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笹ヶ峰
笹ヶ峰

基本情報
1 山名 笹ヶ峰 (ささがみね)
標高 1859m (一等三角点補点)
山域 石鎚山地
都道府県 愛媛県・高知県
位置 N33.49.41/ E133.16.28 
地図 昭文社 山と高原地図54「石鎚・四国剣山」
2万5千分の1地図「日ノ浦」
20万分の1地勢図「高知」
7 山岳区分 日本二百名山、四国百名山
登山記録
山歩No 2920-12050
登山日 2012年11月25 日(日)
歩程 8時間45分(伊予富士含む)
天候 晴れ
形態 小屋1泊(瓶ヶ森+笹ヶ峰)
アプローチ 国道194号ー寒風トンネル
パーティー 1人

勤労感謝の日の連休を利用して、石鎚山・瓶ヶ森・伊予富士・笹ヶ峰・東赤石山と一挙にこの四国山地の名山を廻ろうという計画を立てた。 23日(金)の夜行バスに乗り延々と11時間ゆられて松山にやってきた。 昨日は雪雲に巻かれながら登った石鎚山である。本日は朝の瓶ヶ森、昼に伊予富士を登った。 今日の仕上げは、二百名山の笹ヶ峰である。さすがにアプローチに車を使っているとはいえ、1日に3山は結構ハードだ。 寒風峠をベースにした伊予富士と笹ヶ峰の両方の山のピストンでも歩程8時間45分になっている。朝瓶ヶ森に登ってなおかつ伊予富士と笹ヶ峰の両方を登るというのは中高年の単独登山としては少々無理な計画であるが天気が安定しているのをいいことに強行してしまった。

桑瀬峠より寒風山を目差す。

 11月25日(日) 伊予富士を登った後、桑瀬峠を出発したのが13:25。 最初は、伊予富士に登ったときと同様、展望のよい笹の中の稜線歩きだ。登山する人はほとんどなく下山の人とすれ違うことが多い。 今日は天気がよかったので、寒風山方面から下りてくる人はこころなしか皆満足した顔に思われる。 13:40樹林の中を寒風山への険しい登りに入っていく。 標高をかせぐようになるとやがて道は、やせた尾根道になってゆき正面の岩稜に向かって鉄梯子も現れる。 鉄梯子を3つ越えて岩稜をトラバースするようにまわると稜線の東側に出た。

寒風山

 ここから少しずつ高度をあげていき、14:27に寒風山の頂上に到着。 頂上は広くなっており東側の眺めがよく見える。 山頂に単独の人と、1組の家族連れがいたが、もう下山するという雰囲気だった。今回初めて買ったハイドレーションで給水。 少しずつ水を摂る方が有効だと聞いていたが確かにのどの渇きは治まった。山頂に標識があり、ここから笹ヶ峰まで1時間20分、帰りは1時間15分という表示だった。 これでは山頂に着いたら4時近くなってしまいそうだ。 

笹ヶ峰への縦走路

 寒風山14:29出発。正面には今日最後に登る峰である笹ヶ峰が見えている。 この山名はなだらかな山頂部が一面のシコクザサに覆われていることに由来するらしい。 わずか3分の休憩で出発。 家族連れが驚いて見ている視線を背後に感じながら笹ヶ峰へ向けて下り始める。 最初は北斜面なので、意外に残雪があり、滑りやすい。ロープにつかまりながら慎重に下る。15時に鞍部と思しきところまできた。 ここから55分という記載が看板にある。 岩を目差して進むとそこをまわって稜線の西側に出た。 そこからは笹の中の道、笹ヶ峰のピークと見られる峰を右手に見ながら大きく時計周りに回り込んでいく。 途中、笹が深くてルートを見失いそうなところでは樹木に赤テープがまいていあるので迷うことなく進むことができた。 
 

笹ヶ峰山頂到着

 最後に丸山荘への下山口との分岐をすぎるとのっぺり平らな笹ヶ峰の山頂。 15:47到着。 東側の平家平の方向には雲が上がってきており次第に見通しは悪くなりかけていた。北の方向はまだ雲に覆われておらず、標高1691mの沓掛山が傾いてきた太陽の日ざしを浴びてやはり笹に覆われているであろう山頂の姿を見せていた。 かつて笹ヶ峰の山頂の東側には四国電力のマイクロウェイブの反射板が建っていたが、通信衛星に役目を譲り1997年に役目を終えて撤去されたという。 どこがその跡地なのははっきりとはわからなかった。 山頂には、三角点がありその横には祠がある。 祠は面白いことに北側に向かっている部分にエビのしっぱが着いていた。 やはり、昨晩の雲はこのあたりにも雪を降らせたのであろう。 

山頂単独登頂写真

さらに祠の隣に「笹ヶ峰自然環境保全地域」の立て札がある。 笹ヶ峰は1,700m以上ではシコクシラベ、コメツツジ、および山頂付近はシコクザサ群落に覆われ、稜線沿いにはアケボノツツジやシャクナゲ群落も点在する
冷温帯の植物の宝庫だという。1955年に石鎚山国定公園が定められた際に豊かな自然環境であるにもかかわらず桑瀬峠より東側の笹ヶ峰などが国定公園の指定から外れたのは、指定当時、厚生省は笹ヶ峰を含む平家平までの範囲を主張していたものの、桑瀬峠直下で基安鉱山を稼行していた住友金属鉱山、この地域に広大な森林を所有する住友林業および高知営林局が反対した背景があったとされる。山頂は確かに、伊予富士山頂で話しをした2人組の女性が言うとおり風が強かった。 風速8-9mはあったのではないだろうか? セルフタイマーをセットしてカメラで写真を撮るときにも2度ほどカメラが倒れて失敗してしまった。

沓掛山方面遠望

  こんな時間では山頂に他の登山者もいないので、登頂証拠写真は自分で撮るしかない。 今年5月にダウラギリ峰を登頂して日本人で初めて14座全山登頂した竹内洋岳氏もこうやってたった一人で山頂に立って自分の影とサミットの写真を撮ったのだ。山頂から丸山荘は見えなかったが、標高300mほど下ったところにあるようだ。 収容250人という四国では最大規模の小屋で1960年代にはスキーもさかんだったそうだ。 残念ながら温暖化の影響で今スキー場としては営業していないが、四国では雪質のいいところなので自然の中のスキー場としてくる人もいるとか。 笹ヶ峰の山頂は天候気候のいいときならばずっと長居をしたい心地よい風景だった。 ただ、残念ながら今は風が強く気温も相当下がってきた。  

斜陽と寒風山

 最後に登山道から振り返りつつ写真を撮ってラジオで16時の時報を聞いて下山開始。 もうずいぶんと太陽が西に傾いている。 最初から、桑瀬峠からの下りはヘッドランプの覚悟をしていたが、この分では寒風山から先がヘッドランプとなるかもしれない。 寒風山の直下には難所もあったので、できるだけ明るいうちに通過したいと気ばかりあせる。 まずは最初の問題は、笹ヶ峰から間違いなく、寒風山へのルートに入ることである。 丸山荘との分岐はすぐにわかった。 そこから笹の中の道であるが、こちらも来るとき通った道であるので、方向感覚ははっきりしている。 幸い、山頂にやってきたガスも1昨日石鎚山を登り終えた下山時の濃霧のようなものではなく、部分的に雲が流れているという程度で寒風山のほうははっきりと肉眼で確認できる。 空の高いところには絹雲があるのでやはり天気は下り坂か? 木曜日に見た習慣予報でも、月曜日が悪天だといっていた。 明日、東赤石山を登るまで天気はもつだろうか。 そんなことを考えながら歩いていると、16時半にそろそろ太陽はまったく見えなくなった。

最後に振り返って残照の笹ヶ峰

岩場の横にたって笹ヶ峰を振り返ると、さっきまで山頂を覆っていた雲は消えており、まるで見送ってくれているかのようにたおやかな山容を見せてくれていた。 残った薄闇の残照を頼りに、鞍部から寒風山への登りにかかる。 雪が踏み固められてすべりやすくなっているところもあり、他に登山者もまったくいないので、こんなところで転落したら誰からも発見されないよななどと考えつつ慎重に登る。 17:14に寒風山到着。やっぱり、笹ヶ峰の山頂から1時間15分かかった。笹ヶ峰の山頂にあった標識どおりの時間だ。 伊予富士を登っているときはなんとかコースタイムよりも早く歩いて時間的に貯金を作ろうあせっていたが、もはや体力・気力ともに限界である。 コースタイム以上のスピードでは歩けないことを完全に悟っていた。 ここまできたら安全に下山することが第一である。寒風山から先は完全に夜の山歩きとなった。チョコレートをかじって残り少なくなった水を飲み17:19出発。  ヘッドランプをつけて慎重に歩く。稜線沿いでしかも樹林の中なので、登山道のカーブのときに慎重に次の方向を見つければ、迷うことはなかった。心配していた鉄梯子も、足元をしっかりヘッドランプで照らしながら下りてことなきを得た。    

寒風山到着ついに日没

 暗がりの中の単独下山というのは怖さはあるが、四国の山の場合安心なのは動物と遭遇する心配はほとんど無いことである。 四国山地では野生のクマは絶滅したといわれている。シカの目撃情報もほとんど無い。鼻歌でも歌いながら歩くのがよかろうと足元はヘッドランプの先を気にしながら進む。寒風山から桑瀬峠まではコースタイムは50分。 どうしても足元の悪いところは慎重にステップを確かめて降りざるをえないので慎重にならざるを得ない。 18:04に桑瀬峠到着。 もう日はとっぷりくれて薄闇さえ残っていない。 幸いだったのは左手の一の谷渓谷のほうに街灯の明かりのようなものが見えている。目差す寒風山トンネルもこの方角というのがわかっていればさほど、気にはならない。 

ヘッドランプをつけて駐車場に下山(もはや駐車車両なし)

桑瀬峠で最後にルートミスをしないように、伊予富士への登り道と、寒風トンネルへの道との分岐をしっかり確認して、(片方は上り、片方は下りだからあまり間違えようはないのだが)ルートを進む。思ったよりも直接南東に峠を下るのではなく、稜線ずたいに南西に進むので道が間違っていないかと不安になったが、途中で大きく湾曲して東に方向を変えていったので、間違いなく寒風トンネルに向かっていると確信して進む。 ルートは最後の10分がかなり急な下りで手を使っておりないといけない険しい道。確かに、午前10時半すぎにここを登ったとき、いきなり急な登りだったことを思い出した。ルートから街灯が手に取るように見えるようになると、あと駐車場までわずか。 18:35に駐車場まで到着。さきほどあれだけたくさん停まっていた車は今は一台もなく、草原に尻を突っ込んで停まっている自分のレンタカーだけがなにか不思議な感じがした。車を出発させるとほっとした。 ハイドレーションタンクの水の残量を気にしながら歩いたので急に喉が渇いてきた。 車を運転しながら麦茶をごくごくのどを鳴らしながら飲んだ。

木の香温泉立ち寄り

国道194号に降りる林道は全線舗装されており、カーブのところはかなり道幅も広くなっていたので慎重かつ大胆に運転する。ラジオでは明日はかなり強い雨が降るといっている。 東赤石山はあきらめざるを得ないのだろうか。 とりあえず、今日の行程を無事すべて歩きとおせたことで安心感が広がった。 予定通り、194号を少し高知側に行ったところにある道の駅「木の香」に到着。 20時まで入浴ができることを確認して、風呂に入ることにする。 道の駅の売店は19時半に閉店になることがわかったので先に行ってみたが、アルコール類は取り扱っていませんといわれた。 まずは風呂だ。 下駄箱に登山靴は入らないので2個分を使ってしまう。 入り口の券売機で600円の入浴券を買って奥へと進む。 この温泉は宿泊施設も持っているようで、風呂より先は宿泊棟となっているようだ。 登山者向けの素泊まりのリーズナブルな料金の設定もあると言われている。 風呂自体は、まず入ると大きな脱衣場があり、渡された鍵で衣類をしまい、浴室へ。 

木の香温泉出発ー伊予三島経由筏津へ

入り口にウオータークーラーがあったので水をがぶ飲みしてしまう。 洗い場は10個ほどあり、内湯は中から循環しているつくり。 露天風呂もあったが、外の気温があまりに低いのでなかなか入っているのがつらい状態で5分ほどでもどってきた。サウナもあるが、時間的に入っていることができなかったので7:40に上がる。 ハイドレーションのタンクに飲み水だけはいただいていくことにした。 宿泊棟の休憩室にあった自動販売機でビールとチューハイ、さらにコーラを購入してその場で牛乳を飲む。 20:30に木の香温泉を出発。 5,432mの無料で通れる一般道のトンネルとしては日本最長の寒風山トンネルを抜けて高知県いの町から愛媛県の西条側に出る。
21:10に西条のスーパーまるなかによっておかずの餃子と明日昼食に食べるカレーパンを買う。 その後、いよ西条ICから松山道に乗り、三島川之江IC経由、明日の東赤石山の登山基地である別子山を目差す。三島川之江ICを降りてトンネルを抜けると山道に入ってきた。赤石山k稜の南側に入るころには早くも雨が降り始めた。 テントを持っているとはいえ、この雨の中幕営するのはつらいなと思いつつ進む。 筏津登山口までつくころにはかなり激しい降りになってきた。 まあ、明日の天気はどうなるかわからないがとりあえず、一日の疲れが出たので、雨をしのぐことができる場所を探して車を停めて買ってきた缶ビールとチューハイを飲んで就寝。

かなり強引な計画で、最後はヘッドランプのお世話になりながら下山という結果になってしまった。 夏であれば6:30下山というのはまったく問題はないのだが、この時期はどうしても1年で1番日中の時間が短い。 どうしても行動時間の短い計画にせざるを得ない。 今回は、歩いていてなかなかスピードが上がらず、自分の歩く速度の遅さに嫌気がさしたが、振り返ってみるた決してコースタイムよりも遅れて歩いていたわけではなかった。 とにかく、無事に3つの山、200名山ひとつと300名山を2つ(合計で800名山というべきか?)を踏破することができたことに満足した。 
(2012年12月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています