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爺ヶ岳
爺ヶ岳

基本情報
1 山名 爺ヶ岳(じいがだけ)
標高 2,670m (三等三角点)
山域 飛騨山脈後立山連峰
都道府県 富山・長野
位置 N36.35.18/ E137.45.02 
地図 昭文社 山と高原地図35「鹿島槍・五竜岳」
2万5千分の1地図「神城」
20万分の1地勢図「高山」
7 山岳区分 日本三百名山・甲信越百名山・信州百名山・花の百名山
登山記録
山歩No 3450-13040
登山日 2013年8月17 日(土)
歩程 8時間40分
天候 快晴
形態 前夜発小屋3泊縦走
アプローチ JR大糸線白馬駅ー川中島バス猿倉ー白馬山荘ー唐松岳頂上山荘ーキレット小屋
パーティー 2人

 爺ヶ岳の山の由来は、春先の残雪期に、麓から稜線を見ると種まき爺さんのシルエットが見えるからだという。 確かに信濃大町からよく見える位置にこの山はある。 それだけ人々の生活に密着した山なのであろう。 2013年の夏山合宿の後立山連峰の縦走の最後を飾るピークがこの爺ヶ岳である。 

冷池山荘出発

 8月17日(土)朝4:16に八峰キレットの小屋を出発した。 ヘッドランプをつけながらまだ夜が明けない暗い中をキレットの難所を越えて鹿島槍ヶ岳の山頂に立った。 鹿島槍ヶ岳の山頂では、これ以上はないというほどすばらしい北アルプスの展望を楽しむことができた。 布引山を経て冷池山荘に到着。 昼食を食べて、爺ヶ岳を目指す。 9:50出発。 小屋をバックに写真を一枚撮影。 そのあと、お花畑を縫って高度を上げる。

冷乗越

 10分で冷乗越である。冷乗越からは大谷原に下山する新道があり、こちらのほうが下山にかかる時間は少し短いのだが、H.H.氏を説得して300名山のひとつである爺ヶ岳も登ろうということになった。ここから先を進む道は爺ヶ岳までゆったりとした登りである。 1時半半ほどは辛抱の登りであるが、言い換えるとこの縦走コース最後のピークということになる。 日差しも照ってきて、後ろを振り返ると鹿島槍の東側には早くも雲がわいている。 どうしても夏の北アルプスは午後になると雲が出てきて展望が悪くなってきてしまう。 爺ヶ岳も稜線の西側はきれいに晴れているが東側はすでに雲が迫ってきている。

クマ(?)に遭遇

 乗越で3人組の登山者に追い越されてから10分くらい経ったところで、西側の樹林の中でがさごそという草を分ける音がした。 H.H氏に何か動物がいるのではないかということで気をつけるように言う。 さらに進むと爺ヶ岳の北峰に続く稜線が見えてきたが、なんと、その西側のハイマツにつかまっていた一体の動物がさっと登山道に飛び降りると、こちらに向かって走ってきた。 「やばい!クマだ!」と叫んだ瞬間、私はもと来た登山道を引き返して今苦労して登ってきた斜面を脱兎のごとく走り降りていた。 H.H氏も死に物狂いで下りた。 クマにであったときは、決して背中を向けて逃げてはいけないと登山者ガイドで聞いていたのだが、実際にその場面に遭遇してみると、まったく理論を行動に移せずにいるわれわれであった。 2-3分走っただろうか。 動物が追いかけてこないのがわかり、登山道の上で思案した。 

爺ヶ岳への登り

 H.H氏は、冷池乗越まで戻って他の登山者を待って集団で通過したほうがいいのではないかというアイデアであった。 しかし、そうやって考えてみると、今日これだけたくさんの登山者が入っている登山道の近くに臆病なツキノワグマが近づくだろうか?という疑問がわいてきた。さらに、冷池山荘の登山情報でも、遠見尾根付近に現れたクマの目撃情報には触れていたが、この爺ヶ岳付近にクマの目撃があったとは一言も書いていなかった。 冷静に考えると私が見た黒い動物はクマではなく、サルかカモシカかもしれないと思い始めた。 結局、先に進むしか下山するすべがない以上、進んでみることにした。 果たして、先ほど、がそごそと樹林の中で何者かが動く音がいた地点では、木につかまっているニホンザルを見つけることができた。 サルは群れて行動するので他にも個体がいるのだろう。実際、私がクマがいると思ったあたりの登山道にうずくまっている大きなオスザルがいた。やはり、自分の勘違いだった。 これで安心だ。ストックをならしてサルを追い払って、登山道を先に進む。  

爺ヶ岳山頂(中峰)

 爺ヶ岳の北峰の下の平たいところで10:55に休憩。 中峰が最高峰だと思われるが、山頂に人がたくさんいるのは南峰のほうだ。 中峰は次第に雲が通過し始めている。北峰には登路はないのでそのまま5分の休憩を終えて歩き出したときもスキップしてトラバースしていく。11時出発。中峰へのは巻いていく道もあったが、山頂を経由する場合は稜線に沿って、小さな分岐道標の示す踏み跡をあがっていく。 11:32に中峰の山頂到着。 残念ながら、東側はすでに雲がわいていたが、それでもまだ鹿島槍ヶ岳の姿を見ることができた。 山頂には三角点があって3人くらいが休んでいた。 爺ヶ岳の最高峰であるが、比較的静かである。 鞍部をはさんで反対側の西に南峰の山頂が見えているがそちらはどうみても15人くらいの登山者がいる。 もしかすると種池山荘から鹿島槍ヶ岳を目指す人は爺ヶ岳の山頂を南峰だと思って、本当の最高峰であり三角点のあるこの中峰をスキップしてしまったいるのではないだろうか? 事実、南峰にいた人で縦走路を中峰を経由せずに冷池方面に向かう人たちが何人も見えた。 もったいないことである。

爺ヶ岳南峰

  爺ヶ岳の山頂で再びビスケットをほおばる。 ひとしきり写真を撮ったあと、11:40出発。 鞍部まで下りてそこから南峰を目指す。 仮に南峰をまいたとしてもあまり近道にならないようなのでさほど苦にならず稜線上を進んでいくことができた。 もっとも本来の南峰山頂に至るルートは稜線伝いではないのだが踏み跡があったのでそちらがルートだと思ってしまった。 12:05に南峰の山頂に到着。 種池山荘が手を伸ばせば届きそうな距離に見えた。 山頂標識を入れて剣岳をバックに写真を撮った。 種池山荘まで行ってしまうともう剣岳の姿が見えなくなってしまう。 

種池山荘

 12:08南峰を後にする。 これで3泊4日のコースの目的のピークをすべて踏んだことになる。 なだらかな歩きやすい道を下って種池山荘へ向かう。途中きれいなお花畑の中を通る。 ウルップソウを入れて爺ヶ岳の写真を撮った。 種池山荘についてベンチに腰掛けて休憩をする。 やっと携帯電話が入ったのでえきねっとで帰りの松本からの特急の指定席を予約する。 はるか眼下には扇沢が見えた。小屋の前で飲んだコーヒーは格別にうまかった。 13:20に出発。 ここからコースタイムは3時間だから5:55の最終バスには余裕で乗れるだろう。 願わくばもっと早いバスに乗れて風呂に入る時間があるといいのだが。 

柏原新道ガレバ

 柏原新道は歩きやすい道だった。 途中までは、傾斜もゆるやかで、ガレ場の通過だけは雪渓を横切らないといけないところがあったりして神経を使った。 大きな曲がり角ごとに、「滝見岬」などの名前がついており、黄色い場所標識がついている。 きっと種池山荘の方が、道に迷ったり歩けなくなったりした登山者がお互い連絡を取ったり、救助を求めたりする際の目印にするためにつけたのだろう。 案の定、われわれも下山途中ですれ違った中高年の3人組登山者に、仲間が下10分くらい遅れたところにいるはずだから、先に小屋に行っていると伝令してくれ、などという伝書鳩を仰せつかってしまった。

見晴ケルン

 ケルンを過ぎてからは扇沢が見えてくる。 後を振り返ると種池山荘が見える。 先が見えるというのは登っている人にとってはかえってつらいのか。 種池山荘から扇沢までの下りは標高差で1000mほどあるのでつらいだろうと覚悟をしていたが、柏原新道がうまく作られており、思ったほど傾斜が急でなかったことから快調なペースで降りることができた。 最後に唐松岳の頂上であった白いヘルメットの男性に追いついた。 彼も最終のあずさには乗って東京まで帰るという。標高差であと50mくらいになると沢の音が聞こえてきた。 扇沢はなんといっても立山・黒部アルペンルートの拠点である。 この季節人も多いはずだ。 

扇沢

 15:45に柏原新道の入り口に下山。 客待ちのタクシーが一台停まっていた。 運転手さんにカメラのシャッターを押してもらった。そこから歩いて15分で扇沢に到着した。 ここに来るのは登山では3回目だ。 おととし針ノ木岳に登って雨の中を下山してきて以来だ。 やはりお盆のシーズンだということもあり立山・黒部アルペンルートを訪れる観光客で駐車場はいっぱいだった。 臨時の駐車場もオープンしていた。16時扇沢発大町行きのバスに飛び乗って大町の駅前でビールを買って17:19発の電車に乗り込む。 松本に18:09に到着して大阪に帰るH.H氏とはそこで分かれた。 自分は松本駅の西口から歩いて10分ほどのところの日帰り温泉に入り、20時の最終のスーパーあずさに乗って帰った。 夜行3泊4日の充実した夏山合宿は閉幕した。


 日本百名山を3つ、300名山を2つめぐる山旅が終わった。 昨年、雨天順延で今年に先送りした甲斐もあり素晴らしい天気に恵まれた。 唐松岳を除いて2度目の登山である山ばかりだったが、前回展望を見ることができなかった山での景色に恵まれて素晴らしい写真を撮ることができた。 夏山の素晴らしさをつくづくと痛感した。
(2013年8月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています