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摩耶山
摩耶山

基本情報
1 山名 摩耶山(まやさん)
標高 699m (三等三角点)
山域 六甲山地
都道府県 兵庫
位置 N34.43.58/ E135.12.15 
地図 昭文社 山と高原地図49「六甲・摩耶・須磨アルプス」
2万5千分の1地図「神戸主部」
20万分の1地勢図「京都及大阪」
7 山岳区分 関西百名山
登山記録
山歩No 5510-22009
登山日 2022年4月3日(日)
歩程 19時間40分
天候 曇り
形態 日帰り
アプローチ JR山陽本線塩屋
パーティー 2人
動画URL https://youtu.be/TuZjSqck1kk へのリンク

いつか実現したかった「塩屋ー宝塚の全山縦走」にチャレンジする日がついにやってきた。新田次郎の小説「孤高の人」で主人公の加藤文太郎が六甲全山縦走を行ったのが1925年である。 パーティーを作って登るのが常識とされる山岳界の常識を覆し、単独行によって数々の登攀記録を残したこの著名な登山家のふるさとの山は一時期神戸市民であった自分にとって若いころからのひとつの目標になっていた。 登山をするようになって40年以上経ってしまったが、急がないと高齢化で足腰が弱ってしまうと考え1年前にも計画したのが、コロナ感染症拡大による緊急事態宣言で、首都圏から関西圏へ移動するのをあきらめざるを得ず延期した経緯がある。

横尾山

4月3日(日)朝5時過ぎに旧来の友人であるN.Kさんと住吉駅で待ち合わせて、始発電車に乗って塩屋駅までやってきた。 塩屋駅から旗振山・鉄拐山・高倉山・栂尾山・横尾山と5つの峰を超えてきた。途中、栂尾山では曇天ながら須磨海岸や明石海峡大橋の景色を堪能することができた。 横尾山は関西百名山にも選ばれている山であるが、この山が有名なのは通称「須磨アルプス」といわれる急峻な岩稜帯を東側に抱えるからであろう。 7:40、横尾山を出発した我々2人はいよいよこの核心部を通過することになる。

須磨アルプス馬の背

横尾山を出てすぐに道は急な下りとなり早速鎖が現れる。下っていく様子を動画に撮影しながら鞍部へ行く。 N.Kさんは前回は登山者とすれ違いで苦労したと言っていたが、今日は天気予報があまりよくないこともありルート上にあまり登山者がおらず幸いである。 とはいうものの我々が馬の背についたときには後ろからトレランの4人組がやってきた。馬の背で休憩しながら少し話をした。 トレラン教室のチームらしく全員2週間前の六甲キャノンボールのレースに出場したもようである。 講師と思われる最年長の方は46kmの縦走コースを往復してさらに明石海峡大橋まで行く「オーバーザレインボー」というレースだったらしい。 すごいの一言である。

振り返った横尾山

須磨アルプスは馬の背から先に一番切り立った細い場所がある。 両側を見ると足がすくむが足元をしっかり見て慎重に進むしかない。 ここを過ぎると普通の登山道に戻りそこから少しの登りで東山に到着する。 東山から振り返った須磨アルプスは高度感がありなかなかの景観である。 ツツジのピンク色とのコントラストが美しい。


東山からの下り

東山の山頂で女性の単独行の方が地元の登山者の方と話しているのが聞こえた。 彼女も今日全山縦走をするつもりだという。 一緒になって東山からの下り道で話をすると、ご友人が2名、あとから追いかけてきているらしいが、この女性は須磨浦公園を彼らより早く出発して途中で追いつかれれる予定だという。 なるほど人によって電車の始発時間が違うので、我々のように6時から歩きだすというわけにいかない方もいるわけである。 


桜が満開の公園へ

東山を降りるとそこからは神戸市須磨区の横尾の団地の横の車道を走る。 先ほどの単独女性も前を走っている。六甲山全山縦走路の標識を見落とすとえらいことになる。 なまじ登山道よりもこのような人家のほうがルートを注意しなければならない。 阪神高速31号神戸山手線の下をトンネルで渡って妙法寺の前でようやくこれから登る高取山が見える。ふもとの公園で少し休憩をする。 N.Kさんからキャラメルをもらってほおばるとなかなかうまい。 

 

荒熊神社

高取山への登りにとりついたころからぽつぽつと小さな雨粒が顔にあたり始めた。 時刻はまだ8:30である。 天気予報では3時くらいに降り始めて夜の8時くらいまで降水確率が少し高めの50%の予報だったので午前中は天気が持つと思ってきたが思ったよりも早く雨の気配を感じて気が滅入る。 それでも高取山までの標高は200mくらいなので30分かからずに上がることができた。 荒熊神社に8:55到着。 


高取神社

荒熊神社でお参りをして高取山西峰の山頂へ上がってみる。 昔はこちら側に三角点があったらしいが、電波塔が立っているので移設したようである。 そこからぐるっと神社参拝道に降りることができたが、そのルートだと赤鳥居を通らずに参拝を済ませたことになるのでもどって鳥居を2-3個くぐってみた。 南側に回るとこちらは高取神社となっていた。 同じ神社も祭ってある神様が違うようである。 奥の宮・金高稲荷神社といわれるところが、いわゆる高取山の山頂へつながる社で、横の階段を上がると標高328.8mの高取山町に到着することができた。 山頂は切り立った頂ではなく、どちらかというと広場のようになっており、猿田彦大神がある。 おそらく地元の方でここに登ってラジオ体操をする方とかいるのであろう。


丸山町へ下りる

9:16 高取神社からは階段を下りて参道を進む。 月見茶屋を経てしばらくと公衆トイレがあり六甲全山縦走路はここから参道を離れて北東の丸山町のほうへ進んでいる。 高取神社の表参道としては南東に安井茶屋・清水茶屋を経て長田へ下るルートが主流のようだが六甲全山縦走路はまだ半分も来ていない。 丸山町へ降りる道は普通の登山道。 スナック黒帯という明らかに店主が柔道の達人だろうと思われる店の前を通り県道を渡り正面に丸山ひばり小学校を見ながら坂を下りていく。 ここから鵯越の駅までは住宅地を歩く。


鵯越駅

松岡酒店さんは県道から300mくらい入ったところにあった。店内にはキャノンボールなどレースに出る方はもちろん、一般の登山者の胃にも優しそうな行動食がたくさん並べてある。 ここでチョコレートと塩バターパンを調達。 店主と会話したが、私がもうすぐ還暦には見えないと言ってくれたので機嫌がよくなってしまった。 自販機でサイダーを買い、神戸電鉄の線路をとトンネルでくぐり坂をあがっていく。 地名を見ると「源平」となっていた。 なるほど、ここが平家物語の一の谷の舞台なのである。 ちなみに源義経の逆落としの伝説の場所はこの鵯越付近だという説と、我々が通ってきた鉄拐山付近だという説とがあるようである。10:03鵯越の駅に到着。神戸電鉄が通過していく。 そこから細い道を公園に入り、今回2度目の腰をおろした休憩をとることにした。

 

菊水山駅跡

 何しろ、ここから先、菊水山への急登が控えている。 同行のN.Kさんは前回菊水山の登りでエネルギー不足でふらふらになってしまったということだったので、公園の休憩スペースでさきほど松岡酒店で購入した塩バターパンを食べる。 元気になって10:17出発。    10:42石井ダムの登山口に到着。 左手にはかつてあった神戸電鉄の駅「菊水山」駅のホームの名残がある。 自分が1994年の春に六甲縦走をしたときには西宮の自宅からこの菊水山駅まで始発電車でやってきて登り始めた。朝の陽ざしの中菊水山が急登りだったことを鮮明に覚えている。 地図の上で六甲縦走路休憩所と書いてあるところは昔は茶店があったのか平たい場所になっていて休憩には最適である。 2019年に登った時は夜行バスでの睡眠不足もありここで10分ほど道上で仮眠をとった。今回はまだまだ元気である。 

菊水山山頂

道はここから斜度を増していく。 菊水山まであと10分というところで、道がぐっと左に折れてそこから菊水山カントリークラブを見下ろすことができる場所がある。息を整えて最後の登りを踏ん張り11:14菊水山山頂に到着。 パラボラアンテナ下の展望台からは自分たちが歩いてきた高取山・須磨アルプス・旗振山の稜線が見える。 順番にいくつピークを越えてきたか数えてみた。山頂近くにある全山縦走の地図を見ると、この菊水山ですべてのコースの1/3くらいの地点であることがわかった。11:27菊水山出発。 ここから急な下りとなる。 下り切ったところが国道428号の上を渡っていく天王吊り橋であった。

市ケ原

橋をわたり今度は鍋蓋山への登りが始まる。 斜度は菊水山と比べるとゆるやかに感じるが、ここがピークかと思ってたどりついた場所が実はまだ山頂ではないというにせピークを2つほど超えてやっと12:18鍋蓋山の山頂につく。 想像していた以上に南側の展望は開けており、三宮・元町の方面のビューが広がっていた。 ここからやや平坦な道となり軽く走ることができる。 12:41再度山大龍寺。 お詣りをして、そこから今回の縦走路のほぼ中間地点となる市ケ原に到着した。 市ケ原で用意してきたアルファ米を食べる。 河原ではバーベキューをしている集団がいた。中には足腰が立たないほど飲みすぎた人がいたが、いったいどうやって帰るのだろうか。 近くまで車道が通っているのかペットボトルが捨てられる大きなゴミ箱があった。

摩耶山山頂

いよいよ本格的登山とる。 稲妻坂を上り摩耶山を目指す。 景色としてはあまり展望がない樹林の中の登りであるがふんばりどころである。 反射鏡の横をとおったらもう摩耶山の山頂は近い。車道に出たので掬星台へ向かって歩いていたところ右手に摩耶山山頂へ行く標識が現れた。 確かに地図を調べると摩耶山の山頂は掬星台よりも南西に離れた場所になっている。 そこで我々は道標に従い摩耶山山頂へと歩いていくことにした。 摩耶山山頂は樹林の中に三角点がある小高い台地状のところだった。 登山者はだれもいなかったが大きな摩耶山頂の標識が立っていた。 実はここが本当の山頂であったのである。 これまで2回摩耶山を登ったつもりであったが掬星台の展望台で写真を撮って山頂に来たつもりになっていたが実はそれは山頂ではなかったのである。 30年近くたって初めて知った事実に驚愕を隠せなかったがおかげで関西百名山の摩耶山をこうして登頂することができた。

掬星台

掬星台まで5分ほど歩いて、おきまりの展望を楽しむ。 小雨の天気予報だったせいか、展望台にはほとんど人がいなかった。 それでも神戸の絶景は我々を迎えてくれた。あそこが六甲アイランドだなどと昔自分が住んでいた東灘区のあたりの様子を確かめながら見た。 山頂の桜の木の根元を一頭のイノシシが掘り返している光景も兵庫県ならではだと思った。掬星台を後にして今は閉鎖になってしまったオテルド・マヤの横を通っていく。 ここはかつて国民宿舎摩耶ロッジとして多くの神戸市民に親しまれた宿泊施設であった。 コロナによる観光需要の縮減もあり2021年3月末で営業を休止してしまった。 誰もいない閉鎖された建物を見ながら縦走路を進むのは寂しかった。。

摩耶山はてっきり頂上を踏んでいると思っていたが実はそれは大きな誤解だったというのを神戸を離れて10年目にして知ることになったのは驚きであった。静かな山頂ではあるが六甲山らしいよい山であることを改めて知った。 六甲全山縦走のルートは中盤に3つの標高の高いピーク (菊水山・鍋蓋山・摩耶山)が現れるが、摩耶山まで来ると本当に六甲連山の主脈にたどり着いたという実感がわく。摩耶山はケーブルとロープウエイで掬星台にたどり着くことができるので、いつかまた神戸の景色、できれば夜景を見にきたいという気持ちを掻き立てる場所であった。

(2022年5月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています