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野伏ヶ岳
野伏ヶ岳

基本情報
1 山名 野伏ヶ岳(のぶせがたけ
標高 2053m (三等三角点)
山域 加越山地
都道府県 福井・岐阜
位置 N36.00.45/ E136.43.56 
地図 昭文社 山と高原地図43「白山・荒島岳」
2万5千分の1地図「原教寺山」
20万分の1地勢図「金沢」
7 山岳区分 日本三百名山
登山記録
山歩No 3700-16010
登山日 2016年4月24 日(日)
歩程 7時間40分
天候
形態 テント泊1泊ピストン
アプローチ 国道156号、道の駅白鳥より、岐阜県道314号石徹白前谷線、岐阜県道127号白山中居神社
パーティー 2

 登山道がなくて残雪期にしか登れない山というのがある。 笈ヶ岳や猿ヶ馬場山、景鶴山など300名山には難関と呼ばれる山があるが、今回はそのひとつ野伏ヶ 岳にトライをすることにした。 かねてからの山仲間のA.D氏と相談して、前日、名古屋から2駅西の清州で落ち合いA.D氏の車で岐阜高鷲の鷲ヶ岳に登頂したあと、白山中居神社の脇でテントを設営した。
 

白山中居神社・石徹白川に面した駐車場

 4月24日(日)朝5:30起床。 前夜、テントの前で夕食にうどんすきを楽しんでいる最中に雨が降り出してテントの中に逃げ込んで寝た。 雨は夜のうちにやんで天気は回復していた。 テントの近くに1台、スバルXVと思われる車が停まっている。 登山客であろう。 今回の登頂をトライするのはわれわれだけではなさそうだということがわかった。 


林道を進む

 6:45、曇空の中を出発。 残雪のダイレクト尾根を登ることを想定して、ザックにはピッケルもくくりつけて行くことにしたので昨日の鷲ヶ岳登頂時と比べてかなり荷物も重い。 林道をゆっくり歩いていく。 とりあえず和田牧場跡まで約2時間は林道歩きである。橋を渡り、水道局の建物と思われる無人施設の脇を通って進む。出発前に朝食はとらなかったので、休憩をして持ってきたおにぎりをほおばる。 

残雪が現れた

 7:49、林道の脇に残雪が現れる。 ここまで昨日の鷲ヶ岳も含めて全く雪がなかったので、やっと残雪を見てほっとした気がする。 ただ、林道を歩いている登山者は自分たちだけのようである。林道は、右に左に折り返して次第に標高を上げていく。熊がでるかどうか気になったが、ここは福井県と岐阜県の県境であるので出てもおかしくないだろう。 自分は2012年に鷲ヶ岳でクマに遭遇した。むしろ白山に近いこちらのほうがリスクは高そうだ。 クマ鈴というのはなぜか歩いているときに音が小さく感じるものである。  

 

和田牧場跡

 8:47、林道の終点である。 幸い天気は回復して見事な青空が広がり始めた。ようやく見晴らしが開けた。 ここが和田牧場の跡地のようである。 牧場を横切って進むが踏み跡が消えてしまった。 あれ、おかしい。 みな野伏ヶ岳に登った人の記録を見ると牧場を横切って進んでいるようであるが。 いったん北寄りの丘陵になったところを進むがどうもおかしい。 まわりを見渡しても踏み跡がないので注意深く見ると南側にルートらしきところが見えるのでそちらに向かう。


ダイレクト尾根取り付き

 はたして、野伏ヶ岳に登るダイレクト尾根への取り付きと思われるところへ通じていそうな林道ではあった。 ただし我々が愕然としたことは、野伏ヶ岳の全容を見たときだった。 ダイレクト尾根にもほとんど雪が付いていない。 いったいこれで登れるのだろうか。 林道は最初、西に進みやがて南に方向を変えていく。少し丈の高い笹が現れ始めたが歩くのに不自由ということはない。 ダイレクト尾根の末端のところでは南東に方向を変えた。 そこに、残雪期に登山をして尾根にとりついたと思われる登山者のピンク色のテープが見えた。


急登を這い上がり尾根上に到着

 9:51 テープに沿ってダイレクト尾根への取り付きを上がる。 結構、険しい登りで、両手両足を使いながら登り続けて10:09ようやく、尾根上に立つ。 雪はまったくない。 10分ほど休憩をして水を補給する。 気温はそこそこ高いので寒くはないが、 今年の雪の少なさは異常であろう。 4月の下旬でまったく残雪がない。 先に進めるのだろうかと不安になる。
 

ひたすら藪こぎ

 10:20、意を決して、ダイレクト尾根を進む。 ブナ林の中の灌木を分けて進むいわゆるヤブこぎになる。 ピンク色のテープは10mおきくらいであるので道を間違う心配はないのだが、クマザサが結構おい茂っており、足をとられてなかなか進めない。 こうなるともはや修行のようなありさまである。 10m進んでは靴の紐が外れて、立ち止まっては体制を直し、またしばらく進んでは今度はザックにくくりつけてあるピッケルが木にひっかかってはねてしまうなど惨憺たる有様である。 登っている中でも妙に余分なことに体力を消耗する。

登頂断念引き返す

 11:09、藪が薄くなったような気もするがそれでも少し進むと猛烈なクマザサの逆層にぶち当たったりしてまた2-3歩下がってルートをとりなおしたりする。 高度計を見るとまだ1250mくらいだ。 ダイレクト尾根の上に上がったところが1160mだったのでまだ標高差100mも上がっていない。 尾根の上から歩いて50分経っているので、標高1674mの野伏ヶ岳の山頂にたどり着くためには理論的にはあと3時間以上かかることになる。 もはや限界である。 相棒のA.D氏の顔も疲労でゆがんでいる。 2人のうちどちらが言い出すかのようなタイミングだったが、結局、断念して下山をすることで意見が一致した。11:15、標高1270mの地点をもって今回の登山の山頂とみなし天を仰いだ。

和田牧場跡で昼食、野伏ヶ岳をバックに

 クマザサの逆層のせいか、下りは思ったほど時間がかからなかった。 ダイレクト尾根の上から来た急登をそのまま降りるかどうか迷ったが、未知の踏み跡を通る勇気もなく慎重に両手両足を使って下山をする。 途中で、ザックにくくりつけていたストックを落としてしまうハプニングもあったがすぐに気がついて回収する。 林道に出たときはほっとした。林道のほとりにユキワリソウが可憐な花をつけているのが印象的だった。 下りは名残惜しく野伏ヶ岳をバックに写真を撮った。

白山遠望

 13:00和田牧場跡について広くなったところで昼食とする。湯を沸かしてカップヌードルとアンパンをほおばる。 散策をしている単独行の方がいたのでお話を聞くとやはり今年の雪の少なさは異常だと言っておられた。 かつてはゴールデンウィークに、スキーにシールをつけてこの和田牧場を横切って銚子ヶ峰から三の峰と別山を越えて白山に登った時ことを話してくれた。 その意味では野伏ヶ岳に4月下旬に登ろうと考えたわれわれの企ては必ずしもまちがってはいなかったのだろう。 残念である。 カップヌードルを食べながら、例年の6月くらいの雪量の白山をうらめしく眺めてみた。


下山・キャンピングカーの登山者と出あう

 13:27拓牧の道標の横を通って下山をする。登頂できなかった山の林道の下りはなぜかもの悲しかった。14:50、石徹白川が見えてその向こうにヤマザクラの色をバックにした白山中居神社の社が見えた。のどかな長良川の水源の景色に心が現れる思いだった。 出発地の駐車場まで帰ってくるとカメラを首から下げた一人の男性が待ち構えていた。 キャンピングカーで三百名山を登る旅をしている徳島の溝田さんだった。 野伏ヶ岳の様子を聞かれたので、今さっきの藪こぎの苦労をお話したところ、翌日登るかどうか困惑しておられた。 (ブログを見る限り、藪こぎしてでも山頂まで行ったようです。 脱帽)


尾張一宮より電車で帰る

 15:30、 前日場所を確かめておいたウイングヒルズリゾートの満天の湯で汗を流す。 炭酸水素温泉であるようで、足首の藪こぎの傷にはしみるお湯だった。屋外野露天風呂に入ったら結構気温が低くて寒いくらいだった。レストランでスプライトを飲みながら、今回の会計の精算をする。 A.D氏は「日本酒が余っているから、これ持って帰ってくださいよ。」と勧めてくれたので空いたスプライトのボトルに詰め替える。A.D氏と分かれて帰りの電車は尾張一宮を18:32に乗車。 豊橋行き新快速に乗る。 名古屋で乗り換えてこだま678号東京行き18:56発。 車内ではさもスプライトを飲んでいる顔をして、日本酒を飲んで1時間を過ごした。静岡20:25到着だった。 



 残念ながら山頂に行くことはできなかったが自分なりに「ナイス・トライ!」と賛辞を送りたい。 野伏ヶ岳の雄姿を見て、ぜひ登りたい山のコレクションが一つ増えた。 この前日登った鷲ヶ岳は前回、雪に覆われた山に登ることを断念したが、野伏ヶ岳は次回雪があるときに再び来て登ることを決意した逆パターンの山となった。 まあ、山は逃げないので、もう一度チャレンジしよう。

 
(2016年5月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています