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大無間山
大無間山

基本情報
1 山名 大無間山(だいむげんさん)
標高 2,329m
山域 赤石山脈南部
都道府県 静岡県
位置 N35.15.21/ E138.09.41 
地図 昭文社 山と高原地図42「塩見・赤石・聖岳」
2万5千分の1地図「畑薙湖」
20万分の1地勢図「静岡」
7 山岳区分 日本二百名山
登山記録
山歩No 26907-10022
登山日 2010年9月18 日(土)~19日(日)
歩程 第一日 4時間50分
第二日 10時間00分
天候 第一日 曇り
第二日 晴れ
形態 前日発テント1泊
アプローチ 東名高速道清水IC県道60号田代
パーティー 2人

大無間山は、南アルプスの最南端ともいえる奥深い山である。 標高2329mは光岳より260m低いものの、稜線の上では光岳の南東尾根が大無間に到達するかのごとくの山脈構造になっており、南アルプスである赤石山脈の南端といってもいいであろう。 ここは日本二百名山ながら田代からの往復に14時間50分の歩程が必要で、途中に避難小屋があるもののの水はないという制約があり、どうやっていくかというのがこれまで悩みであった。 9月の秋分の日の三連休をこれにあて、天気がよさそうな土日でアタック。 下りてきてからは無理をせず、麓の民宿に泊まるという案を目指すことにした。

出発―富士川SA

2010.09.18(土)朝4:00起床。 まだ暗いうちに家を出て4:22に近所のキグナスでガソリンを入れ、横浜青葉から高速に乗る。途中、富士川SAで、富士山の姿がきれいに見える。 清水ICで降りて7:20にコンビニで朝食のおにぎり、昼食の弁当を買って山に向かって走る。 静岡市から道は舗装してあり悪くないルートであるが、何しろ起伏がある。 南アルプスへくる玄関口ともいれるに富士見峠で車を停めて8:25トイレと朝食を済ます。 峠から、南アルプスの山が見える。そういえば、1988年に大阪から聖岳に登りに来たときも、ここから南アルプスの山々を見て感激した記憶がある。 あれからもう20年以上たってしまった。峠を越えると急な下り道。 ゆっくりおりて湖にそって走る。 井川駅ではSLを見て「折角なので機関車にのりたい」との意見も出たが、まだ観光用SLが動いていないのでそのまま、進む。 

井川湖―田代

 井川オートキャンプ場を右手に少し走ると、10台ほど停められる田代温泉の駐車場があったので、そこに車を停めて、用意をして10:21に出発。民宿「ふるさと」のおかみさんに挨拶をする。 三連休だということもあり、民宿も盛況のようだ。 民宿の裏手を回るようにして諏訪神社の水場に至りそこで水を汲む。今回のポイントは水なので、一応通常の2Lポリタンク以外に、一人2Lさらに六甲のおいしい水+2Lのお茶ボトルをかつぎあげる予定になっていた。 さすがに荷物が重い。 11;00に登山届けを出して、杉林の中をゆっくりあがっていく。 天気は曇り。 登り出しは傾斜は比較的緩やかである。 送電鉄塔があり、はそこから、次第に傾斜を増していく。11:30休憩。 11:37出発。 標高1000mを超えるあたりからは涼しくなってきた。営林署の小屋跡で12:26昼食。 買ってきたコンビニ弁当を食べる。小屋跡といても、もはや小屋は撤去されて、ただトタン板がしいてあるだけである。 12:54出発。雷段といわれる少し広くなったところを通り過ぎ 登山道は杉と檜の雑木林の中を進む。  同行者は、荷物が重いのか、時折、切り株を見つけると座ってしまう。 13:30休憩。 

小無間避難小屋-P3テント泊

 13:37出発。 次第にジグザグの登りになり、同行者から「荷物が重い!死にそうだ」と文句が出始める。「そんな荷物くらいで死ぬわけないだろ! 頑張って歩くぞ!」とたわいもなくけしかけて叱咤。 14:25に標高1630mの地点で休む。 小無間小屋は標高1800m弱の地点なので、まだ先は長い。 頑張って歩いてやっと15:20にP4の三角点に到着。 隣接する小無間小屋にはさきほどおいこしていった2人の50代くらいの男女が、もう、炊事道具や寝具を出してくつろいでいた。 ここで泊まるかどうか迷ったが、今日がんばって、できるだけ先に進んでテントを張ったほうが、明日の行動が楽なので、頑張って進むことにする。 行動食を食べて15:32、出発。 出発後10分くらいしたときに小雨が振り出した。 雨もたいしたことはなさそうなので、もう少し歩くことにする。 16:35に標高1800mのP3の頂上に到着。 頂上は、決して広くはないがテントをひとつ張るくらいのスペースがあったので、今日はここで泊まることにする。 周りは、展望もないが、樹林がそこそこあるのでかえって風よけになるであろう。 テントを張って、夕食の支度をしながら、ビールで乾杯。 炊事中、ビールをひっくりかえしてしまったので、半分以上は地面に飲ませることになった。 夕食は牛丼と味噌汁。水を節約しないといけないので、おのずと豪華とはいえないメニューになった。 天気予報ではこの3連休はよい天気だといっていたが、標高1900mのここでは厚い雲に覆われており、星も見ることができない。動物に食料をあらされると困るので、すべてテントの中に運び込んで 19:30には就寝。

鋸刃尾根-小無間山登り

 2010.09.19(日)朝4:00起床。 朝、起きたときは、真っ暗だったが、昨日の厚い雲は既に下界に下りてしまったようで、星がきれいにでている。夜は寒くも暑くもなく、蚊もでなかった。 動物や鳥の声に邪魔されることもなくゆっくり快適に寝られたといえそうだ。 朝食のうどんと山菜おこわをつくって食べて、テントを撤収して、荷物に雨よけをかけて、頂上のデポしたまま、サブザックで小無間岳へ向けて5:30に出発する。もうヘッドランプはいらない。 6:05、P2の頂上で休憩。 きのう我々は、P3でテントを張ったが、このP3も張れないことはない。WEBで見ると前日発で小無間まで行ってそこでテントを張ったグループの手記がでていたが、相当の健脚だといえそうだ。 荷が重いことを考えるとP3やP2のテントでもよいのではないだろうか? もちろん、避難小屋利用というのが安心だが、どうしても2日目の行動時間が長くなる。 我々のように足の遅いパーティーにはきのうのうちに標高1800超まで来ておいたのは意味があったといえよう。 今日は長丁場だが天気は幸い安定している。 

小無間山

 6:09にP2を出発する。P2からの下りは倒木をまたぎつつ狭くなった道を進む。 鋸刃と呼ばれる両側が切り立っており通過に注意が要る。最低鞍部から、小無間岳への登りも要注意である。   北側が崩れたところでは草つきの傾斜のあるところをゆっくりと登る。 足場はしっかしりしているが北側はざっくりと切れているので通過に気を使う。今度は小無限への登りの木の根の多い道。 そこそこの斜度があり呼吸を整えて上っていく。 7:09荷物をおろして休憩。昨日、小屋でいた2人が追い越していった。こちらのお二人も健脚である。 7:13出発。 7:42に小無間岳到着。 さきほどの2人が写真のシャッターを押してくれるために、まっていてくれた。 展望はないが休憩できるスペースがあり気持ちのいいピークである。 ビスケットを食べて、7:54出発。 そこからは思ったよりもすいすいと歩いてコースタイムより短い時間で中無間岳へ。地図の上ではここは関の沢の頭(標高2109m)となっている。 ここにくる少し手前に唐松谷の頭というところがあり、そこが南側の斜面が崩壊地になっている。 登山路からは数メートル離れているが、そこに見晴らしのいいところがあるがそこから見る大無間山は圧巻である。 

大無間山山頂

8:52尾根を乗り越えたあと、ゆっくりした登りを経て9:41に大無間岳山頂に到着。 今日、最初の登頂者となってうれしかった。 座って水をがぶ飲みする。  きのうのサイダーののみさしを持ってくるつもりだったが、忘れたので、お茶で乾杯。 2人組が追いついてきたのでいろいろ話す。 川崎から来ている蛍雪山岳会の人たちだった。お二人は十分に健脚であるが、登山道の途中からコバイケイソウを見つけて引き抜いていたようである。 動物が嘔吐するのを避けるためか。山頂は思ったよりも広くなっており、視界はないが、板をひいてかまどを作った後などがあり、おそらくこの山頂で幕営したグループが多いのだろうと予想された。ここから寸又川林道へ下りるコースもあるのだが、道がはっきりせず、最近では通る人が少ないコースとなっているようだ。  10:04に山頂出発。

岩場から聖岳・光岳を見る

 途中の尾根筋から、見晴らしのよい岩場があって光岳・上河内・聖岳・悪沢岳が一望できた。 10:55尾根の乗り越しで休憩したあと、11:5に小無間岳へ到着。 そこで、お湯を沸かしてラーメンの昼食をとる。 12:25出発。 帰りは、同行者を前に歩かせる。 岩が出て下りはかなり慎重になっていたのでコースタイムよりも時間がかかる。 12:35に2Pの上で休む。 13:40出発。来るときに通った道なので慎重に歩けば問題なく通過できた。 

テントを張ったP3

 14:06予定より6分の遅れで、荷物をデポしたP3に到着。 パッキングをして、14:22出発。食料と水が減ったので、来るときよりは軽く感じることができた。 木の根と岩場の悪路を通り小さなピークを幾つか過ぎたあと 14:56にP4の山頂に到着。 ビスケットを食べて、ゆっくりする。 そこからはひたすら下り。 40分ほどで、樹林の中に入る。 16:10小ピークで休憩。 16:15出発。さすがに、長丁場なので足が疲れてきた。 16:33に廃屋の下に切り株を見つけると、思わず倒れこむように座り込んで休んでしまう。 あと下山まで1時間くらいだろうか? そろそろ日没との時間の戦いになってくる。下りたらサイダーで乾杯しようと とを主張。 山頂手前ですれちがった陽気な2人組が追い越していく。
  

諏訪神社 水場 下山

17:03出発。最後、足がいたいと泣き言を言う同行者を励ましつつ下山後のビールを思いうかべて頑張る。 ゴール手前の鉄塔のところまでくると、だいぶ日が翳って樹林に中では歩く足元が暗いと感じる程度になっていた。。17:54諏訪神社の水場にゴールイン。 冷たい水で顔を洗うと生き返った。 かろうじて日没に間にあった。 川崎から来ているお二人は今日はここで車で夜明かしするそうだ。 お二人に挨拶をして、15分ほど車に乗って、18:36民宿「やまいち」に入る。湖の近くで夏であれば避暑にいいところではないだろうか。 風呂に入って、夕食時に約束どおり、サイダーをとって、乾杯する。 おかずは田楽などお酒のおつまみにはありがたいものだったが、同行者にはいまひとつ口に合うものがすくなくて、岩魚くらいしか食べられなかった。 20:30就寝。

民宿「やまいち」

2010.09.20(月)朝6:40起床。 朝食の前に、湖の回りと井川大仏を散歩する。大仏が少し高台にあり歩かないといけないというところで、登り口にスキーのストックがご自由にお使いくださいというかのごとくに立てかけてあったのが面白かった。 写真を撮って、8時に宿の戻る。 朝食は、梅干、のり、目玉焼き、鮭といった定番のおかず、部屋でテレビを見て、宿においてあった漫画を見て、 チェックアウトして9:26に出発。

井川大仏

井川から、いったん口坂本経由で帰る道にトライするが、通行止めになっていたので断念して、最初に来た66号線に戻って清水まで行く途中、コンビニでコーラを買った以外は寄り道もしない。 1号線バイパスに入ったら少し渋滞していた。 高速に乗って、厚木のあたりで、込んでいたが、まあ許容範囲。 13:56に家に到着。


やはり、大無間山は本当に秘境の山という気がした。 日本百名山は概ね北アルプス・南アルプスの主流の山であるが二百名山・三百名山になってくるとその周辺に隠れた名山が名を連ねてくる。 普段は団体の登山客などが訪れない奥深い山に知られていないアルプスの山の醍醐味があったりするものである。 大無間山はそんな山のひとつであろう。 今回、テントと水を担ぎ上げたのは、少し自信になった。 秘境と呼ばれる山もこの戦法でトライしてゆきたい。 
(2010年12月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています