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嶽ノ森山
嶽ノ森山

基本情報
1 山名 嶽ノ森山(だけのもりやま)
標高 376m(上ノ峰:雄岳)
山域 紀伊山地
都道府県 和歌山
位置 N33.32.42/ E135.42.46 
地図 昭文社 山と高原地図51「高野山・熊野古道・伯母子岳」
2万5千分の1地図「古座」
20万分の1地勢図「田辺」
7 山岳区分 関西百名山
登山記録
山歩No 5960-19007
登山日 2019年3月9日(土)
歩程  2時間55分
天候 快晴
形態 夜行日帰り下山後宿泊
アプローチ JR紀勢本線串本駅
パーティー 4人

 和歌山県の潮岬は、ある意味で東京から最も遠いところだと言われている。 航空機が発達した現在では沖縄も北海道も、飛行機で2時間以内で飛べてしまうが、潮岬に行くためには白浜空港から車か、名古屋から紀勢本線を回る鉄道に乗るしかない。 そんな和歌山の南にももちろん関西百名山はある。 以前、新宮の近くの子ノ泊山には行ったことがあるが、嶽ノ森と烏帽子山を山岳部のKIさんが企画してくれた。これを逃す手はない。

三重交通の夜行バス

 2019年3月8日(金) 会社を早々に抜けて、22時に家を出る。横浜から新宮・紀伊勝浦へ行く夜行バスはいつものように楽天トラベルのホームページから予約しておいた。 割引クーポンとポイントを使ったらほぼ1万円というところである。 やはり、大阪や神戸に行くバスよりも値段ははるが仕方がない。 ちなみに帰りの特急と新幹線は指定席までこみにすると18,100円した。23:05にバスは横浜駅のYCATを出発。 東名高速をひたすら西に走る。

紀伊勝浦港

 3月9日(土)朝7:00に紀伊長島に到着。 幾人かの人が降りていく。 7:30にバスは新宮に到着。 バスに乗車していた半数かの人が降りて行った。 自分は終点の紀伊勝浦温泉まで乗る。 到着は8:05。三重交通と西武バスとの共同運航のこの路線。 今回は満席だったが、平日はどのくらいの乗車なのだろうか? 紀伊勝浦の温泉地は、一見ひっそりとしているように見えたが、遊覧船が到着すると中から30人くらい大きなキャリーバックを運ぶ観光客の団体が降りてきた。バスターミナルに到着した大型観光バスに乗り込んでいったがが世界遺産の熊野古道と那智の滝をめぐるツアーだろうか? 今回串本駅集合が11時と大阪・和歌山からくる仲間たちの特急の時間に合わせた集合となっている。時間があるので、自分も遊覧船に乗ってみることにする。

紀の松島---島めぐり

 8:30に出発する遊覧船は9:20に勝浦港に帰ってくるという。 串本へ向かう電車は9:47なので乗れることを確認して乗船。 先ほどの7:30の船はインバウンドの団体客で満席だったようだが、この船は乗船客は自分ひとりだった。 自分が小学生だった40年以上前に、この紀伊勝浦には家族で来た事がある。 母親が、「島めぐりだよ。 この紀伊勝浦は紀の松島と言われるくらい島がたくさんある名所なんだよ」と興奮気味に説明してくれたのを覚えている。 この勝浦港の船に乗るのはそのとき以来である。
 

平家物語の伝説

 船は、展望露天風呂で有名なホテル浦島のある岬を回り、ラクダ岩・ライオン岩といったさまざまな奇岩の説明を船内アナウンスで聞きながら紺碧の海の眺望を楽しんでいく。 平家物語の中にある。かつて屋島の戦いに敗れた中将平維盛が入水したと伝えられる島の一つ山成島などもある。 歴史の話は後付けかもしれないが維盛は、熊野・吉野の山中を流浪の末、野迫川村でその生涯を終えたと伝えられているので、水軍に秀でた平家にとってこの紀伊勝浦は由緒ある場所なのだろう。 船は西にある太地クジラ浜公園で下船して観光することもできる。 ラッコ館や捕鯨博物館などに興味もあったが、仲間と落ち合う時間のこともあるので、クジラ浜公園で下船せずそのまま紀伊勝浦港へ引き返す。


マグロの腸を買う

 9:25港で船を下りる。 バスターミナルへ戻る途中、漁村のおばちゃんが、うるめイワシやマグロの腸を販売している。 マグロは釣れてすぐに腸・エラなどをとり、 冷凍保存するので
市場に水揚げされた魚には内臓がなく 特に腸や肝は釣った漁師だけ が食べれるのである。
まぐろの酒盗を肴に飲むと酒がすすんでしまい、「盗まれるように酒がなくなっていく」らしい。希少食材のマグロの腸は、やわらかく、ホルモンのような食感だという。おばちゃんに聞くと、「そのままでも食べられるが、からしをつけるとおいしいよ」とのこと。  思わず500円玉を出してマグロの腸を買ってしまう。 おばちゃんいわく「日本語の通じる人が通ってくれてよかった」

電車で串本へ向かう

 ビジネスホテルブルーハーバーの前を通って、ゆっくり足湯に浸りながらのんびり寝ているおじさんの姿を「平和だなあ」などと思いつつ、紀伊勝浦の駅まで歩く。 熊野那智大社創建700年という記念の幟がある駅舎に入る。 駅員にPASMOが使えますか?と聞いてみたところ、下車駅が串本であれば使えますとのこと。9:47の各駅停車紀伊田辺行きに乗車。 電車は2両編成のワンマンカー。 ドアには「つなみのときははしごでおりる」「つなみのときはすわっておりる」と書いてある。 やはり海沿いの単線列車は趣がある。 何しろ、車窓の景色が素晴らしい。

串本駅(本州産南端)

 10:25串本駅に到着。 ここで下車する。 串本駅には観光センターが隣接しており「本州最南端訪問証明書」を100円で販売しているようである。駅前から道路を渡るともう海が広がっている。有名な橋杭岩は車でないといけない場所なので駅前の湾からは見ることはできない。駅前のエバーグリーンというドラッグストアでビールとマグロの腸を食べるのにつけるためのからしを買う。 それから、スーパーオオクワで弁当と茶を買って、大阪と和歌山からやってくる仲間の到着する特急「くろしお」を待つ。 11:03に上りの特急到着。 今回、一緒に山に行くリーダーのK.Iさん、いつもの相棒のA.Dさん、K.Dさんが現れた。 総勢4人でタクシーで一枚岩へ向かう。
 

古座の一枚岩

 11:40に一枚岩の道の駅に到着。 ここで、タクシーを降りる。 まさに「日本のエアーズロック」と言われる「古座川一枚岩」は天然記念物で川べりに降りるとまた一段と眺めがよい。一枚岩鹿鳴館というお休みどころがあり、観光客がコーヒーを飲んだりしていた。 我々はここから荷物をしょって歩き出しである。 嶽ノ森の登山コースは周遊で歩けるが最高峰の峰の山(482m)まで行くとコースタイムは5時間になったしまう。 出発時刻も遅いので、嶽ノ森だけを周回するコースで11:50出発。 

自然の石柱を進む

 最初はよく踏まれたスギ林の中の道を登っていく。 タクシーの運転手さんも山に入るとスギの花粉がひどいよといっていたが、さっそく、花がもぞもぞしてくる。 自分と、A.Dさんは特に花粉症がひどいので、今回は覚悟をしなければいけない。 標高170mのあたりから右手に石垣の組み込まれたような岩が見える。 最初は山城のあとかと思ったがどうもそうではないようだ。 自然の作った脊柱だからなおすごい。石柱の上にあがると一枚岩の展望台のようになっていた。 ここから眺める景色も圧巻である。

下ノ峰(雌岳)を仰ぎ見て

 さて尾根筋に戻って、南西を見ると、おお、これから登る嶽ノ森の下の峰が見えた。 槍ヶ岳のように急峻にそびえたっており、標高300mたらずの山とは思えないミラミダルなさまである。 ルートは次第に険しさを増し、ロープに伝わりながら登っていく斜面も現れた。 急なルンゼのようなところをかいくぐっていくとそこが下ノ峰と上ノ峰との鞍部であった。 道標では下ノ峰のことを「雌岳」と書いている。 ここから、急な斜面を木につかまりながら登っていく。 ちょっと小高いところに出て、リーダーのK.Iさんは「はいお疲れさま!」とリュックを下ろしかけたが、実はここはまだ下ノ峰の山頂ではなかった。 その先にルートが続いていることを発見したので、先へ進む。ここまでよりもなお険しい道が続く。 

下の峰山頂

 ちいさな祠を超えて、13:10、下ノ峰に到着。 山頂には雌岳369mという記載がある。 山頂は狭く3-4人が立つのがやっとだった。 岩の向こう側は切れ落ちており、注意が必要。 大峰山の西の覗きのような恐ろしい高さである。 ここから最高峰の上ノ峰が見えた。 こちらも先端のとがった峰である。 A.Dさんは腹が減ったといっておにぎりを食べたそうであったが、ビールを飲んでから、またこの下ノ峰の下りを通過するのは恐ろしそうだったので、上ノ峰山頂までお昼ごはんはおあずけにしようと合意する。


上ノ峰(雄岳)山頂岳の姿

 急峻な峰をまたロープを使ってあがり13:38に上ノ峰に到着。 こちらは4人が十分腰かけるだけのスペースがあった。山頂からは大塔山と大峰山地、さらに大台ケ原のほうまで見ることができた。 弁当を広げてビールで乾杯。 朝紀伊勝浦港で買ったマグロの腸もからしをつけて食べる。 天気は最高で空は晴れ渡っている。 金曜日は冬型で寒かったが、今日は外でも春の暖かさを感じることができる。山頂には1時間以上いてしまった。14:53下山開始。 

ナメ滝

 15:23に難所の岩場をロープを伝って降りる。 さらにその先はナメ滝を通過。 ここはちょうどスノーボードのハーフパイプのようにえぐれた岩場の底の部分を下りていく。 ステップは登山者が踏んであるところを忠実にたどれば降りれないことはないが、どちらかというと登山に向いており、下山は少し緊張する。15:40犬鳴谷と名付けられた大きな谷の上を通過していく。 谷を超えて進むと次第に高度が下がり、正面に一枚岩から北に伸びる県道38号線が見えてきた。 ルートは一枚岩トンネルの入り口部分に降りて下山。 ここからは県道を歩いてもとの道の駅一枚岩へと戻った。花粉症のせいで、道の駅ではくしゃみが止まらなかった。   

下山・道の駅一枚岩 串本駅から電車で紀伊勝浦へ

道の駅の鹿鳴館の喫茶店の女主人が、タクシーを呼んでくれた。 16:20に4人でタクシーに乗車して串本駅へ向かう。 運転手さんが気を聞かせて近道をしてくれたので、串本駅から紀伊勝浦駅へ行く16:40の各駅停車に乗車することができた。(この電車を逃すと次の電車まであと2時間待たなければならないことをタクシーの中でスマートフォンで調べて分かった。 運転手さんありがとうございました。)夕闇迫る海を眺めながら、今夜の宿のある紀伊勝浦駅へと紀勢本線の各駅列車に揺られていった。     

関西百名山の中には標高が300m台の山が三つある。 兵庫県の高御位山(304m)、横尾山(312m)そして、この和歌山の嶽ノ森山(376m)である。 標高がそれだけ低くても関西百名山に入るというのは相応の理由がある。 この嶽ノ森はその山頂からの景色も登りごたえも、900m近い山に負けず劣らずアルペン的な魅力を備えた山だと思われる。 この日は、海抜0mの島めぐりから始まって本州最南端の山を満喫することができた。 
(2019年3月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています