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暑寒別岳
暑寒別岳

基本情報
1 山名 暑寒別岳(しょかんべつだけ)
標高 1492m (一等三角点) 
山域 増毛山地
都道府県 北海道
位置 N43.43.00/ E141.31.20 
地図 昭文社 山と高原地図2「ニセコ・羊蹄山・暑寒別岳・駒ヶ岳」
2万5千分の1地図「暑寒別岳」
20万分の1地勢図「留萌」
7 山岳区分 日本二百名山・北海道百名山・一等三角点百名山
登山記録
山歩No 2082-23036
登山日 2023年7月7日(金)
歩程 8時間45分(暑寒荘ー暑寒別岳-暑寒荘)
天候
形態 小屋泊日帰り
アプローチ 道央自動車道の深川ジャンクションから深川留萌自動車道を経由、国道231号、増毛
パーティー 1人
動画URL https://youtu.be/rLamAKNiEpI

暑寒別岳は一度登ろうとしたことがある。 2013年5月2日に残雪のこの山に登ろうとした。 避難小屋である暑寒荘に宿泊し、そこからバックカントリースキーで登り始めたのだが、八合目まで行く手前で視界がなくなりトレースが見えなくなった。 それ以上進むのは危険と判断して11:00過ぎに撤退。 下山したという苦い思い出がある。 (2013年5月2日「暑寒別岳」 Sub2080)
今回は10年の月日を経て、この二百名山の山に登る再チャレンジである。 残雪期の前回と違って、今回はヒグマとの遭遇に注意を払わなければいけない。 それでも北海道遠征の第4座目を回復した天気の中で登れるのはうれしい。


国道231号 あいろーど厚田

 2023年7月6日木曜日
ニセコアンヌプリ・イワオヌプリを登山して、下山後に今度は暑寒別岳の登山口へ移動をする。 どうしても距離があるので長い移動となるのは覚悟していたが、 それでもナビに入れた瞬間に、増毛経由暑寒荘まで所要6時間と出たのにはびっくりした。 倶知安から国道393号線を小樽まで進み、小樽から札幌自動車道に乗る。 銭函インターで降りてそこから国道231号線を石狩湾に沿って北上する。 札幌の西の方角に港の方を走っていくわけであるが、道路は広くトラックが多い道であった。イワオヌプリで雨に降られたので風呂に入りたいと思っていた。 そこで前回暑寒別に登った後に入った岩温泉あったまーる、ここにもう一度行ってみるつもりでいた。 ただタオルがないことから途中のコンビニでタオルを買おうと思っていた。セイコマートで夕食とビールとタオル買って道の駅「あいろーど厚田」で休憩する

岩尾温泉

 。 ここでトランクの荷物の中から今晩、暑寒荘に泊まる時には必要ないテントなどを出して、一方で小屋で必要な食器やEPIガスや寝袋といったものをリュックに詰める作業をする。 石狩湾は前回来た時と同じように曇り空であった。 もう雨は降っていなかったがまだすっきりとした天気ではなかった。 天気予報では翌日7月7日は晴れの予報なので暑寒別登山中は雨に合わないだろうと思っていたが、どんよりとした雲の下の石狩湾は前に見たものとほぼ同じイメージであった。


御冬峠

 雄冬峠で一度停車。 滝から水が落ちる感じは相変わらずダイナミックで前回ここへ来たのがのゴールデンウィークだったので寒いという感じがあったが、今回寒くはないもののやはり曇り空の下の景色が印象的であった。岩温泉あったまーるで受付で料金500円を払おうとしたらご主人がじゃらんの会員証を見せれば百円引きますよと言ってくれたのでじゃらんを見せる。サービスがいい。 神奈川県から来たと言うとご主人は昔横須賀の工場に勤めていたと話をしてくれた。 風呂には2人ほどいたが上がってしまい、ほぼ一人貸切状態で露天風呂にも浸かることができた。 日没の時刻が7時19分ということだったので本当に晴れた日であれば太陽が沈むのがきれいに見えて綺麗なのであろうが、今日は残念ながら日本海に沈む夕日を見るわけにはいかない。 6時半に風呂から上がり、さらに先を目指す。増毛の町に着いたときにはもう7時であった。前回も町に着いたのは夜だったので、当時あまり店があった記憶はないが、今回は増毛の街にコンビニがあることを発見した。 すでに夕食の食材の買物が終わっているのでそのまま暑寒荘を目指す。

暑寒荘宿泊

暑寒荘には日没とほぼ同じ時刻の19時30分に到着した。 途中道路をキタキツネが渉るところを目撃した。 暑寒荘は標高360mぐらい。 途中から携帯電話の圏外となるので、ニセコアンヌプリから無事に下山して、このあと暑寒別岳に登ること、翌日の昼ぐらいまで連絡が取れなくなること、を友人にメールしておいた。 暑寒荘の駐車場には苫小牧ナンバーのレンタカーが一台停まっていたので先客がいるなと思い、扉を開けて挨拶をしながら小屋に入った。中で関西から来た4人組の方が、囲炉裏を囲んでテーブルで夕食をとっていた。 私も隣のテーブルに座らせてもらい、EPIに火をつけてお湯を沸かす。 今日の晩御飯はレトルトの中華丼スープである。 途中のセイコマートでサラダを購入したのでビールを飲みながらおかずの中華丼を食べることができた。 関西からの方たちは途中の農園で購入した生野菜を私にも支給しれた。 男性のひとりは、二百名山を目指しているそうで、これまで登った中で笈ヶ岳が厳しかったとか、カムエクは天候が悪くて断念したとか、毛勝山は途中のクワガタ池の湿地でテント泊をしたら比較的楽に登れた、とか興味深い話をしてくれた。 翌朝は3時に起きるということだったので私も9時には引きあげて2階の一番西側の部屋にヤマト福山してそのまま寝る

暑寒コース登山口

 2023年7月7日金曜日
朝3時半ぐらいから一階でも音がし始めて、関西の4人組の人たちはそうそうに出発するようだった。 途中で朝食を食べると言う話もあったので場所として眺めがよい佐上台あたりはどうですか、と言うことだけはリコメンドしておいた。 自分も準備して荷物を車に運んでいると、早朝に来たのだろうか、北海道のナンバーのミニバンが一台新たに停まっていた。ご夫婦連れの方がやはりこの日、暑寒別に登山されるようである。 準備して5時半に暑寒別荘を出る。 5:50登山開始。 標高327m。 この裏手の沢を渡って、そこから登山道が始まる。遊歩道と交差するところを進み、 ゆるい上り坂を上がっていく。 そうこうしているうちに、先ほどのバンから出発されたご夫婦が追いついてきた。 
 

佐上台

 一合目から道は大きく南に曲がっていく。 そこから30分ほど歩くと、つつじヶ丘と書いた平坦な場所に出た。 今日は天気が良さそうである。 比較的平坦な道が続くので、前のご夫婦ずれとあまり差が開かないようにペースも早めにとって歩く。 二合目通過。ここから石清水コースへの踏み跡がある。 おそらく自分が10年前の5月に歩いたバックカントリーのコースはこちら側ではないかな、 と思う。 暑寒荘の近くまで赤丸印のルート表示があったのでそうであろう。 標高 593mの佐上台に6:50到着する。 ここで赤丸印が現れた。 前回バックカントリーで真っ白だったこの佐上台は記憶にある。 さらにそこから30分稜線を進むと標高650mの地点に三合目の標識があった。 三合目から四合目は少し上り坂になってくる。 地図上で四合目付近にヒグマ注意という記載がある。 暑寒荘の中に書いてあった注意書きではどうも一合目から四合目の間でヒグマの目撃情報があるようだ。 また六号目にも目撃情報があるようである。


六合目

 8:00 五合目を通過。 五合目に地図の上は水場があることになっているが一体どこにあるのか気がつかなかった。 四合目が稜線であるのに対して、五合目は少し周りの樹林が濃いので暗い感じがした。 ルートはそこから次第に稜線に向かって上り坂がきつくなってくる。 ハイマツが現れて、そのハイマツ帯を抜けたところが三角点のある六合目だった。 六合目の三角点手前にはロープがあり、結構な急坂になっている。 さらにそこを超えると七合目の滝見台という標識が現れた。 この滝見台からようやく目指す暑寒別岳の稜線が見えるようになった。 まだ少しガスがかかっているので晴れやかということではないが、やはり目指す山頂が見えると気持ちがいい。

九合目

 八合目は屏風岩と呼ばれる開けたところだった。 岩の上に上がってまわりの景色を見渡すと360度見えて気持ちよかった。 これからの進む道も見える。 九合目と思われるあたりから、相当に傾斜が険しくなっているのもわかる。 少し休憩した後に9:22出発。 九合目に着いたところで、暑寒荘で一緒だった関西の4人組に追いついた。 自分も少し九合目で休憩をする。 ふと横を見ると、比較的新しいヒグマの糞があった。 目撃情報で六合目あたりで目撃されているという話であったが、まさか九合目という標高の高いところまで来ているという話ではなかったのでちょっとびっくりした。 これは山頂までのいつでも気が抜けない。 休憩中一人だったので慌ててホイッスルを吹いた。 九合目までの登りは傾斜が険しくまた道がぬかるんでおり歩きにくかった。

お花畑

  九合五勺に着くとやや緩やかとなり、行く手にお花畑が広がっていた。 10:24 お花畑の少し先で、箸別ルートからの道との合流点があった。 そこから比較的平坦なハイマツの中を進み、大きな岩を抜けるとと山頂標識が遠くに見えた。 目指す暑寒別山頂まではもう少しである。山頂の少し手前で一合目で追い越していったご夫婦連れが下山するので、すれ違う時に少し話をした。 山頂で少し待っていたそうだが残念ながら雨竜沼湿原は見えなかったと言っていた。 箸別コースと合流したせいか、急に下山する人たちとのすれ違いが多くなる。 
 

暑寒別岳山頂

 10:38 山頂に無事に到着。 三脚を備えて恒例の万歳三唱をやる。 天気は良いのだが、ガスが少し出ているので、やはり雨竜沼湿原の方は見えなかった。少し腫れた時に南暑寒別岳が見えたのがせめてもの救いであった。 アルファ米を食べて、テルモスの湯で味噌汁を飲んで昼食にする。 関西の4人組は先に下山して行った。 私が小屋で鍋の蓋がないと騒いでいたので、もし間違って持っていってしまったのであれば連絡するねと言ってくれて、メールアドレスを交換した。 山頂で少し休憩して11:20下山開始。

八合目扇風岩

箸別コースとの分岐で間違えないように暑寒別コースの方に降りていく。少し降りるとガスが晴れて来ていたので自分のこれから進むルートがよく見えた。 九合五勺から九合目までやはり滑りやすく、笹の中に石が隠れていたりする歩きにくいルートであったので、関西の人組の方に追いついたあと追い越させていただいて先に進む。 八合目の屏風岩で休憩をした。 岩の上に寝っ転がってコーヒーを飲む。 天気はもはや快晴と呼ばれるレベルになっており、風が冷たいが横になっていると気持ちがいい。 山頂ではあまり展望がなかったのでここで360度動画を改めて撮る。八合目からはひたすら元来た道を下って行く。 


ヒグマの気配

 ハイマツ帯が終わり樹林が始まる七合目・六合目あたりはやはりヒグマと遭遇しないようにホイッスルを鳴らしながら進んでいく。 佐上台を過ぎてて一合目を左に分けていく。 一合目をへてしばらく言ったところで大きな木があり、ヒグマが爪を研いだような痕があるところがあった。 立ち入らないでくださいと黄色いテープが張ってあった。 ここがヒグマの目撃場所なのかと思い、ちょっと立ち止まったところ、奥の方の笹の中でガサガサと動く音が聞こえた 。もしやこの先にヒグマのねぐらがあるのではないかと思い恐ろしくなる。 音が気になったら相手を刺激しないようにするのが鉄則である。 そっとその場を立ち去る。 一合目と暑寒別層の間なのでもし本当にヒグマのねぐらがあるとしたらたいへんである。 


暑寒別野営場

 15:12 橋を渡って暑寒荘に到着した。 2人の森林組合の方が見回りに来ていたので、九合目にヒグマの糞があったことと、一合目に爪痕とその奥で草むらが動いていたことは一応レポートしておいた。 小屋の前でエンディング動画を撮って荷物をまとめて車で出発する。 昨日は少し暗くなってから未舗装の部分を走ったが、今回は明るかったので運転しやすかったが、途中で一台登ってきた車とすれ違った。 すれ違った先に暑寒別野営場があった。 気持ち良さそうな広場ではあるもののさっきのヒグマの爪痕を思い出すとなかなかここにテントを張ろうという気にはならんな、と正直思った。 さらに進むと未舗装道路は終了した。 


太陽の里キャンプ場

 しばらくしてバッキングが気になったので、一度車停めてトランクを開けた。 再度車を出して出発したところ、自分がさっき止めていたところにキタキツネがやってくるのがバックミラーで見えた。 餌でも落としてくれたと思ったのだろうか。 増毛町まであと3キロぐらいと言うところでやっと携帯電話が入ったので、友人に下山の報告メールを打つ。 増毛町に入りここから国道を進み滝川経由で今日の宿である山部自然公園太陽の里キャンプ場までの長いドライブを始める、 滝川町のイオンで夕食の買い物をする。 さすがにガソリンが減ったのでにガソリンも入れておいた。 富良野をへて太陽の里キャンプ場に着いたときはもう夕闇がせまっていた。


 10年越しの悲願だった暑寒別岳にこうして登頂することができた。 NHKのグレートトラバース 日本三百名山で田中陽希さんがこの暑寒別岳を登ったのも春先であった。 やはりホワイトアウトになりながら、なんとか山頂で迷うことなく登頂した陽希さんの姿に感動したが、そのドキュメンタリーが心に響いたのも10年前の敗退があったからだろう。 日本百名山を目指していた時もそうであったが、一度敗退して再チャレンジで登頂した山はある。 そのうれしさはひとしおである。 いつか雨竜沼湿原から、この暑寒別の姿を眺めてみたいと思った。

(2023年11月記)


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地図の引用画像は国土地理院発行の数値地図50000(地図画像)と数値地図50mメッシュ(標高)を利用しています。(この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。承認番号  平13総使、第301号)
登山ルートの俯瞰図は、DAN杉本氏の開発したソフトウエア「カシミール3D」にて作成しています