村直巳さんもこんな風にして孤独の中、夕暮れの山をテントから眺めたんだろうか、などと思いつつ、自分も少し冒険家になったような気がした。 
(2013年6月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています