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国見岳
国見岳

基本情報
1 山名 国見岳(くにみだけ)
標高 1739m(一等三角点)
山域 九州山地
都道府県 熊本・宮崎
位置 N32.32.50/ E131.01.06 
地図 昭文社 山と高原地図58「阿蘇・九重・由布岳」
2万5千分の1地図「国見岳」
20万分の1地勢図「延岡」
7 山岳区分 日本二百名山、九州百名山、一等三角点百名山
登山記録
山歩No 3995-20030
登山日 2020年11月22日(日)
歩程 4時間50分
天候 晴のち曇り
形態 日帰り
アプローチ 国道443号県道159号樅木
パーティー 1人

 2020年11月 勤労感謝の三連休にGo to トラベルのキャンペーンを使って九州への旅に出た。 目的は宮崎空港を起点に車で二百名山・三百名山を回ることである。初日は尾鈴山を登った。 そして下山後は五ヶ瀬の里キャンプ村に宿泊。 2日目に今回の登頂最高地点となる三百名山の国見岳をアタックすることにした。天気予報で2日目が少し天気が悪い様子でそれが気になる。 とにかく早立ちを心がけた。  

五ヶ瀬の里キャンプ村管理棟

 2020年11月22日(日)朝は4:35に起床。 昨夜泊まった五ヶ瀬の里キャンプ村の管理棟は夜中薪ストーブを焚いていたせいか思ったよりも暖かだった。 広い2階の大広間でふとんは、コロナ感染症対策で、シーツを2枚敷いてその間で寝てくださいということだったので管理人さんに前夜言われたようにシーツと枕カバーを洗濯物入れにしまう。 1Fの休憩スペースへ降りて電気ポットでお湯を沸かしてテルモスに詰める。 残った湯で、昼食のサタケのアルファ米わかめご飯を仕込んでおく。 前夜デイリーヤマザキで買っておいたサンドイッチの朝食を済ませて出発。 車のところに来るとさすがは九州、まだ空は真っ暗、星がきれいであった。

二本杉峠

 5:30真っ暗な中車を出発させる。 県道219号から左折して県道122号に入る。 国道443号と合流。宇城方面に行く道と分かれて、人吉方面に向かう443号はいよいよ山越えの道となる。 かなり急峻なところどころ1車線の道を上がる。 道路の最高地点の二本杉峠についたのは7:30だった。 予定では5:30に出発して8:30に登山口到着の予定であったが、あと1時間で果たして到着できるのであろうか? 二本杉峠から先の国道433号は比較的2車線の続く良い道であった。 ナビでは登山口は設定できないので、泉町樅木を目印として進む。 五家荘渓流キャンプ村の手前の三差路を入って樅木方面に狭い道を進む。 幸い朝なので離合の心配はない。決して良い道ではないが一応舗装道路で、進む先が国見岳登山口という標識も見えたので道は間違っていないようである。


国見岳登山口の手前

 国見岳登山口まであと5㎞の標識を進んでから1.5㎞ほど進んだところで、路肩に駐車してある品川ナンバーの車を見つけた。 YAMAPで最近登った人の記録で、道路の崩落で登山口までは進めないことはわかっていたので、覚悟はしていたがそろそろかという思いをする。 果たしてそこから300mほど進んだところが終点であった。 路肩に5台ほどの車が駐車してあった。 自分も何回か切り替えしてUターンして帰路に頭を向けて路肩の広いところに駐車する。 10台くらいは停められそうな場所である。 思ったよりも気温は低くないようなので、ウールの山シャツは持たずに8:40出発。 (ウルトラライトダウンは実はトレランリュックにしまったつもりで忘れていたのだが)
 

崩落地を通過

 最初の車が停まっている場所の少し先は崩落地で通行止めの柵が置かれていた。 令和2年7月豪雨は、2020年7月3日から7月31日にかけて、熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨である。同年7月9日に、当時継続中だった大雨を気象庁が命名し、8月4日に豪雨の期間を7月31日までと発表した。 熊本県を流れる球磨川水系は、八代市、芦北町、球磨村、人吉市、相良村の計13箇所で氾濫・決壊し、約1060ヘクタールが浸水し52人の死者が出た災害である。 登山口へ続く道路が寸断されているのは致し方ない。 


烏帽子岳登山口

 歩いてすぐに第一崩落地を通過する。 1992年に北アルプスの笠ヶ岳に登ったときに通った笠新道にこのような崖の通過箇所があったな、と思った。 崩落した沢を見ると原木が何本も流されているのが見えた。 相当激しい雨が降ったのであろう。これでは道路の復旧の見通しがつかないのは致し方ない。 林業関係者とあと登山者が使うこの道よりも優先して復旧しなければいけない生活に関わる道がいくつもあるはずである。 災害復旧に予算を割かなければいけない自治体にとってコロナ対策で支出が増えたり税収が減ったりというのは本当にピンチだと考えられた。 第一崩壊地を過ぎて10分、第二崩壊地はさらに危険なルートだった。今日はよいが悪天のときには通過するのをためらうような崖っぷちおまけに崩落の上流のがれきはまだ雨が降ったら落ちてくるのではないかと思わせるような景観だった。

 

登山口ゲート

 8:54第二崩落地を経て大きく曲がりこむと果たして烏帽子岳登山口が見えた。 登山口の手前は路肩が広くなっており10台くらいは車を停められそうな気がした。 以前はここまで自家用車で入って、国見岳新登山口まで歩いて縦走コースで烏帽子岳経由で駐車スペースに下山してくるというのが一般的だったようだ。 残念ながら登山口までの車道が崩壊したことで歩程が1時間以上長くなり、今回私の歩いた11月のような日の短い時期では縦走のハードルが高くなってしまったようである。 当初、時間があれば自分も縦走コースを歩きたかった。 しかし、日没後にこの登山口までの車道をなれないレンタカーで走るのも不安であったし、本日11月22日の天気予報が午後から雨であったことから半分以上、縦走をあきらめた気持ちになっていた。 


国見岳登山口

 9:00烏帽子岳登山口から100mほど先に看板のようなものが見えたのでてっきり国見岳登山口だと思ったが実は単なる注意標識だった。 今回、トレーニングがてらトレランシューズで来ているのでさっさと歩いてみたが実はそれは登山口の標識ではなかったのでがっかりする。 そこからさらに大きく谷を曲がって200mくらい進んだところに国見岳登山口の標識があった。 本来、車道にあった登山口まであと5㎞の標識はここを指していたものと思われるがどうもルートが崩壊しているのだろう、標識の下に「あと300m進んで新登山口から登ってください。」との記載があった。 おそらく、この旧登山道からのルートは廃道になっていくのだろう。


樹林の中の急登

 新登山口は旧登山口から300mくらい先に進んだ林道の中腹にあった。 まあ道標もはっきりしているので見落とすこともないであろう。 登山口出発9:13. ルートはいきなり急登になっている。樹林の中を進む。 9:57、右側からさきほどの旧登山口からのうっそうとした道が合流してきた。間違えて侵入しないようにロープが張ってある。ちょうど前をいくご夫婦づれに追いついた。 今日はピストンでやめておくつもりだという。 まあ、自分もそのほうが無難であろう。 稜線に出てからは、先の見通しがわかるようになった。 尾根伝いに徐々に高度をあげて行く。 

国見岳山頂

 10:07左手に大きな山が見える。これが進む国見岳だろうか? 樹林の中を次第に傾斜を上げていく。 国見岳・お気をつけてと書かれた札の上は小さな平地になっていた。 前を若者と年配男性の2人組が歩いていたが、この平地で休憩していた。 親子連れだろうか。ここから山頂まで見通しがよい。 最後の標高差50mを一気に登る。 五勇岳との分岐を過ぎると山頂の祠が見えた。 11:05三百名山で熊本県の最高峰国見岳1738.8mに登頂。 山頂は自分ひとりだった。 というか、朝早く登った人はすでに下山してしまっていた。 残念ながら、雲が出始めていて、展望はあまりなかった。

烏帽子岳に至る稜線

 朝、キャンプ村で湯を入れて仕込んでおいたサタケのアルファ米わかめごはんを食べる。 山頂は風が吹いて寒いので雨具をだして着る。 ウルトラライトダウンも着ようかと思ったら持ってきたのを忘れたことに気が付いた。さきほど平地で追い越した親子連れもほどなく山頂に上がってきた。  視界はないが360度展望動画を撮影して11:25下山開始。 15時くらいから雨が降るという天気予報だったので早く降りてしまわなければいけない。 カルストのような岩の転がる草地には、鹿よけのための柵が張り巡らされていた。 

サルノコシカケ

下りではサルノコシカケの大きなものがたくさんあることに気が付いた。12:19に林道上部登山口との分岐に到着。 持ってきたアンパンを食べる。 これは昨日尾鈴山を登る前に川南PAで購入したものである。 まあ、一日くらい保存はきくであろう。ここからは急な下りである。 トレランシューズなので深い登山靴に比べると踏ん張りは効かないがその分軽さがある。 結局、ここから30分ほどで新登山口まで到着した。 新登山口でセルフタイマーで写真を撮り、また前日のように林道はStravaでペースをはかりながら軽くジョギングである。 13:15に第二崩落地を通過、13:25に駐車スペースにたどり着いた。 


平家の里を見物

思ったよりも早く下山できたので、近くの平家の里を見物することにする。 最初は樅木のつり橋を見る。それから平家の里に立ち寄る。 第二駐車場に車を停めて歩いて坂を上がる。 伝承によれば平清経の曾孫たちが「緒方氏」を称して久連子・椎原・葉木を治め、菅原道真の子孫たちが「左座氏(ぞうざし)」を称して仁田尾・樅木を治めたと伝えられている。 平家の落人伝説を展示館で見る。 2012年に大河ドラマで平清盛が放送されたので、そのときのポスターが館内にも貼られていた。五木の里の道の駅に立ち寄っているあたりで雨が振り出した。今夜の宿である人吉市に到着したときは18時半。 風呂に入って、車を置いて近くのそばやに20時半に立ち寄って焼酎を飲んで歩いて宿に帰った。

 国見岳の解説はこうなっている。国見岳(くにみだけ)は、九州山地中央部の向霧立山地に属する山である。標高は1,739mであり、熊本県最高峰。九州本土では祖母山(1,756m)および市房山(1,721m)と並ぶ屈指の高峰であるが、交通の便が悪い地域に位置する。日本三百名山、一等三角点百名山の一つに数えられる。 とにかく、交通の便が悪いのだ。 だからこそ、簡単には近づけない山としての価値がある。 アプローチの道路が崩れてしまってますます遠い山になっていることは悲しいことなのかもしれないが、だからこそアタックする価値のある山だといえるのだろう。

(2020年11月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています