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基本情報
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山名 |
笠ヶ岳(かさがたけ) |
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標高 |
2076m (二等三角点) |
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山域 |
志賀高原周辺 |
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都道府県 |
長野県 |
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位置 |
N36.40.36/ E138.28.53 |
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地図 |
昭文社 山と高原地図17「志賀高原」
2万5千分の1地図「中野東部」
20万分の1地勢図「高田」 |
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山岳区分 |
日本三百名山・信州百名山 |
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登山記録
山歩No |
3370-13008
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登山日 |
2013年3月9 日(土) |
歩程 |
4間30分 |
天候 |
曇り |
形態 |
前夜発日帰り |
アプローチ |
長野電鉄信州中野駅より長野電鉄バス硯川 |
パーティー |
1人 |
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山スキーを好む方のホームページ・ブログを見て、2011年から志賀高原から笠ヶ岳を登頂して山田温泉に滑り下りるツアーコースに目をつけていた。 2012年の3-4月もチャンスがあればと思っていたのだが、あいにく週末に天気が悪いことが多く、翌年に繰越という結果になっていた。 2012から2013年の冬は結構温度が低く、雪も多い厳冬だったのだが、3月に入って急に気温が上がってきた。 3月4日(月)の天気予報で「次の週末は気温が高くお出かけ日和になるでしょう」という週間予報が出たとたん、いても他ってもいられずに2年越しの志賀高原ツアーに出ることを決意した。。 |
東横線渋谷駅(移転直前)
3月5日(火)、会社の昼休みに3社のスキーツアー会社に電話をしてみるが、やはり、皆考えることは同じようだ。 雪を求めて色めきたったのか、志賀高原行きバスはどれも満席で予約ができない。 路線バスで長野まで行って、駅で仮眠してでもいく覚悟を決めてだめもとで翌日3月6日(水)の夕方再びスキーツアー会社に電話をすると、運よく、キャンセルがでていたようで、池袋発志賀高原行きに予約が入れられた。3月8日(金)18時前に会社を出て19:00に家に帰る。 そそくさと夕食を済ませてテレビでワールドベースボールクラシックの台湾戦をやっていたので気になったが、4回の攻防まで見て、21時に出発、あと一週間で地下に移転してしまう東横線の渋谷駅へ。 たくさんの人が写真を撮っているのに混じって自分も記念に1枚。 渋谷から副都心線に乗り換えて池袋には22時に到着した。地下通路で移動し人の流れに従ってサンシャインシティーの方へ。 ツアー会社の簡易カウンターで受付を済ませ。しばらく待っていたら、自分の乗るバスが入線 WBCの台湾との試合が気になったのでワンセグのテレビのスイッチを入れたら同点の3-3に追いついていた。 23時の定刻にバスは発車したが、しばらくはまだ試合続いていた。 24時前にやっとゲームセット。緊迫した試合は4-3で日本の逆転勝ちで終わった。 |
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志賀高原ほたる温泉バス下車
24時すぎに高坂SAで休憩したのでウイスキーを水飲み場の水で割って日本野球チームの勝利にかこつけて寝酒に飲む。そのあと、横川SA、小布施PAでも休んだが足元狭い車内ながらいい気分で夢の中へ移動した。 3月9日(土)朝6:00にまもなく志賀高原に到着というアナウンスを聞く。 木戸池の停留所を過ぎて、次はほたる温泉だというのでふとみると、車内はもう後ろ半分しか客が乗っていなかった。 予定より1時間近く早く、バスはほたる池温泉に到着した。 ここはバス停は硯川、雪崩のあった前山スキー場の真ん前である。 時間が早いので、ホテルサンハイツの中に入り、地下の大広間で休憩させてもらう。何しろまだ時間が早すぎる。トイレをすませてから昨晩池袋で買っておいたおにぎりをほおばり仮眠しておくことにした。 他の場所からのスキーバスで来た客で10名ほどの人数になった大広間で、7:40そろそろスキーに出かけようとする人たちのガサガサと準備する音で起きる。8:20にホテルハイツを出て歩いて熊ノ湯スキー場へ。
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熊ノ湯スキー場第二リフト
リフト券売り場で第二リフトの1回券を440円で購入。 売り場の女性が登山をするならパトロールセンターによって登山届を出してくださいというので、そこで持ってきた計画書を提出。 パトロールの方に聞いてみると新雪が降ったらしくて前の登山者のトレースがあるかどうかは不明。 普通の人の足ならば、途中で昼食を摂って山田温泉まで抜けるツアーコースを5時間くらいで行くでしょう、とのこと。 一番気になった雪崩の被害について聞いてみると過去には一度、ツアーに出た人がルートを間違えて、雪庇を踏み抜いて雪崩に埋もれ動けなくなって救助に出たことがあるという。 やはりルートファインディングには要注意だ。 パトロールの方も今日は視界が効くから大丈夫でしょう、と楽観的。 とはいうものの、下山したら一報連絡を入れてくださいと、熊ノ湯リフトの会社の電話番号を教えられた。動き始めてまだほとんど客のいない第二リフトに乗り込む。 このリフトは中間駅があり、初心者はここから降りて緩斜面のみを滑るようになっている。 自分はもちろん、登山が目的で横手山と尾根続きの稜線に出るために終点まで乗っていく。 |
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笠ヶ岳への稜線とトラバース地点
樹林の中は気持ちのよい緩斜面で、木もそんなに茂っていないので、衝突する危険もない。 やがて鞍部と思われるところに到着した。 1-2週間以上前と思われるが誰かのトレースでかすかに残っている。 鞍部からは緩いの登りになっているのだが、もしかするとゲレンデスキーで足を伸ばしてきた方のものかもしれない。案の定5分も進むとトレースはもはや消えていた。 9:59にここより先は苦しくなってきたので、木の陰に腰を下ろしてリュックからシールを出して念入りにスキーの裏面に貼り付ける。10:05樹林の中を再び歩き出す。 ずいぶん笠ヶ岳の急斜面が近づいてきた。 もちろん、正面の断崖のようなところは登れるはずもないので山の北側をトラバースしなければならない。ただ、どこからトラバースを始めるべきか前人のトレースもないのでよくわからない。おおよその勘で10:11方向を北西に変えて行く。正直、気温が上がり始めているので、雪原をトラバースするのに恐怖心を覚えた。 スコップを持ってこなかったので弱層テストはしていない。 おそらく表面の雪はしまっているように見えるは中はどうなっているかわからないので、万一自分の歩行が原因で面崩れを起こして雪崩たら、と思うと雪原を横切りことができなかった。山頂直下は北向き斜面だとは言え、傾斜も40度を超えており、雪崩は怖い。 |
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クラシックツアールートの札
むしろ、歩行には邪魔になっても樹林のある部分を横切るほうが雪崩の危険は少ない。 やはり、安全策をとった代償に、低木をよけるためには、上に登ったり、下にもぐったりをしながら苦労しつつ進む。おかげで時間はどんどん過ぎていく。
10:49このあたりが山の真北だろうと思われるところに着いた。 木にくくられた赤いテープを見つける。しめた、誰かがこのルートは通っているようだ。 11:00に古いトレースを発見。ここで本来のツアーコースに戻ったようだ。木に鉄板のツアーコース標識で西方向が山田温泉だとかかれた札がついていた。ツアーコースとはいうものの、樹林の中の斜面を進むので通過は楽ではないが、40mほど下には林道と思われる道路が雪をかぶった状態ではあるが見えてきたので安心できた。平行に進んでいくとやがて登ってきた林道に合流。 しばらく林道を歩いて11:13ようやく峠の茶屋に到着。ここは、熊の湯への林道と山田牧場からの林道と横手山方面への林道との三叉路になっているところである。 もちろん、林道は残雪がいっぱいで車が通る余地はない。
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峠の茶屋
リュックを下ろして、サラミソーセージを出して腹に入れる。誰もいない静かな峠だと思ったら、200mほど先の斜面に単独で休憩している単独の男性が見えた。 11:21出発。自分が出発した直後、キャタピラの音が聞こえて山田牧場スキー場方面の林道を雪上車が上がってきた。 運転主に遠めに挨拶をすると峠についた雪上車から、5-6名のスキー客が降りてきた。 どうやら、山田牧場スキー場からのバックカントリーツアーのようだ。 今日は天気がいいからオフピステエリアを滑るのは楽しいだろう。 私もあとからこの斜面を滑るわけだが、その前にまず、あと標高150m登って笠ヶ岳の頂上を踏まなければ。。峠からの登りは最初はスキーを履いてシールを聞かせてジグザグを切って登っていったが、50mほどあがったところで樹林が出始め、傾斜も急になってシールが効かなくなってきた。11:28板をはずしてつぼ足であろこうとするが、さあ、大変。内部の雪は相当柔らかくなっているようで、膝上まで簡単にもぐってしまう。 夏道ルートの鎖場が見えたが、そこを誰からが歩いている踏み跡もなさそうだ。 第一夏道まで出るまでに太ももまで雪にもぐってしまいとても前に進めない。 樹林の濃い日陰の比較的雪の固い斜面を選んでなんとか登り、11:52スキー板をデポ。自分の先にも、誰かが青い板をデポしている。 |
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山頂への急登、苦しいラッセル
とりあえずその方向に向いてつぼ足で登っていると、単独の男性が降りてきた。 青い板の持ち主はこの方のようだ。 きちんとヘルメットもかぶっている。本格的に山スキーをやっている方のようで足取りもしっかりしていた。 こんにちわと挨拶をしてすれ違い、その方がラッセルした踏み跡を使わせていただく。ああ、足が膝上までうもれなくなったというのはなんて楽なんだ。それでも踏み固めた雪はその方の足跡だけのようで、自分が踏むとやわらかい雪にステップが崩れて脱出に往生するという箇所が数箇所あった。峠を出発してからもうかれこれ40分も苦労しながら歩いている。12:01苦しくて立ち止まる。本来の行動予定では正午に昼食を食べ終わって山頂を出発するくらいのつもりだったので相当に計画よりビハインドなスケジュールだ。ザックの中身はアイゼンとツエルトと着替えと食料が少しと大して入っていないのにかなり重く感じる。5月に北海道に山スキーに行くときにはもっと軽量化をしなければ体力がついていかない。 ぜえぜえいいながら、それでも樹林が薄くなって青空が見えている。 山頂に近づいているのを感じる。
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笠ヶ岳山頂
山頂から20mほどは雪の稜線になり、もはや両側に高い木はなくなった。 山頂に積まれたケルンが見える。 あと30歩だと自分を励ましながら最後の急登を進む。 12:32山頂到着。狭い山頂にはだれもいなかった。 本来の夏道は自分が登ってきた側と反対の北側からついているように思えた。 自分は本来は夏だと絶壁になっていて登れない南西稜に積もっている雪を踏んで登ってきたようだった。 さあ、すぐに食事にとりかかろう。 EPIのガスに火をつける。今日は車でないので、遠慮なく飲めると、じぶんへのご褒美の缶チューハイをリュックから出して、あられをつまみに食べ始める。山頂はさすがに少し風があって、EPIに火が一度消えてしまったが、気温はさほど低くない。 数度あるのではないだろうか。 予報では長野市の最高気温が14度となっていた。 下にダウンを着なくても寒さに震えるということもなかった。 むしろ、日焼けを気にして日焼け止めの塗りなおしをした。15分かかったがお湯が沸いたのでラーメンを作って食べる。
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横手山展望
東側には横手山が見えていた。 山全体がスキー場なので熊の湯のほうに向かってゲレンデが見えていたが、南側の峠側は土色の地肌がむき出しになっていた。 ここ数日の高い気温のせいで融雪が進んでいるようである。 西側に目をやると北信五岳が見えたが、黄砂の影響かかすんで見えていた。 朝、あれだけはっきり見えていた北アルプスももうぼんやりして山座同定をすることは難しかった。 南側には黒湯山・御飯山がこちらはすっきりと見えていた。 稜線でつながっているようで、もしかするといいツアーコースかもしれないなどとも思った。 マイナーな山なので残雪時期に入る人は少ないだろうが、頂上には40分いたが、誰も上がってこなかった。 二等三角点の標識も夏場には判別できるのだろうが、雪の下に埋もれているようで影も形もなかった。13:15下山開始。前にいた青いスキーの人の往復と自分の片道とのステップがあったので、今度は比較的楽に下りることができた。 それでもピッケルを持っていないので山頂直下の樹林のない雪稜は滑らぬように慎重に進んだ。 |
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山田牧場への林道下り
自分のスキーをデポしたところまでおりて、そのまま小脇にかかえて下りる。 ショートスキーはこのあたりの融通が利いて助かる。スキーをはいたら3-4ターンくらいはして下りられるのだろうが、斜面でシールをはがす手間も煩わしく、そのままつぼ足で峠の茶屋まで下りる。 帰りは以外に順調に進んだ。 13:38峠の茶屋に到着。水を補給して、シールをたたんで出発準備。小屋の脇には、先ほどの人たちが荷物をデポしたのか雪の中に何かを埋めてあるのが見えた。 13:54出発。ここからは方角はほぼ西に進むことになる。 コンパスを出して目標となる稜線を確認する。 どうよら山田牧場へと続く林道を進むのが一番間違いなさそうだ。 気温が上がって雪がべたついているかと思いきや、やはりそこそこ標高が高いせいであろう、緩い斜面でもスキーは進んだ。以前、鷲ヶ岳の下りで林道でスキーが進まなくて苦労したことがあるが今回はその心配はなさそうだ。 林道の途中のカーブミラーはその高さの半分以上雪にうもれていた。
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ヤマボクスキー場タコチコース入口
14:00奥山田から麓の七味温泉の谷に下りる林道との分岐がある。看板にここは遭難多発地帯なので進入禁止という警告が記載されていた。さらに林道を進むと、山田牧場スキー場が見えてきた。 標高が高いのでパウダーの雪質が売り物のスキー場だ。リフト最上部から下りて林道を進む。 と右手にタコチコースのゲートが見えてきた。ゲートには、「この先タコチコースの入り口は中・上級者コース」「初心者は200m先の入り口から入れ」と書いてある。 あまり気にすることなく14:15に突入した。最後まで滑ると約1時間かかるということだ。 最初は林があって狭いがやがて広い気持ちのいいコースが広がった。 斜度も険しすぎず緩すぎず快適なスロープ。 思わず万歳してヤッホーと叫びたくなる。 5名ほどの若者グループが合流してきたが他に滑る人もない。広々とした斜面はどこを滑っても同じところに出るようにできていて、次第に高度を下げながら鎌田川に沿った林道に入っていく。
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タコチコース13㎞のダウンヒル
林道と出会ってからは、林道を滑ることもできるし、ショートカットで林道をクロスすることもできる。 クロスする場合は林道を滑る人に衝突しないように、一時停止の標識がある。 5名の若者とずいぶん距離をつけた今は自分の周りは誰も滑る人もなく、ゲレンデ独占という状態なので、すいすい進む。 林道を重力に任せて滑っているときは、見半分腰をかがめているので、やたら背中のリュックの重みが太ももにかかる気がして途中何度か停まってしまった。 トレースにしたがって滑っていると終点まで4kmの表示が現れた。前長13kmと言われているのでもう3分の2を終了したことになる。14:50ルートの横に避難小屋が現れた。 荒天の場合を想定しての配慮だろう。きれいな小屋だった。 屋根の雪は60cmくらいだった。林道はやがて傾斜が緩やかとなり、森林浴コースの看板が現れたところでタコチコースは終点。
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山田温泉スキー場
最後川沿いの登りの道が待っていたが、そこは日射で雪が融けて氷の状態になっていたので思わず滑って転んでしまった。15:08板をはずして、兼用靴でエッチラオッチラと緩い登り坂をあがっていく。 曲がり角の土手の上が牧場になっていて、積雪の放牧地の上に1頭の乳牛が草を啄ばんでいたのには驚いた。15:18、ちびっこゲレンデの山田温泉スキー場。山田牧場スキー場と経営が同じなので、上のヤマボクから降りて来た人は普通、ここからシャトルバスで再び上に戻るらしい。 自分の場合は、山田温泉の路線バス停留所まで行く必要があるので、登山道のようなところに雪がかぶさった細い路をさらに1km、再びスキーを履いてゆっくりすべり下りていった。人家に入る手前に熊よけの鈴がぶら下げてあったので、下山を祝して盛大に鳴らしてみた。 澄んだ音がした。15:35山田温泉に到着。温泉旅館の係りの人が道路に出ていたので、長野電鉄バスの停留所を聞くと意外に近く、広場の火の見やぐらの下だった。
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村営大湯
いったんバス停まで行くとその隣が村営の共同浴場だったのでバスの出発時刻までの25分を利用して一風呂浴びようと、あわてて荷物を開けて着替えをとり建物に中へ。 帰ろうとしていた男性のお客さんが兼用靴で入ってきたのを見て「スキーで降りてきたのかい? 勇ましいな!」と声をかけてくれた。300円受付で払って浴場へ。 シャワーなどというしゃれたものはないが、檜作りの情緒のあるお湯だった。 45度くらいの気持ちのいい湯に5分だけつかって、そそくさとあがって再びパッキング。 16:15須坂行きのバスに乗車。お客さんは5名ほど。 リンゴ園を抜けて西へ進む。 正面には翳り始めた春の日差しに、飯縄山と黒姫山の雄大な姿が映っていた。16:52須坂駅に到着しバス下車。ここから長野電鉄に25分ゆられて長野駅に出る。長野駅で弁当とビールを買い18時の新宿行きの高速バスの中でありがたくいただいた。前夜の夜行バス乗車の疲れもあって、食後すぐに寝てしまったが、途中、横川で休んでからほぼ定刻どおり21:40に新宿駅西口に到着した。信州へのバスの旅も久しぶりだったが充実した一日だった。
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単独行のスキーツアーも考えてみると3月に上旬に出かけたというのはここ数年記憶にない。志賀高原という日本を代表するスキー場という場所柄、積雪が深いというのは覚悟していたが、ここまでラッセルに苦しめられるとは。 しかしながら天気がよく暖かかったことで素晴らしいツアーを楽しむことができた。 晴天の下滑ったタコチコースも味わい深くぜひ再訪したい場所の一つに数えることになった。
(2013年3月 記) |
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