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天狗滝・綾滝
天狗滝・綾滝

基本情報
1 山名 天狗滝・綾滝(てんぐたき・あやたき)
標高 1,057m (富士見台)
山域 奥多摩
都道府県 東京
位置 N35.45.18/ E139.08.26 
地図 昭文社 山と高原地図24「奥多摩・御岳山・大岳山」
2万5千分の1地図「武蔵御岳」
20万分の1地勢図「東京」
7 山岳区分 関東ふれあいの道 東京都コース05「鍾乳洞と滝の道」
登山記録
山歩No 7T05-17027
登山日 2017年12月30 日(土)
歩程 4時間20分
天候 快晴
形態 日帰り
アプローチ JR武蔵五日市駅から西東京バス払沢の滝下車
パーティー 1人

 暮れも押し詰まって世の中があわただしいこの時期、久しぶりに「関東ふれあいの道」を歩いてみることにした。 今回はT05「鍾乳洞と滝のみち」である。コースは檜原村北秋川橋からあきるの市上養沢までの約9kmの歩行コースである。登山口の北秋川橋は標高285m、そして最高峰の富士見台は1057mである。 コースタイムは4時間40分。久しぶりの奥多摩であるが、運動不足で最近体重が増えているのでしっかりと歩くことにする。  
 

武蔵五日市駅

 いつもより少しゆっくり7時まで寝て、そして8時のバスに乗る。 南武線に揺られて立川まで。 普段の土曜日であれば通勤客やクラブ活動に向かう学生なので混雑しているはずの南武線も年末の休日ダイヤの中ゆったりとした様子である。 電車にゆられて約40分で立川に到着。 そこから9:11に立川始発の青梅線武蔵五日市行きに乗車。 9:41に終点の武蔵五日市駅に到着。 前回、関東ふれあいの道を歩いた生藤山に登った時以来なので、この駅も4年ぶりということになる。 駅構内には、秋川渓谷の観光情報コーナーがあり秋川渓谷のパンフレット、ポスターの掲示などがある。 無料のWifiも使えるようだ。 駅の前のNewsdayで昼のおにぎりと、ビール・酒・つまみを買う。 電車で来る山の楽しみはやっぱりなんといっても山頂の楽しみが一つマイカーの山よりも多い。10:08の西東京バス藤倉行きに乗車。 


西東京バス藤倉行き

 この道は浅間嶺から降りてくるT04「歴史の道」の終点である払沢の滝が起点となる。 前回、「歴史の道」を歩いたのは2010年の12月19日であった。 このときはマイカーを払沢の滝の駐車場に停めて、バスで上川乗まで乗車して歩いた。 今回は鉄道とバスでのアプローチになる。 尾根をひとつ越えて別のところに下山するコースなのでおのずと周回は難しい。 バスは10人ほど乗車していたが、半分以上は十里木で下車。 数名のハイカーが乗っているいわゆる登山バスとなった。 檜原村役場を越えてからは都道33号は二つに分かれて、数馬から都民の森に行く206号と、今回自分が目指す千足がある藤倉行きの205号とになる。 

払沢の滝停留所

 10:35に払沢の滝でバスを下車。 バス停のすぐ横には、ちとせ屋さんという豆腐やさんがある。 サイクリストも立ち寄っていた。 とれたての豆乳も飲むことができるようである。 バス停の横にはトイレもあり。 体操をして10:41出発。 本日の行程をスタートする。 天気は快晴。 気温も10度くらいと山歩きには絶好のコンディションである。 とはいうものの年末で、このバス停から関東ふれあいの道のこのコースを歩くのはどうやら自分一人だけのようである。 北秋川橋を渡るとすぐに檜原小学校がある。 村立で小中一貫教育。 小学校の生徒数は49人だという。 村ですれ違う村民はみな名前と顔が一致しているのであろう。子供をコミュニティーで見守るという理想的な姿がここにはあるのだと思った。 
 

柳沢林道

 左手にひのはら四季の里を見ながらさらに進むと、檜原村滝巡りの看板があった。 払沢の滝は有名であるが、他にもいろいろあるようだ。今回自分が行く天狗滝・綾滝は大岳山登山の途中で立ち寄る人は多いだろうが、かなり山の中なのではたして観光で立ち寄る人がどのくらいいるだろうか。そうこうしていると道路沿いに、茅倉の滝という看板が現れた。 小さな滝であるがひっそりとこの村を眺めている気がした。やがて関東ふれあいの道は千足のバス停をすぎたところで都道から離れて住宅と畑の中を上がる小道に入る。道標の下に、千足でツキノワグマの目撃情報があったという記事が。 ちょうど1年前の2016年の11月のことのようだ。 奥多摩でもクマが出て人を襲った事例があるので背中が寒くなる。 

小天狗の滝

 小道から進み人家を抜けていくと次第に道路は急傾斜となる。 地図上柳沢林道と名のついた1この道を歩くこと約20分。 11:22に林道の終点に到着。 「回転場につき駐車禁止」と書かれた札から先が登山道となる。 登山道といっても林業作業道のような形で踏み跡はしっかりしている。 沢を渡ると、その先に「天狗滝・綾滝」と書いた檜原村の滝案内看板がある。道は左右に分かれ、天狗滝を経由するコースは西側のルートを通る。 従い分岐を左に曲がる。 右側の道も行き先に綾滝は出ていたので、途中で合流するということだろう。 しかしながら分岐で別れたあとはさすがにルートが急になり岩の間を登っていくコースとなる。11:30、よっこらせと急な傾斜を登りきると、そこが小天狗の滝であった。 

天狗滝

 小天狗の滝は高さが10m弱、それでも静かに安定した流量を落とすきれいな滝である。 小天狗の滝を出てさらに急な傾斜を登ること5分、ついに天狗滝が姿を見せた。 登山道は滝の中腹部に出てしまうので、そこから足場の悪い道を通って気をつけながら滝壺の位置まで下降しなければならない。 滝壺まで降りると、初めて天狗滝の全貌が見えた。 落差20mほどあるので近くでは写真に写しきれないほどである。冬場で水が少ないはずであるが、最下段のところでは左右扇のように広がってどうして迫力の滝である。 

関東ふれあいの道・道標

 天狗滝を横切って、そこから階段状になった急な坂を登ってさらに綾滝を目指す。11:37出発。 登り始めて10分ほど、ルートが合流。 天狗滝を経由しない登山道と合流する。 ここから少し道がよくなったように思うのは気のせいか。 綾滝まではここから登りで20分。 少し傾斜がゆるくなったような気もするが、植林の杉林の中を進む。 途中、おなじみの関東ふれあいの道の石の道しるべが現れる。北秋川橋から2.5kmで行く手の上養沢までは7.0kmなのまだまだ4分の1を過ぎたくらいだというところか。 

綾滝

12:09に綾滝が見えてきた。 ここには休憩のベンチがある。 そろそろおなかもすいてきたが、今日の最高地点である富士見台でラーメンをつくって焼酎を飲むのを楽しみに、ここではビスケットで少し腹ごしらえである。綾滝は落差20m。 印象的だったのが、なぜか落ちてくる水滴がとてもスローに動いているような、まるでゆっくりと再生をしているビデオを見ている感じだった。冬場で水の量が少ないこともあるだろうが、それでの広いベンチに不動明王の祠があるので安全登山・安全下山の祈願をする。 不動明王の碑を入れて滝の写真を撮るとなかなか様になる光景だった。

馬頭刈山分岐

 12:22に綾滝を出発。 天狗滝から先つづら岩までは、稜線に取りつくための急な登りになる。 途中、転落防止のためにカラビナをくくりつけた材木の手すりがあったりする。 青空の向こうに次第に稜線が見えるようになってくる。 ここからが登りはつらい。 大きな岩の姿が見えるがこれがつづら岩だろうか。 13:00馬頭刈山からの稜線沿いのルートと合流。 馬頭刈山経由十里木までのコースはここから6.5kmの道のりと結構長丁場である。 一方、大岳山までもまだ3.2kmあるので、そこそこロングルートの馬頭刈尾根である。

つづら岩

 分岐からはいったん20mほど下り弓状になったルートをあがってつづら岩の取り付きまで接近する。 13:06、いよいよつづら岩の下に立った。 岩のぼりの練習をする人は当然この時期だから誰もいなかった。 ものの本によると人工ゲレンデもあるようだ。 岩のオーバーハングになっているところにはピトンが撃ち込まれているのが見えた。つづら岩を過ぎると痩せた稜線の上を西に進む。 途中、鉄梯子があったりしていよいよ奥多摩の大岳山山頂にいたるメインルートを登っていることがわかる。 関東ふれあいの道としてハイキングコースでオープンするには少し険しいかな、などとも考えつつ、富士見台を目指して進む。 

山頂到着、冬富士を見る

 13:24、切り立った樹林の間から大岳山をきれいに臨むことができる絶景スポットに出る。 南東側から大岳山を見ることもあまりないが、やはり日本二百名山の名に恥じぬ屹立したピークは見事な形である。 この日は特に空に雲が一つもないのでなおさらくっきりと山容が浮かび上がっていた。 13:26. 歩きだして2時間40分たってようやくあずまやのある富士見台が前に見えた。 山頂と思われるところに直登するルートもあるが、まっすぐ踏み跡をあずまやに向かって進んでいく。 13:28、関東ふれあいの道の大きな看板のある富士見台に到着した。 三角点はないが、南西方向に富士山の姿がきれいである。 生藤山に登った時も鶴ヶ鳥屋山に登った時もそうであるが、どうしても東側の奥多摩や奥秩父から登ると午後は富士山は真っ白に見えてしまう。 光の方向で仕方がないのだがもし山中幕営して朝見たりしたら全く景色は違うのだろうか。

富士見台昼食

 山頂ではお楽しみの昼食となる。 ビールを飲んで、EPIに火をつけようとしてふと気がついた。 EPIのタンクを忘れている。 EPIの本体はあるのだがこれではお湯を沸かすことができないのではたしてラーメンは食べられるのだろうか。 テルモスの湯を見るとまだかなり温度は高そうだったので思い切ってカップラーメンの具と持ってきた湯だけで少し長めの時間むらしてみる。山頂である富士見台にも一人の人もいない。 ベンチは独り占めである。 そういえば今日はまだつづら岩のところで単独の男性1名とすれ違っただけである。 


大滝

 14:15、富士見台の標識前で写真を撮影して(ここが関東ふれあいの道の踏破スポット写真となる。)出発。 少し稜線上を下って14:36に大岳山と上養沢への分岐となる。 大岳鍾乳洞まで距離は2.8km。 大岳山の雄姿に最後の別れを告げて大岳沢沿いのルートへ下山を開始する。 落ち葉の中を踏みしめて歩くが途中、霜柱ができているルートなどもある。15時に関東ふれあいの道のプレートが出る。 上養沢まであと4.0kmと出ている。 あと1時間半でバスの時刻だがまだ6割しか来ていないということで少しあせる。 後ろを健脚の男性1人が追い越して行った。 結局、今日は5人くらいの人しか遭遇しなかった。 奥多摩でこんなに登山者が少なかったことはかつてない。5:27に大滝を通過。 少し薄暗くなった大岳沢に水を流し込むその滝は、規模として天狗滝や綾滝よりずっと小さなものであるが、登山のゴールが近いことを知らせてくれるサインで少しほっとする。

大岳鍾乳洞

  大滝を過ぎると5分で林道に出た。 ここからはひたすら林道歩きである。15:45大岳鍾乳洞の横を通る。ガイドブックには「洞内には石筍殿,乳華殿,ビーナス殿などの石筍や鍾乳石が多数見られる」と書いてあったので、立ち寄りたかったのはやまやまであるが、16:35のバスに乗り遅れるわけにいかず、ここから上養沢のバス停までの時間もはっきりと読めなかったので、残念であるが別の機会にゆずることにする。
下山・上養沢でバス乗車

  養沢神社に16:10到着。 上養沢の停留所は始発でここから徒歩5分北なのでそこまで行って待つことにした。 最後にバスを待ちながら残ったワンカップとおにぎりをほおばった。 16:35のバスが出発するころには奥多摩の沢はもう日が陰って暗闇が迫っていた。 2017年が終わろうとする日付であり、時刻であった。 ワンカップのおかげか武蔵五日市駅終点に到着してバスの運転手さんに起こされるまで爆睡していた。 15分ほどの待ち合わせで青梅線の電車が入り、立川経由で自宅に帰った。 

奥多摩はすばらしい、 とあらためて感じさせられる。 自分が山登りをスタートしたのは三重県の鈴鹿山脈であったが、その後東京に引っ越して初めて登った山が大岳山だった。 記憶の底にゆっくりと沈んでいってしまうような山であるが、奥多摩で雲取山以外唯一ハイキング感覚で手軽に行ける日本二百名山というのはそれだけの品格があるからであろう。 足腰が十分元気なうちにもう一度、何かの記念日に登ってみたい山である。
(2017年12月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています