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佐武流山
佐武流山

基本情報
1 山名 佐武流山(さぶるやま)
標高 2192m (二等三角点)
山域 三国山地
都道府県 新潟・長野
位置 N35.46.20/ E138.40.14 
地図 昭文社 山と高原地図17「志賀高原・草津白根山・四阿山」
2万5千分の1地図「佐武流山」
20万分の1地勢図「高田」
7 山岳区分 日本二百名山選
登山記録
山歩No 2280-22019
登山日 2022年6月18日(土)
歩程 10時間40分
天候
形態 日帰り
アプローチ 関越自動車道石打ICから国道353号・405号経由切明温泉
パーティー 1人
動画URL https://youtu.be/KNzq3PQobPw へのリンク

 日本二百名山の登頂を決意していから、どうやってこの山に登ろうかと悩んだ山がいくつかある。 残雪期にしか登れない笈ヶ岳、登山口からのアプローチが長い赤牛山、山頂までのコースタイムがとてつもなく長い二ペソツ山や毛勝山などがその例である。 これらの山も周到に計画を立てて、また登る時期を選んで、ここまで何とか登頂を果たしてきた。 こうした中でこれらの山と同じようなシチュエーションで残っていたのが佐武流山である。 かつては登山道がなく、残雪期に白砂山方面から山中1泊でピストンをしないといけないといわれたいた。 ところが2000年ごろに秘境と言われる秋山郷から林道で沢を渡って登るルートが開拓された。 それでも往復のコースタイムは10時間近くになる。 夏至に近い日の長い時期に行かないといけないと車中泊日帰り登山のタイミングを狙ってた。

2代目のトレランシューズ (アルトラローンピーク)

 2022年6月17日(金)梅雨のさなかではあるが翌日土曜日は天気がそこそこによいことが予報でわかる。 そこで、仕事を早めに切り上げて午後オフィスから自宅へ戻る。 少し残務をこなしたあと、17:30に車で出発する。 あまり準備に時間をかけることはできなかったので、大きなリュックにテントやEPIを放り込んでの出発となる。 案の定横浜から都内への道が渋滞していたが、19時には練馬ICから関越自動車道に乗ることができた。 

国道405号秋山郷を目指して

ガソリンが高いせいもあり道路の渋滞はほぼない。 もう真っ暗になった関越トンネルを越えて新潟県に入る。 今回登る佐武流山は長野と新潟の県境である。 秋山郷という日本を代表する秘境へ行くためには、関越自動車道の塩沢石打ICで下りて国道353線を山越えして進む。 十二峠トンネルで信号で行き違いをして清津峡との分岐を過ぎ、越後田沢に出てから飯山線に沿う形で南西に進み、日本一の豪雪地帯である津波町で国道405号線から南へ秘境秋山郷を目指す。ここまでくると405号線も国道ではあるものの1車線になる場所もあったりする。 2009年6月に苗場山へ、2020年10月に鳥甲山へきているのでここも3度目となる。 こうなると意外に知った道という感じはした。

切明温泉

 栄村秋山郷は東を苗場山、西を鳥甲山に挟まれた山間地域で、日本の秘境100選の1つである。新潟県側に8つ、長野県側に5つの集落がある。津南町の中心部(対岸の津南駅からは距離がある)から見玉集落までは南越後観光バスの路線バスが、そこから切明集落までは予約型乗合タクシーが運行されているとあるが、やはりこのあたりの山に登るためにはマイカーかレンタカーが必要ということになるであろう。 今回車中泊をしたのは秋山郷の最南端 切明温泉 秋山郷雄川閣の駐車場である。 すぐ横にトイレがあることから利用させてもらったが、登山者で同じようにここで車中泊する人はいるようである。23時就寝。 

雄山閣駐車場

 2022年6月18日(土)朝5時に切明温泉で目を覚ます。 もう十分に明るくなっている。標高が850mもあるせいだろう。 車の中でも全く暑いという感じはなかった。 EPIで湯を沸かし、いつものようにカップそばを食べて車で登山口まで移動である。 切明温泉から15分ほど国道405号線のドロノキ平登山口を目指す。実際には佐武流山の分岐が現れた中津川林道の起点に車を停めた。 YAMAPの登山計画ではドロノキ平スタートにしていたが、昭文社の山歩きナビでは中津川林道起点がスタート地点でコース案内があるのであながち間違いではないであろう。 どちらの登山口も檜俣川の渡渉点に行くための林道との分岐地点までコースタイム1時間くらいなので大差はないようである。 ドロノキ平の標高が1058m。 中津川林道ゲートが1074mなのでこちらもほぼ同じである。

檜俣川林道分岐

 中津川林道に入る405号線の路肩に車を停めて、石で輪止をしたうえで6:44出発。 ほぼ計画通りのスタート時刻である。 ゲートを越えて進む。 林道は歩きやすく、今回は新しいトレランシューズなので帰りは少し走ってみようかななどと思う。 (行きは少し上り坂になるので、先の行程も長いことを考えるとあまり一生懸命走らないほうが無難かもしれないと思った。) 7:24檜俣川林道分岐。 ドロノキ平からのルートとはここで合流する。 ここからの道は林道の延長であるものの車は全く入っていないようで草がぼうぼうと生えていた。 それもそのはず200mほど進むと、道が崩壊して沢に落ちていた。 間違って車両(例えば自転車)などが落ちないように、黄色いテープで立ち入り禁止の表示がしてあった。 これでは林業のための森林整備もおぼつかないであろう。

月夜立岩

7:36、林道の右手南西方向に急峻な山が見えた。 方角からすると笠法師山と裏岩菅山であろうか? 月夜立岩・鉾岩が見えた。 月夜立岩は秋山郷のホームページにも記述がある。「中国の桂林を思わすような奇岩、石柱が美しい月夜立岩。特に紅葉の時期には、針葉樹の緑と広葉樹の黄色、赤色が織りなす様は、一幅の絵画を思わせるようです。(中津川林道の入口から檜俣川入口付近まで、林道を徒歩で約1時間20分ほど)」と。 確かに一見の価値はありそうだ。 とは言え、林道徒歩で1時間20分歩いてわざわざ来る人がいるだろうかという疑問もわいた。 紅葉のころに写真を撮りたい人にはよいのかもしれない。

渡渉点

 7:51林道から分かれて沢への降りる登山道が現れた。 この標識を見落としてしまうと月夜立岩のほうへ進んでしまうので大変である。 新しいトレランシューズのグリップ力を確かめるようにして沢へ向かって下っていく。 8:04、本日一番の難所である渡渉点に到着。 雪解け水に加えて梅雨でこの数日も雨が降り続いていたこともあり、川の水量は結構多い。 対岸まで上手と下手と2本ロープが渡されているのだが、下手ロープは完全に水の中に埋まっている。 トレランシューズと靴下を抜いでリュックに括り付けて持ってきたビーチサンダルに履き替えて、上手ロープをつかみながら渉る。 最初岩で滑ってしまい、そのまましりもちをついて水の中にドボン。 結局ズボンもタイツも濡らしてしまった。 しりもちをついたもののリュックには浸水しなかったので靴は無事であった。 水が泣きたくなるほど冷たい。 対岸まで渡って少し休憩して態勢を立て直す。

物思平

 8:22、滑ってしりもちはついたもののけがもなく渡渉が完了したことからここからは一生懸命の尾根とりつきの登りとなる。 最初は緩やかであったがやはり沢からの登りなので途中から両手も使って木の根をつかんでいなかいといけない斜度となってきた。 9:17物思平に到着。 水を飲み、たけのこの山を食べて10分ほど休憩。 9:26出発。 物思平から約1時間でワルサ峰に到着と書いてあった。 ほぼ計画通りに進んでいる。 ここからも登りが続く。 30分ほど歩くと次第に樹林が薄くなってきた。 稜線にとりついたような道になり痩せた尾根を進む。 クマにぶち当たらないように、音を出して人間の存在を伝えるために時折ホイッスルをふきながら進む。 

ワルサ峰から眺める山頂方面

 10:13ワルサ峰(1870m)到着。 苗場山が見えた。 山頂部分が平坦な湿原になっているので遠くから見てもよくわかる。 リュックをおろしてくつろいでいたら、後方でガサガサという音がしてぎょっとする。 あわててホイッスルをふいたら山頂方面から降りてくる単独の登山者だった。 70歳くらいの年配の方で今回この山は初めてだとおっしゃっていた。 10時過ぎにもう下山してここを通過しているというのだからいかに早い時間に登りだしたかというのは推して知るべしだろう。さあ、ここから山頂まであと2時間半ほどである。ここからは眺めのよい稜線歩きとなる。 
 

坊主平

 10:55標高1900mを越えたあたりで残雪が現れた。 やはりまだ6月なのでさすがは日本一の豪雪地帯。 雪の量は豊富である。 標高1950mの西赤沢源頭に到着。 ナラズ山・苗場山方面との分岐になる。ここから10分程度苗場山方面に下ると水場があるようである。ここからあと標高差で200mほどである。 約1時間という表示があった。 ところどころ雪渓を横切って進む場所があるが、そこでは夏道が雪で埋もれているためにルートファインディングに悩む場所があった。 新しいトレランシューズアルトラは思ったよりも雪の上でのグリップ力は課題があることがわかった。 やがて左手に坊主平というゆるやかな池塘のあるエリアが現れた。 動物を気にしなければこんなところでテントを張るのも悪くないなどと思った。 

佐武流山山頂

 12:00佐武流山到着。ラジオを聴きながら歩いていたので、山頂手前で12時の時報がなったので、結局登頂は午後だということになるのであろう。 山頂には東京の大学生のサークルが20人ほど陣取っていた。大学の山岳会もコロナが収束してやっと普通の活動ができるようになったということだろうか? テント泊で本当なら白砂山まで縦走する予定だったということ。 やぶこぎの訓練も兼ねた登山だという。 保冷袋に餃子や肉を入れていた。 素晴らしい。 山頂で朝湯を注いでおいたアルファ米の昼食をとる。 大学生が縦走に行ってしまったあとGoproで360度動画も撮影した。 12:45山頂出発。 

苗場山を眺めながら下山

 下りはトレランシューズを試しながら少し傾斜のゆるいところは走ってみたりする。 13:49ワルサ峰到着。 この時間に単独の登山者の方とすれ違う。 自分より10歳くらい若い方だろうか? トレランの恰好なのできっと、帰りに追い抜かれるのだろうななどと思いつつ自分のペースで進む。 帰りも渡渉のところで苦労したが、シュリンゲとカラビナを使ってロープと自分を結び付けつつ、可能な部分は動画撮影もやってみた。 帰りは行きのようにビーチサンダルで岩で滑るというアクシデントもなく渡りきることができた。 15:30林道と合流。ラジオで中日と巨人のデーゲームの試合を聞きながらのんびりと進む。 
 

秋山郷ビュースポット

 16:30最後のところですれ違ったトレランの方がすごい勢いで走ってきて追い抜いて行った。 ちゃんと山頂まで行けたとのことだった。 めでたしめでたし。 16:45、日没までかなり時間を残した状況で林道ゲートまで帰り着く。 ここからまだ横浜まで帰るの5時間くらいの運転になるので風呂によるのはパスした。 途中、秋山郷の全景を見ることのできるビュースポットが2か所ほどあったので車を停めて景観の撮影をした。 帰りの関越道もさほど渋滞することもなく22時過ぎに家に帰り着くことができた。
 

 難易度の高いニ百名山の一つを今回登りきることができて満足である。 2年前に買ったコロンビアのトレランシューズは気に入っていたがおそらく自分の足が甲高になってきているのであろう。 少し合わなくなってきたので思い切ってアルトラのシューズに変えてみた。 結果は履きやすくてこの長丁場の山もクリアできたのでよかったと思う。 夏に北アルプスに行くのに向けてのトレーニングになったと思う。
(2021年7月 記)

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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています