餓鬼岳
基本情報
1
山名
餓鬼岳(がきだけ)
2
標高
26471m
(三等三角点)
3
山域
飛騨山地
4
都道府県
長野
5
位置
N36.26.50/ E137.44.10
6
地図
昭文社 山と高原地図36「鹿島槍・五竜岳」
2万5千分の1地図「烏帽子岳」
20万分の1地勢図「高山」
7
山岳区分
日本二百名山
登山記録
山歩No
2610
-22030
登山日
2022年8月8日(月)
歩程
第一日目 6時間50分(燕山荘ー餓鬼岳小屋)
第二日目 6時間20分(餓鬼岳小屋ー信濃常盤駅)
天候
晴
形態
テント泊縦走5泊6日
アプローチ
JR大糸線信濃常盤から白沢登山口まで
パーティー
1人
動画URL
https://youtu.be/LzgeCHtBc2w
北アルプスセブンサミット登頂を目指す2022年のひとり夏合宿の最後の山が餓鬼岳である。 ここまで登った6座の山(黒部五郎岳・三俣蓮華岳・鷲羽岳・槍ヶ岳・大天井岳・燕岳)はすべて20世紀に初登頂をした山々だった。 日本二百名山を目指し始めてから11年、ついにこの北アルプスの未踏の山に登る機会を得た。 富山から登り始めた8月4日(金)に週間天気予報が雨模様だったときには最後の餓鬼岳登頂ができるかどうか不安であったが、幸い天気は好転し、ここまで順調に長い行程をこなして登頂を果たすことができた。最後のしめくくりは、なんともおどろおどろしい名前の付いた隠れた名山である。
燕山荘から縦走路を北へ
2022年8月8日(月)朝7時に燕山荘のテント場を出発。7:28燕岳山頂、7:55北燕岳山頂と順調に縦走を続けてきた。 天気は晴れ。 空には秋の雲を思わせる巻雲があるが、視界は良好で、北燕岳の山頂からは北西には1992年に縦走した裏銀座の烏帽子岳・野口五郎岳・水晶岳や北には2014年に縦走した後立山連峰の白馬岳・鹿島槍ヶ岳が美しい姿を見せていた。 稜線を離れて一気に東沢乗越まで標高500m近くを下降。 このルートは樹林の中でクマの糞もあるようなこれまでの縦走路とは景観の違う道となった。
東沢乗越
10:16カロリーメイトで補給をしたあと東沢乗越を出発。 10分ほど前に中房温泉からの周回ルートで餓鬼岳を目指すという3人組の方が東沢乗越を出発して歩いているのでクマに遭遇する確率は低くなっているだろう、などと自分に言い聞かせながら、それでも時折、ホイッスルを吹きながら進む。東沢乗越まではブナの林の中で時折クマザサを踏み分けながらの道となる。 北燕岳から東沢乗越までのルートのほうが踏まれていなかったように思うので、こちらはやはり前の3人組のように餓鬼岳への登り道として使う人も多いのだろう。
東沢岳
11:04樹林が開けてきたところをひと登りして、東沢岳に到着。 正確には東沢岳の本当の山頂は岩峰になっており、そこから東向きの登山道がぐっと90度回転して北向きに進んでいく分岐点に大きな標識があった。その横で一人の登山客の方がいたがスマホで会社と仕事の連絡を取り合っている様子だった。 休暇をとってこの山深いところまできたがトラブルが発生したようで大変である。この日餓鬼岳小屋で宿泊予定の方が1名キャンセルになったようだったが、この東沢岳であった方だったのではないかとも思う。
高瀬ダム
東沢岳から餓鬼岳までの3時間の道は「丸山新道」と呼ばれている。 地図にも岩場の連続、アップダウンが多いと記載があるが実は意外に難所が続くルートである。 東沢岳を出てまず一つ目の岩のピークを越えるとハイマツの横の岩場をまくようにして進む。 さらに2つ目の岩場を越えて下った鞍部から高瀬ダムのエメラルド色の湖面が見下ろせる場所にやってきた。 東沢岳を出てすでに1時間以上たっていたのでここで休憩をとることにした12:10昼食にする。 朝、燕山荘のテント場でお湯を注いできたアルファ米のわかめご飯である。
樹林の中の道しるべ
昼食を済ませて12:25出発。正面に2508mのピークが見える。 少し登りであるがカロリーを補給したので難なく通過することができた。 ここからまた一気に下り。 足元に気をつけながら鞍部に降りる。 おりきって登山道は北西へ進む。 至餓鬼岳の標識が現れた。 結構古い木製のものがあり、その先に「よく来た餓鬼岳 スリップ! 滑落! 心して登られよ! 北アルプス餓鬼岳小屋」と書かれた地獄の餓鬼のイラストのある白いラミネートプレートがぶら下げてあった。 小屋の方が登山道を整備してくれているのである。
岩場の多い丸山新道
ここからしばらく登りである。 北アルプスの一般道とは言え、合戦尾根のようなメジャーなところではないので倒木などもあり、上から木の枝が垂れている狭いところを這って進んでいるときに、リュックをひっかけて破れ目を入れてしまった。 幸い、中に袋を入れて荷物が入っているので荷物が飛び出すことはなかったが買ったばかりのモンベルの軽量リュックが損害である。軽量のものは生地が薄くて軽いメリットがあるがここが泣き所である。 今回の登山ではサングラス・ストックも破損させてしまったので意外と経済的には損害が多い。
剣ズリ
次第に傾斜が急になってきてハイマツの稜線に出た。 鉄の長い梯子がある。そこを上がると餓鬼岳に続く稜線がしっかり見える。 正面に「剣ズリ」と呼ばれる2644mのピークが現れたがここに至るルートが緊張の連続であった。 岩場には頼りない錆びついた細いワイヤーが張られ、その先は1本の木材と頼りない錆びた鎖が1本張られている。岩をトラバースしてそこを進むと木の階段がある。 再び岩のトラバースとなり、木製の桟橋を渡って高度感を覚えながらバランスをとって進む。「丸山新道って後立山の不帰&八峰キレット縦走より恐いかも」と記録に書いている方もいたほどの場所だった。
餓鬼岳小屋
まだ長い登りがあったり急な下りがあったりという気が抜けない緊張のルートを進み、稜線の少し開けた場所に出た。 テント禁止と書いてあったのでヘリポートではないだろうか。 そこを少し上にいったところに3張ほどテントが張れるスペースがあり、テントの先客が2張ほどあった。 テント場を抜けるといよいよ餓鬼岳小屋である。15:51餓鬼岳小屋到着。 受付をして荷物を置いて早速山頂を目指す。 小屋から山頂までは7-8分の距離である。
餓鬼岳山頂
16:15餓鬼岳山頂到着。 標高2647m、ついに北アルプスセブンサミット登頂を果たした。 山頂には小さな祠があった。 振り返って見ると歩いた岩場の稜線はよく見えるものの、その先の槍ヶ岳・燕岳はガスが出て隠れてしまっていた。 自撮りで万歳三唱写真を撮影する。 小屋まで降りて大町方面の景色を見る。 17時から小屋で夕食。 ちらし寿司とワカメと麩の吸い物。 ひじきとレンコンの煮つけにグレープフルーツがついた豪華なものだった。 寝室は大部屋で食堂と兼用だが、食事が豪勢なので人気がある小屋である。食後小屋の外に出てみると燕岳のガスは抜けており燕山荘もきれいに見えた。 南アルプス上空には雷雲が発生していた。就寝前に日本酒大雪渓を買って飲みながら、設置されていた本棚から「望月将悟 山岳王」の本を読み、19:40就寝。
白沢へ下山
2022年8月9日(火)5:00起床。 小屋の方に朝食の開始で起こしてもらう。 朝食と重なってご来光は見えなかった。 肉じゃがと塩サケの切り身、餓鬼岳小屋の袋に入ったのりでごはんを食べる。今日も2杯お代わりした。支度をすませ6:21再び山頂へ行く。 風が強かったが後立山連峰の展望はばっちりであった。 残念ながら槍ヶ岳はまだガスに隠れたままであった。 燕岳もだめであった。白沢登山口に向けて6:40出発。
最終水場
下山は百曲がりと呼ばれるクマザサにおおわれた坂をじぐざぐに切って下りていく。 途中で沢に降りるルートがあったが水場への道のようであった。 おそらく小屋で販売している水はここからくみ上げているのであろう。 2235mのピークのあたりで道はゆるやかになり平坦となる。8:33大凪山山頂通過。 午前10:00最終水場に到着。 ここの標高が1500mちょうどである。 ここから1時間半で白沢駐車場と書いてあったが、この道標は少し厳しいタイムなので2時間以上かかるだろうと見込む。
白沢登山口
ルートは沢沿いを進み、魚止の滝が標高1300m、そのあとに紅葉の滝と景観を楽しめるところはあるが、ほとんど登山者とすれ違うことはない。 平日にここを登る人も少ないのであろう。12:17谷筋から離れ平坦な草地に到着。 ここから林道が続いていた。 「お疲れさまでした」という札がありタクシー会社の電話番号が書いた看板がある。 12:37白沢登山口に到着。 ここから信濃常盤駅までは約4kmロードを走っていった。13:57の電車に乗り、松本で特急に乗り換えて帰った。
5泊6日の北アルプスセブンサミット登山が終了した。 最後の餓鬼岳は燕岳から丸一日離れた場所にあることもあり、玄人好みの渋い山であったといえる。登山客の少ないこの静かな山は素晴らしい景色と古くて味のある山小屋とも相まって苦労して登った者たちだけに与えられるご褒美のような気がした。 大糸線に乗って松本まで行く途中に見た常念山脈の美しさは動画編集が終わった後もいつまでも心の中に残る景色となった。
(2022年12月記)
地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号 平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています