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山伏
山伏

基本情報
1 山名 山伏(やんぶし)
標高 2,014m (二等三角点)
山域 身延山地
都道府県 山梨県・静岡県
位置 N35.18.15/ E138.17.06 
地図 昭文社 山と高原地図42「塩見・赤石・聖岳」
2万5千分の1地図「梅ヶ島」
20万分の1地勢図「静岡」
7 山岳区分 日本三百名山・山梨百名山
登山記録
山歩No 3580-13019
登山日 2013年5月26 日(日)
歩程 4時間45分
天候
形態 前日発小屋1泊
アプローチ 新東名高速道路新静岡ICより県道27号
パーティー 2人

山伏は山梨県南巨摩郡早川町と静岡県静岡市葵区との境にある山である。赤石山脈の白峰南嶺に続く山で、同嶺の最南の2,000m峰であり、安倍川の源流。安倍川流域の最高峰でもある。標高2,014mmであるが、正確には2013.7mとなっているので、西暦標高登山を試みるならば来年2014年ではなく、今年2013年に登るのが正しいのかもしれない。 今月は西暦標高登山で北海道大雪山系のオプタテシケ山2013mにトライをしたが見事に敗退という結末になったのでなんとかこの山伏でリベンジしたい。

新東名高速清水PA

5月25日(土)朝5:30起床。もともと、この週末は、YTさんとチャンスがあれば富山の毛勝山に行きたいという話をしていたが、残念ながら仕事の都合で流会となってしまった。 近くの山に行くときの恒例同行者、SK君とロッジ前泊宴会のおまけつきで行くことになった。スーパーで食材の買い物を済ませて横浜青葉ICを10時に乗る。 高速に乗ってからは案の定厚木までで6km、20分ほど渋滞でロスした。 御殿場JCTから新東名に入り、そこからはスピードも出る。 12:00に清水PAで休憩し、新静岡ICで下りてからは去年、梅が島に行ったときに通った道で口坂本温泉を目指す。 県道27号線は相変わらず1.5車線の厳しい道だが、今回はダンプとのすれ違いはなかった。 下りの車がスピードを出しておりてくるので要注意だ。 

口坂本温泉

 安部中河内川のほとりにある口坂本温泉には14時前に到着。 駐車場は6割ぐらいうまっていた。少し、空が曇っていて雨が降るかもしれないという天気だったが、入り口で一人280円という破格の入浴料金を払って入る。 洗い場が5つほど、内湯と露天の二つの風呂だったが、露天は38度とぬるめの湯。 目の前に春もみじがあってなかなか風情がある。ゆっくり使って温まる。ナトリウム炭酸温泉でぬるぬる度が強いが、秘境の温泉だということで山の香がする。  脱衣場も小さいが、お客がそんなに多くないのも助かる。市営の公衆浴場ということでシャンプーも石鹸もあるし、ドライヤーも無料だ。 持込自由のこれまた無料の休憩所に寄ってセルフサービスでお茶を飲み、まだ先を急ぐたびでもあるので14:40に出発することにする。

井川スキー場

 駐車場から県道に出る坂は。小さな信号で片側通行となっている。 静岡側から来るときはよいのだが、坂をあがって、井川側に行く場合は進入口での切り返しが少し難儀をした。対向車に待ってもらい、無事県道に出る。ここからは大日峠まで上り坂。 注意して運転し、大日峠で井川湖に下りる道を分けて、そこから県民の森を目指す。 途中、井川スキー場に寄るがほとんど客もいなかった。 スキー場はオフシーズンの時期は牧場として使われているのか羊が牧舎にいた。ここは標高も高いこともあってガスに覆われていた。 スキー場から先の道路は勘行峰林道となっている。道路はところどころ落石があったりするが、笹山の駐車場までは入れるようだ。 ロッジについて、受付をし、部屋の案内・説明などを聞いて二階の部屋にあがる。 

県民の森ロッジで宿泊

ホールは天井の高い大きなつくりでテーブルがおいてあった。 部屋は4人宿泊できるベッドがあって暖房も完備。 自分たちは二号室に荷物を運び込んだあと、車で笹山の駐車場まで偵察に行く。 車で4km、10分ほどで到着。17時にロッジに戻り夕食の支度をスタート。 外のテラスチェアーをひとつ陣取ってEPIをつける。 野菜はけんちん汁用に切ったものを入れて、豆腐と肉だけが具である。ビールとチューハイを飲んでいい気分になる。  18時半に暗くなってきたので片付けて部屋に入る。 19:15に係りの人が風呂ですよと呼びに来た。 階段に登る途中の踊り場から外に出て浴場を使う。 きれいな風呂だった。 お湯もあったかく快適。長湯してあがってまた部屋で焼酎と焼き豚で寝酒。  21時に就寝。 

笹山登山口の雲海

5月26日(日)4:30起床。 雨天時用の炊事場でEPIをつけて湯をわかし、カップうどんをつくる。6時丁度に車を出発させて慎重に運転して笹山の駐車場へ。朝起きたときには低い雲がたれこめていて視界がなかったが、6時を過ぎてからは朝日が差すようになり笹山に着くころには山並みが見えるようになってきた。6:15駐車場到着。  すでに、一台、軽自動車が駐車してあった。駐車場の裏が笹山への登山口になっていたので、そのまま坂をあがっていく。6:37出発。  停めてある車を見下ろしながら標高を上げていく。 途中でベンチがあって、西に3年前に登った大無間山が見えている。 なかなかいい天気になってきた。

笹山山頂

 ベンチに腰掛けて一息ついたあと、北へ進む尾根をあがる。 すぐに、笹山の山頂に到着。 7:01。 山頂には三角点があって、東には富士山の勇壮な姿が見えていた。 山頂の木でできたベンチに腰掛けてお菓子を頬張る。 7:09出発。 道はここから境界尾根の標識を見ながら北に進むが、笹山駐車場から笹山までは登っても、そこから先に行く人は少ないのか、踏み跡はさほどはっきりしていない。 基本は樹林の中であるが、ところどころ赤いテープが巻いてあるので注意して歩いていれば道を間違えることがない。 登山道わきに、「大ブナ(25m)」という表示があったので、ちょっと外れていってみる。 確かに樹齢の長いと思われるおおきなブナが東側の斜面に生えている。 

奥笹山で休憩

  さらに道を進むとやがてルートはじぐざぐを切って東側の斜面を鞍部に下りるようになった。下り切ったところが牛首峠であった。 ここで車道と合流している。 工事用の飯場がある。7:39牛首峠からはやせた尾根を木の根の間に足を置いて登っていく。 結構な急登である。 今日一番つらい場所だった。 地図で見ると登りきった1758mからはほぼ平坦な道が続いているようなので、あと15分といいながらがんばる。 8:09平坦な場所まであがりきる。 ここにアンテナのような建造物があるのが見えた、ルートは東に進んだあと曲がって少し北北西にまいていくと、奥笹山の標識があった。名前の無い山は寂しいので笹山の奥なので奥笹山と名づけようと書いてある。休憩して水を飲む。 8:14出発。 

百畳平

 ここからは快適な林の中のほぼ平坦な道である。どこを歩いても行けそうだが、踏み跡はさほど明瞭でもないので、残雪期はルート間違いに要注意である。 境界尾根の標識と赤いテープを頼りにハイキング気分で進む。 やがて少し下って残雪の雪渓跡のようなくぼ地を抜けてあがったところに、猪の段の分岐があった。 ここから5分ほど西に下ると先ほどの勧行峰林道に出るようだ。猪の段は標識があったが特に広くなっているというわけでもない。さらに進むと、樹林が切れて笹原の中の台地に下りていく場所に出た。 ここも雪のたまって池のようになった場所だろうが、底面の土の目が粗いために水がたまっておらずくぼ地となったようなところである。 ここが百畳平である。

市営山伏小屋

 9:07 空は申し分のない晴れの天気になっている。 道標があって、ここから西に行く踏み跡があったが行き先の表示はなかった。 おそらくこの踏み跡をたどって西に下ると百畳峠の駐車場に出るのであろう。 帰りはこの車道を歩くルートをとることにする。 百畳平で休むのに丁度いい時間にはなったが、あと10分歩くと山伏小屋があるということなのでがんばって進むことにする。 百畳平からは見晴らしのいいカヤトと尾根をゆっくりとあがっていく。 やがて、ルート上に分岐があり北西に行くと山伏小屋があるという表示だったのでそちらのほうに進んでみる。静岡市営の山伏小屋は稜線から3分ほど下った谷筋にひっそりとたたずんでいた。 古いつくり小屋ではあるが、扉を開けて中に入ると20名ほどは楽に寝られる土間のスペースがあった。 記録帳を見てみると、昨年の9月に何名かの方の宿泊の記録があったが、今年の1月3日に宿泊した人と思われるものの1行あった。 「外の気温マイナス19度、小屋の中の気温マイナス12度」 どえらい温度である。 おそらく、これを書いた人もあまり長い時間手を手袋から出していたくなかったのだろう。 たった1行その言葉しかなかった。 直近ではGWに数名の方の記載があった。 

山頂への登り

  小屋を出ると、今日、初めて登山者の方に遭遇した。 ご夫婦連れの笹山の駐車場に軽自動車を駐車されていた先行者の方だった。 もう下山するところらしい。 ここから山頂まではすぐですよと教えてくれた。9:22山伏小屋出発。 すぐとは言っても、まだ標高で150mほどあるので30分ほどはかかるであろう。 途中で西日陰沢からのルートと合流して、そこからは道がかなり明瞭になっていた。 やはり梅が島から登るこの西日陰沢コースはメジャーなのであろう。 山伏の山頂直下は木がなくなって気持ちよい笹の原っぱにはっていた。 途中、ヤナギランの植生を守るための木道と鹿の食害を避けるためのネットとが張った遊歩道があったが、そちらはあとで行くことにしてまずは山頂を目指す。 

山伏山頂

 9:50、山伏の山頂到着。 広い山頂には登山者は誰もいなかった。 三角点のすぐ前にポンチョをしいて昼食を食べることにする。 持ってきたノンアルコールビールでまずは乾杯。 暑くも寒くもなくちょうどよい気候だ。 ただ、日差しはそこそこ強そうなので日焼け止めクリームは念入りに塗りなおしをしておいた。EPIをつけて1Lの湯を沸かす。 昼食にはカップ焼きそば。  食事中に小河内山のほうから単独行の人が到着したが、山頂で休むこともなく下山していった。 早い時間からこの山に登って小河内山に偵察にいっていた人かもしれない。少し山頂から西の笹の中に行くと南アルプスの大パノラマが広がっていた。 青薙山とその稜線の先に北側には、笊ヶ岳が見えていた。 もう山頂には残雪はないようだったが、そびえたった頂は登りがいのありそうな高度感である。その奥には真っ白な荒川岳と青薙山をはさんで赤石岳が見えている。 さらにそこから南に目を向けると、聖岳のたくましい姿がある。 ぐっと切れ込んだ聖平の峠を挟んで稜線をあがると上河内岳。なるほど上河内岳から聖岳の素晴らしい展望写真を撮ることができた位置関係がはっきりとわかった。

南アルプスの展望

  恒例のパノラマ動画と撮影して、一応、東の景色(もう太陽が照り付けてガスもでていて富士山の展望はない。)も写真に撮影して10:37に山頂出発。 下山を開始して3名ほどの登山者とすれ違うが、一応、ヤナギランの群生地を見てみようと思って木道に入ってみた。 ヤナギランは咲いていなかったが、木道を進むとそのまま山頂の西斜面をまいて途中の登山道に出ることができた。ここから、先ほどの少し急な坂を下りて山伏小屋のほうに下りる。 帰りに見ると登ってきた最後の坂は結構な急斜面だったことがわかった。 それでも牛首峠から奥笹山までの登りのほうが険しかったのでさほど急だと感じなかった。 下りきると右手の林に、山伏小屋から直登して合流する道が見えた。 林の中をよく見ると茶色の小屋の屋根がかすかに見えていた。 小屋との分岐を過ぎて再び急な傾斜を下りきると百畳平が見えた。 まだ午前中だというのにもうガスが上がってきていてあまり先のほうが見えない状態になっており幻想的な感じがした。 

ガレ場 真っ黒な動物と遭遇

百畳平からは来た道と異なり西にルートをとる。 ここから百畳峠まで下ることができるはずだ。峠まではわずかに15分ほどだった。 百畳峠の駐車場にはやはり道路工事の飯場があり仮設のトイレもあったので、ちょっと寄って用を足していく。 隣には仮設の給水タンクもあったので手を洗うこともできた。 方角を確認してそこから車道を歩く。最初はきれいな歩きやすい道だったが、猪の段を過ぎるあたりからところどころ土砂が流出しているところが現れてきて、なるほどこれでは通行止めになるなと納得できる。 8.5kmの札のあたりの谷筋では左手の切り立った土手から、ざらざらと石が落ちてきていた。 気をつけて通り過ぎながら、雨のあとでもないのに自然に落石があるなんて危険極まりないなと思いつつ、ふと目を上げると。。。 驚いた。 なんとやつがいるではないか。 四つ足の。真っ黒な動物が。谷筋の真下を通り過ぎて5mくらい進んでから気がついたので、斜め後ろに見る感じににはなったが、やつもじっとこちらを伺っている。目を合わせてはいけないと思いつつ、でもあわてて逃げてもいけないと思いよく顔を見ると、最初、ツキノワグマだと思ったがちょっと違うようだ。 傾斜のあるがけの上にすっくと立っている姿はたぶんニホンカモシカだ。 むこうも水を飲むためにか、他の動物が立ち寄れないような崖っぷちにえさを捕獲にきたのであろう。 安部奥が自然が豊かに残されており動物たちの天地であることをこの目で確かめることができた。(ちなみにそのあと帰りの道路で車を運転しているときにニホンザルにガードレールの上にまたがっているのを見た。)

崩落した道路

 牛首峠の前では驚くべきことに、道路がすとんと谷底に落ちていた。 歩行者ですら歩くスペースがほとんどない。 これでは自動車が通行止めになるのは当たり前である。かろうじて山側の斜面にはりついている水はけ用の樋の中を通って通過したが樋自体が落下するのではないかと気が気ではなかった。なんとか危険な箇所を渡りきって牛首峠まで到着する。 峠には「ここから先道路復旧工事中平成25年6月14日まで」と記載されていたが、とてもではないがあと3週間ですっぽり落ちている道路が元通りになるとは思えない。 おそらく予算の関係で6月14日までとしているだけで、実際には延長を続けているのだろう。牛首峠を過ぎて右手に井川湖が見えると地図には書いてあったが実際には見えなかった。 何度か曲がりくねった道路を過ぎて12:37に駐車場に到着。 もう、駐車場には15台くらい車が停まっていた。 ここから走ってパラグライダー飛行をするようでその選手とスタッフそれに観衆が集まっているようだった。着替えて12:50に車を発車させる。 昨日通った道をそのまま逆に進む。 口坂本温泉を過ぎて、細いところでPriusとすれ違う状況になって苦労した。 ナビはまったく現在地を認識せずとんでもないところを走っているように示していた。新静岡から新東名に乗り、まだ時間が少し早いから渋滞しないだろうと思ったが認識が甘かった。 厚木でやっぱり40分程度ロスをした。それでも新横浜駅には17:20に到着したので早い帰りだった。    

この笹山越えで山伏に行くルートはなかなかハイキングコースとしてお奨めである。 かつて山伏峠や百畳峠から簡単にピークにいける日本三百名山というイメージがこの山には植えつけられていたが、幸か不幸か、道路が崩壊してもっとも標高差の少ないこの笹山からのコースでも5時間以上の歩程が必要となったことでかえって山の値打ちが上がったように思うのは私だけであろうか? ちなみに、百畳峠には「山伏岳登山口」山頂標識も「山伏岳」と書かれていて、それをだれかが、「岳」の字を消している形跡があった。 標高は高いが頂上が平坦なので山の名前を変えて「岳」がはずされたらしい。 
(2013年5月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています