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白毛門
白毛門・朝日岳

基本情報
1 山名 白毛門・朝日岳(しらがもん・あさひだけ)
標高 1720m(白毛門)
山域 三国山脈
都道府県 群馬県
位置 N36.51.35/ E138.58.02 
地図 昭文社 山と高原地図16「谷川岳・苗場山・武尊山」
2万5千分の1地図「茂倉岳」
20万分の1地勢図「高田」
7 山岳区分 関東百名山(朝日岳)
群馬百名山
登山記録
山歩No 4010-12023
登山日 2012年6月30 日(土)
歩程 12時間10分(朝日岳含む)
天候 晴れ
形態 日帰り
アプローチ 関越道水上ICから国道291号土合橋
パーティー 1人

昭文社の山と高原地図、いわゆるエアリアマップには、谷川岳から清水峠・朝日岳・白毛門を経て土合に下りる馬蹄形コースははっきりと1泊2日のコースと記載させている。 にもかかわらず山記録の皆さんのホームページを見るとなんと日帰りで馬蹄形縦走をしている人の多いこと。私は、当初三百名山でかつ関東百名山のこの朝日岳に登る計画を宝川温泉からのピストンで考えていた。 これでも、コースタイムで8時間を越えてしまう。 白毛門を経て朝日岳に登るルートの魅力に惹かれながらも、最初から時間的に無理だと考えていた。 しかしながら、馬蹄形縦走をしている人のペースを見ると、日の長い6-7月などを選べば、せめて白毛門から朝日岳を経て清水峠まで行って土合にいたる周回コースが可能ではないかと考えるようになってきた。 たまたま今年(2012年)は6月19日に台風4号が日本に上陸して大雨を降らせた。 宝川温泉からのコースは渡渉地点で増水していて進めなかったという人の記録もあり、6月24日に安全を見て土合から入るコースを選ぶことにした。 幸い梅雨の晴れ間で天気はよさそうだ。 

赤城高原SA

6/23(土)朝曇り。 朝、車に荷物を積み込み、実家に行って用事を済ませる。  15時半にすべて終了して、山に向けて出発。寝袋を車に積んでくるのを忘れたので、実家で毛布を借りる。スーパーの駐車場に車を入れて食糧の買出し。つまみに加えて翌日のパンとゼリーとビスケットも買って16時に会計をして車を出発させる。 土合までおおむね150km。 ガソリンは満タン近くあるのでおおむね持ちそうだ。 練馬ICから乗った関越は時間が時間だけにそこそこすいていた。18時に赤城高原SAで休憩。このサービスエリアは高台にあり、とても眺めのいいところだ。    

JR上越線 土合駅上りホーム

 子持山に山裾に雲が垂れ込めていて幻想的な姿だった。 夕方、ここで景色を眺めるのは初めてだが、谷川岳をはじめとした上越の山に加えて、武尊山がきれいに見えた。  水上ICを降りて明るいうちに土合に着いた。土合山の家や土合駅を見てみる。 山岳センターを過ぎたところまで車を入れてみて、戻ってきて、土合橋の駐車場に停める。 まわりには、明日早朝から登山ほする人が多いのか20台くらいの車があった。 早速夕食を食べつつ翌日の用意をする。ビールと・日本酒を飲んで 21時には寝てしまった。 夜目が覚めて車の外に出てみると満天の星。 北斗七星が真上に見えた。

出発・谷川連峰馬蹄形概念図

6/24(日)朝2時くらいに寒くて一度起きてしまう。 トレーニングウエアを着てもう一度寝る。 やはりシュラフとマットを持ってこなかったので寒さがこたえる。 3時におきて、朝食に昨日の残りのカツどんときゅうりの少し残しておいたものを食べる。3:50出発。 隣に横付けした軽トラックから男性が準備をしてほぼ同じ時間に出かけていった。 ヘッドランプをつけて4:00、沢を渡って上り口に到着。 そこから尾根筋にとりつく。
沢を渡る前に、「馬蹄形概念図」の看板があった。 コースタイムは16時間であるが、これに日帰りで挑戦する人は多いようだ。 私の車の隣に停めた男性も同じ時間にでかけたところを見ると、馬蹄形縦走に挑戦するつもりであろう。 

朝日に浮かぶ谷川岳

 歩き出しからすぐに樹林の中の急なのぼりとなる。 木の根をまたぐようにして標高をかせいでいく。次第に明るくなって、左手に木々の間から谷川岳の姿が見える。 最初の休憩を4:40. 尾根のこぶのような少し見晴らしのいいところで谷川岳の写真を撮るためにカメラをザックから出していたそのとき。 なんと切り株のところにおいたザックが転がってしまい、そのまま登山道を越えて林の中に落ちてしまった。

ザックが落ちた地点

当然木に引っかかってすぐに停まると思ったのだが、そこが意外に切り立った斜面だったこともあり数回転するともう姿が見えなくなってしまった。およそ10回転ほど転がったであろうか? 落下する音がしなくなったので、木にひっかっかってとまったはずだと踏んで探しに降りていくことにした。転がって落ちた場所は少し急傾斜で人間がダイレクトに下るには少し危険だ。登山道を10mほど戻って斜面に入れそうなところから横断してそれから下ることにした。斜面は急だが、枝につかまりながら降雨でやわらかくなっている土に足を置けばなんとか道のない傾斜を降りることができる。 数メートル下ったが自分のザックは影も形もない。

断崖を降りながら上を撮る
 
 降りる位置がずれているのかと思い、一度そのまま上まで上がっていくと、登山道をザックを落とした場所まで出た。 おかしい、下った位置は間違っていないはずだ。 もう一度、こぶになった木々の間などに埋もれていないか見たが一向に見当たらない。 遠くから登山者が会話しながら登っていく声が聞こえた。 ここから転落したら発見されないのだろうかなどと急に不安になってきた。 のどが渇いたが水はザックの中だ。 救援を求めようにも携帯もザックの中だ。おまけに車の鍵もザックの中である。 まさか本当に谷底まで落ちてしまったのではないだろうか? このまま見つからなかったらどうしようか?先月、秋田の焼山に登ったときに快晴の登山日和の中、時間がなくなって撤退したのを思い出した。今回もその二の舞になるのだろうか? 8時までに見つからなかったら縦走はあきらめよう、正午までに見つからなかったらそのまま下山しようと腹をくくって、もう一度落ちた位置まで戻り、ゆっくり急斜面をおりていった。

ザックが転がっていた地点

 「あった。!」 14mほどおりたところにこちら側に尻を向けてザックが木にかかってとまっていた。 背は青だが底は黒なので見えづらかったのだろう。 さきほど探して引き返した地点よりわずかに2mほど下の場所だった。 やれやれ。ザックを回収して登山道まで戻った。 人に踏まれた登山道がこんなに歩きやすいものだとは、と改めてその落差に気づいた。 水を飲んで時計を見るとここで40分のロスをしたことになる。 まあ、馬蹄形は最初から無理にしても、蓬峠までいけるかどうか微妙なタイミングだ。 とりあえず、目的の朝日岳のピークは目指そうと決めて再び登山道を登り始めた。

標高1300mの尾根道

6:05尾根をあがった平たくなったところで休憩。 今度は荷物を落とさないようによく注意して置く。単独の登山者の方がやってきて、今日はじめて誰かに抜かれた。 というか抜かれたことを認識した。 (自分が崖を下りてザックを探している間にいったい何人の人たちが抜いていったのだろう。) 6:18出発。 そこから尾根をゆっくりとあがる。 やがて岩を手を使ってよじ登るところが現れた。 後ろからの登山者を抜かさせてやるために、少し広場になったところでザックを開けて水を飲む。  

松ノ木沢の頭(谷川岳をバックに)

7:03出発。 やがて鎖場が現れる。 注意しながら登ると松ノ木沢の頭だった。 すばらしい眺めだ。 谷川岳と一ノ倉沢がこちらを睨むかのようにたっている。東側には尾瀬・上州武尊も見える。  先ほどの登山者にシャッターを押してもらった。そこから、白毛門は近くに見えるがそこそこに距離がある。 正面に見える岩の左側がジジ岩・右側がババ岩だと思われる。 大きな岩を縫うようにして歩いていく。草つきの岩にうまく足をおいて、登る。2名の登山者と後ろになり先になりしながら急登をあがっていく。 幸いというか、2名の登山者の間に入るようになってしまったので、前を歩いている人がどの道を通るのが楽かリードをしてくれる。 岩の横で5-6名の若者が楽しそうな笑い声を連発させながら休憩している。

白毛門山頂

8:00白毛門山頂到着。 お疲れ様といって先ほどの若者の中の一人の女性に声をかけられる。驚いたことに、このグループ、私が大学時代に所属していたサークルの名前の入ったTシャツを着ていた。 もしやと思って確認すると、やはり、サークルの後輩たちであった。 なんと24年から30年も年下の後輩だ。私が大学時代にはまだ生まれていなかった方たちだ。 偶然なことに、私もこのときは学生時代につくったサークルの名前の入った山シャツを着てた。 後輩たちは、昭和時代のユニフォームを興味津々で写真に収めていた。私は、今の人たちがどんな活動をしているのか、夏合宿にはどんなところに行っているのかを楽しく聞かせてもらった。 
 あらためて自分の登山の原点のような学生時代のサークルが息の長い活動をしているのを知った。 彼らはこここから直接下山するという。名残はつきないがお互いのこの先の無事を祈って別れを告げ 8:25出発。


 白毛門は噂にたがわぬ名山だった。 登っている途中でぐんぐんと近づいてくるのが迫力がある。 この山ひとつだけ登っても十分に歩行と展望とを楽しむことができる。 さらに、山の上で後輩にばったり会うというのは何たる偶然か。 20分到着時間がずれていたらもう会うことはなかったわけだし、彼らがサークルの名前の入ったシャツを着ていなければ、こちらも気づかなかったわけである。 後日、この話を伝えた別の後輩が、「東京の街中は3次元の広がりをもっているけど、登山道は1次元の世界なのでそのほうが遭遇率は高いかも」といっていた。 なるほど、道理である。 <白毛門・朝日岳(後半=朝日岳)へ続く。>
(2012年7月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています